十二月・番外編(2)
「取り敢えずかんぱーい!」
「「かんぱーい!」」
うーん、懐かしいなこの味。
自分の子供が小学校高学年ぐらいまでは、家でクリスマスパーティーをやってたんだよな。いつもと変わらない味のお陰か、その頃の記憶がふつふつと湧いてくる。
あの子は小五になるまでサンタの存在を信じてたっけ───。
『ねぇお父さん』
『うん?』
『お父さんがサンタだって話、本当?』
『はっはっは、知っているか我が子よ。サンタはその存在を疑われると、その家には二度と来なくなるそうだぞ』
『えっ? ……うっ、うそうそ、今のナシ!』
───ふっ。
「初川、なに一人でニヤケてんの?」
「せんぱい?」
気づけば青野と涼木さんが、オレを下から見上げていた。
「いや、これって相変わらず美味いよなーと思ってさ」
「うんうん分かる! この時期に飲むからってのもあるけど、なんか特別感あるよね」
「せんぱいは甘い物もイケるクチと……メモメモ」
涼木さんはなんでメモ?
「さあさあ、せっかくだしケーキいってみようよ!」
「さんせーい!」
青野が作った(とは言え、多少はマスターが手を貸したと思われる)、イチゴが大量に載ったケーキをみんなでぱくつく。
「いやホントに美味しいな?」
「ふっふーん、自信作だからね」
青野が腰に手を当て、満面の笑みでドヤった。そこへすかさず、松元からの提案。
「口の中が甘ったるくなっちゃったら次はこれ!」
ジンジャークッキーだ。確かに、やや強めの香りで味付けされたクッキーが、程よく口腔内のクリームを吸ってくれ、リセットされた感じがする。これはあれだな、ケンタのビスケットと同じ役割を担っているな。
「じゃあ次はこれね」
山口謹製のシュトーレンである。こちらも味付けが絶妙だ。特に柑橘系のリキュールに漬け込んだであろうドライフルーツが、良い仕事をしている。
「焼きあがってからちょうど一週間かぁ、うまく馴染んでくくれてて良かったよ」
わいわいと飲んで食べて大いに笑い、皿の底にある絵柄が見えてきた頃。
「突然だけどゲームやんない?」
松元が言って席を立った。そして戻ってきたその腕に抱えているのは───。
「買っちゃった、ツイスターゲーム!」
「じゃあオレがスピナー係やるわ」
「「ええー?」」
全員からブーイングを喰らったが、いや当たり前だろ。俺の手足が何か触っちゃったり、どっかに当たっちゃったりしたら、その後ナニを言われるか分かったもんじゃない。君子危うきに近寄らず。くわばらくわばら。
「まー初川ならそう言うと思ったけどさ」
なんで青野は不満顔なんだよ。
「でも私もやるのは初めてだし、ちょっと練習してみたいな」
「初川が一人でお手本やるんならいいでしょ?」
「お、おう……」
─────この時に気づくべきだったのだ。女子達が変に押しが強いなーと。しかしこの時は妙に気分がノッていて、じゃまあ仕方ないか、ぐらいのノリだったんだよ。
かくして、女子4人に見られながらの一人ツイスターが始まった。
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「次ー、右手で青」
「こっちか、まだ全然余裕だな」
「次ね、左手で緑」
「ふむ」
既に両足を載せていることもあり、ちょっと腕立て伏せみたいなポジションになる。
「初川ー」
「なんだ?」
「ぜっっっっったいにそこからズレちゃダメだからね?」
「うん? あ、ああ、分かった」
「手を離したりしたら、後でヒドイよ?」
なんだろう、みんなから妙な圧が……。
「じゃあまっちゃん入って」
「おい!?」
「動かないの!」
しまった、これは孔明の罠だ。と言うか、なんだか暑いな。ストーブを消せとは言わないが、ちょっと窓を開けて換気した方が良くないか?
「じゃあみんなゴメンね?」
「「どうぞどうぞ」」
示し合わせとる。事前に打ち合わせていたっぽい。
「じゃあ次。まっちゃんは右足を、初川の体の下にある黄色に」
「なんて?」
「動くなー! 次、左足を一番奥の青に」
「うわ、これ結構恥ずかしい……」
松元がオレの下に入ってきた。何故かリンボーダンスよろしく、仰向けな姿勢のまま。
「次ー、まっちゃんの右手を初川の首に」
「ちょっと待てーい!」
「はい、左手で初川の右手を払ってー!」
「なっ」
ぺしっ!
「おわっ」
「「キャー♡」」
これは……、健全な中学生の男女という立場からすれば、これは社会一般通念上、あまりよろしくない結果になっていた。オレが体勢を崩し、松元の上に覆い被さるカタチで倒れ込んだからだ。
そして。
「涼木さん!? そのカメラはどっから出したの!」
そんなゴツイカメラ、さっきまで持ってなかったよねぇ!?
「聞かないで欲しい、です」
パシャリ。
こんな具合で、何か仕組まれてるらしきパーティーは進んでいった────。




