十二月・番外編(1)
12月と言えば苦離済ます……もといクリスマス。
世界中の男女が愛を語らいつつ、ヤることヤっていつも以上に親睦を深める日である。
どうぞ末永く爆発しろ下さい。
─────うん、我ながら偏見がひどい。まぁ自分のような中坊には、親が買ってきたケーキを食べ、シャンメリーを飲みつつ、いつもより遅い時間までTV放送を見る、というぐらいの、ちょっとしたイベント日というだけだ。
だが今年のクリスマスはちょっと違っていた。
「ジャーン! どうどう? 厨房の機械をムリヤリ使わせてもらって焼いてみたケーキ!」
「ボクの家にはちょっとしたオーブンがあるから、シュトーレンを作ってみたよ」
「私はこれ、ジンジャークッキー。自分で言うのもなんだけど、かなりの自信作!」
朝から電話で呼び出され、年末が近い事もあって休業となっている『風嶺夜』に行った俺を待ち受けていたのは、いつもの女子メンバー3人と。
「せんぱいは命の恩人です。なのでこれを」
先日、皮膚ガンだったことに気づいて病院を受診させ、事なきを得た涼木さんがいた。
いや、それはいいんだけど、手にしているそのビンは……?
「『峯乃精 純米大吟醸』の非売品です、お父さんが持って行けって」
中学生相手の贈答品として、流石にコレはどうだろう。ま、まぁ自分じゃなく、多分俺の家と言うか親父殿に対しての礼の品だろうけど。
美味いんだよなぁこのお酒。めちゃくちゃ小さな醸造所で造っているんだが、この村は湧き水が非常に美味しく、そのまま飲用にできることもあって、昔から酒造りが盛んなのである。
親父殿に渡さず、自分用にしてしまおうか?
「せんぱい?」
「はっ!」
いかんいかん、今は現役中学生なのだ。やはり飲酒は御法度だろう。
……ビールは別腹だが。
「うーん、あれは良からぬ事を考えている顔だね」
「ぜったい自分で空ける気だよね」
「まー初川らしいと言えばそうなんだろうけど」
「そこ、うるさいよ」
とは言え、夏にビールでやらかしている前科があるしなぁ。ま、今更か。
「んで、今日呼ばれたのって、ひょっとしなくても」
「そ。いつもの勉強メンバーに、今回どうしてもってことで、飛び入り参加のミホちゃんとで」
「ボクが言い出しっぺのクリスマス会、兼おつかれさま会を企画したんだよねー」
「初川には色々とお世話になってるしさ、そのお礼も兼ねて、ね」
「せんぱいに感謝の気持ちを贈りたいと思いました」
なんか、意外だったな。
ケーキなんかは市販の物を買ってきた方が、面倒が無くて良かっただろうに、わざわざみんなで手作りしたのか。
でもその心遣いが、中身が枯れたオッサンの自分には、涙が出るほど嬉しかった。
「取り敢えずシャンパン開けよう!」
青野が、もう待ちきれないと言った表情でそう言った。
「分かった。じゃ誰か開けてみたい人」
しーん。
「おい」
「だだだって怖いんだもん」
「松元は、背が大きい割りに臆病だよな」
「背とハートの大きさは比例しなーい!」
「わかった悪かった、じゃほれ」
パーン!
「「わきゃー!?」」
楽しい宴の始まりだ。




