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バレンタイン×バタフライ  作者: 新田猫レ
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十二月・番外編(3)

 ─────その後も謎のテンションのまま、ツイスターゲームは進んでいった。

 青野のちっぱいをわしづかみするカタチになって反射的にひっぱたかれたり、顔に山口の尻が降ってきた衝撃で鼻血が出たりと、それはもう散々だった。

 この状況を羨ましいとか思うヤツがいるなら、是非とも代わってやりたい。だってそれらをいちいち涼木さんのカメラに、証拠として撮られてるんだからな。


「あははは、まーた初川のラッキースケベが発動してるー!」

「おいこら」

「アタシが男子だったら、羨ましい限りだよコレー!」


 うがー!


「これ以上付き合ってられるか! 俺は自分の部屋(いえ)に帰るぞ!」

「うそうそ、ジョーダンだよー怒らないでよー」

「そーだ、シャンメリーまだあるから空けちゃおうよ!」

「人の話を聞けー!」


 何故だか恐怖心をキレイサッパリ払拭できたらしい松元が、テーブルの向こうでポーン! と快音をたてた。


「ささ、せんぱいお一つどうぞ」


 グビグビ。涼木さんの持ってきてくれたグラスを、喉が渇いていたこともあって一気にあおる。


「ぷはー」


 ─────気のせいか、さっきよりも甘みを感じないな?

 まぁ元々がジュースみたいなものだし、ケーキだなんだと甘い物を大量摂取した後だから、なおさらそう感じるのかも知れんが。

 深く考えず、オレ達は次のゲームを始めた。しかし暑いなこの部屋……。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 次はUNOだった。ただしちょっとばかり、何かがメチャクチャおかしい。


「じゃあイチ抜けした人が王様になるからー」


 ─────ん?


「残った人は順番に、このスティックを一本引いてねー」


 ─────は?


「最後に王様がこの箱の中から命令書を取るよー。じゃあカード配るねー!」

「ちょーっと聞いてもいいか?」

「何ー?」


 いや、『UNO + 王様ゲーム』って初耳なんだが。


「これって誰の発案だ?」

「ボクだけどー、何か問題あるかなー?」

「いやありまくりだろ!」


 きっと王様になった人が、さっきみたいなラッキースケベ的な命令を出すつもりでしょ。ヱ口同人みたいに! ヱ口同人みたいに!


「だぁいじょーぶだよー、さっきみたいなことにはならないからさー」


 山口が妙に甘ったるいイントネーションで耳元に囁いてくる。


「ヤバイと思うなら自分がイチ抜けすればいーじゃーん?」

「それはそうかも知れんが……」


 絶対に何か仕組まれている気がする。


「ここにいるみんな、初川には日頃お世話になってるからさー、ちょっぴり恩返し的なことがしたかったんだよねー」

「……学生として、節度をわきまえた範囲であるなら、別にいいぞ」

「ふむふむ、初川ってばこの期に及んで、まぁーだお堅いのねー」

「そういうトコロ、アタシは好きだけどなー」

「私もだー!」


 うんうんと、全員が縦に振っている。ちょっぴり気恥ずかしいが、まあこういった感謝の気持ちは、素直に受け取っておくとしよう。


「分かったよ。じゃ俺が最初にカード配りやるわ」

「「はーい!」」


 今回は涼木さんも参加することになり、変則UNOゲームが始まった。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


「あがり!」

「さっき”ウノ”って言った?」

「む、しまった」

「はい初川また負けー!」


 ぐぬぬ。久しぶりにやるもんだから、所々ルールを忘れてるな。

 初戦こそイチ抜けしたものの、その後はどうしてだか思考がまとまらない。

 そして予め女子達が作っておいたという「命令カード」が、これまたトンデモな内容だった。


「4番が初川に投げキッスをする」


 青野から熱量を伴ったキスが飛んできた。


「2番が初川のワキをくすぐる」


 涼木さんが遠慮がちに背後からくすぐってきた。


「1番が……おっと、これは?」

「何だよ」


 命令カードが絶対なのは別にいいんだが、何故かことごとく俺が何かされるというオチだった。

 これ俺がイチ抜けしても変わらないじゃんか。


「初川とポッキーゲームする」

「「キター!」」

「待て待て待てー!」


 思わず立ち上がって逃亡を図ろうとする俺の両腕と片脚を、女子3人が押さえ込んで仰向けにされた。

 いや、流石に女子を蹴り飛ばしてまで逃げようとは思わなかったが、それにしても力が微妙に入らない。なんだこれ。


「はーい、じゃあポッキー咥えてー」

「むぐ」


 仰向けのままポッキーを口に入れられる。


「じゃ、勝者のあおちゃん、遠慮無くどうぞー!」

「「わー!」」


 遠慮じゃなくて自重しろよお前ら。

 とか考えている間にも、青野の顔が近づいてくる。

 これはマズイ。何度か玲華とキスはしてしまっているが、こんな風にゲーム感覚でキスとかダメだろJK(常識的に考えて)

 頑張って俺がうまいこと途中で折れば、考えを改めてくれるだろうか?


 みるみるアップになる青野、それがあと数センチまで来た所で、不意に気がついた。


「酒臭っ!?」

「あわわわ」

「気づくのがちょーっとばかりぜんぜん遅すぎー」

「どうどう? アルコールたっぷりのシュトーレン、美味しかった?」


 正気に戻ったっぽい涼木さんと。

 やれやれといった具合の松元と。

 してやったり、な顔の山口とが。

 青野の顔で見えなくなった。しまった、コイツラ全員グルだったのか。


 これは迂闊にも、自分が酔った状態だと気づけなかった、こっちは俺のミスだ。

 通りで途中から、何故か歯止めが効かなくなってたハズだわな。

 そして今更ながら、酔って思考が回りづらくなった俺は、青野の必死な顔を見て色々と観念した。


 酔いが覚めたら、全員お説教確定だなこれ。




 こうしてクリスマスの夜は、女子達の熱を帯びた思惑を含んだまま進んでいった。

※お酒はハタチになってから!

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