十一月・6
三度ほど通しでリハーサルをした所で昼になった。
長谷川先生に頂いたおにぎりと麦茶で腹を満たし、あと少しで観客を入れようかと言う頃。
オレはふと思ったことを、長谷川先生に聞いてみた。
「先生、つかぬ事を伺いますが」
「何かしら」
「リハーサルの音量がかなり控えめだったのは、どういった理由で?」
そこで長谷川先生はちょっと困ったように。
「本番の時以外に大きな音を出しちゃうと、ご近所からクレームが来るかもって思って」
「なるほど、納得です」
……ちょっとした違和感なんだが、これがどうにも拭えない。理由って本当にそれだけですか?
と言ってもコッチは(中身はともかく)ただの中学生だ、気にしたって仕方の無いことは、無視するに限る。
「どうしたの? 何か心配事?」
「ああいや、別に。客引きもかねて、もっとハデにやりたかったなと思ってさ」
山口の問いかけに、オレは首をすくめておどけてみせた。
「ふふ、トーちゃんって意外とお祭り騒ぎ好きだよねー」
「ノリがいいのは良いことだよ」
玲華と三津木先輩もドラムの周りに寄ってきて、話に花が咲く。
「しっかし初川君、ドラムなんて場所も取るだろうに、家ではどうやって練習したの?」
先輩が単純な疑問を投げかけてきた。
「はっはっは、そこは企業秘密と言うことで」
「なーんだ、企業秘密なら仕方ないなー」
「「あっはっはっはー!」」
ヤダ、このノリ懐かしい。
「所で、曲の間のトークとかどうする予定なの?」
「そこはオレと玲華にお任せを。普段から漫才やってるみたいなものなので」
「ひどいよトーちゃん、アチキからのアプローチ、そんな風にとらえてたの!?」
「だって真顔で返したら、お互い本気になっちゃうでしょうが」
「うわーんちきしょー」
三津木先輩がゲラゲラ笑っている。
「なるほど、これは確かに面白いね」
「でしょう?」
─────ゴゴゴゴゴ。何やら不穏な気配が漂ってくる。
「ふぅーん、まるで夫婦漫才みたいだねー、ボクちょーっとうらめやましいなー」
山口さん、それひょっとしなくても「恨めしい」と「疚しい」の造語かな?
「あはははは、これもう夫婦漫才と言うより、お笑いトリオを結成した方がいいんじゃないの?」
三津木先輩、人の気も知らないで笑いすぎです……。
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そしていよいよ本番。
事前に玲華が頑張って宣伝していたお陰か、客入りはまぁまぁのレベルだった。前列から数えて、少なくとも30人ぐらいはいそうだ。
オレ達はそれぞれアンプの音量や、チューニングの最終調整も兼ねて音出しを始めた。
初めてライブ演奏を聴く人なのか、やや大きいと感じた音量に、ちょっとばかり眉をしかめる子もいる。
言っておくが、ライブハウスなんてこんなモンじゃないからな?
顔を見合わせたオレ達は、ステージ横にいる長谷川先生に向かって「始めます」と目で合図を送る。
先生も笑顔で頷いた、よし。
────カン、カン、カン、カン。
オレのスティックが四度リズムを刻んだ次の瞬間。
当時カップラーメンのCMにも使われ、一躍ヒットした8ビートの曲が始まった。
リスナーが「あ、これ知ってる!」という顔になり、非常に食いつきがいい。サビの部分は玲華の声かけもあって、半分ぐらいの観客が一緒に歌ってくれた。バンドやってて嬉しい瞬間だね。
ちなみにこの曲のボーカル担当はオレ。
流石にまだ高価だったヘッドマイクは借りられず、動きが制限される中、アームを目一杯伸ばしたマイクに向け、なるべく爽やかに聞こえるよう心がけ、丁寧に歌いあげた。
お陰で一曲目は無事終了。まさかのドラマー兼ボーカルということもあってか、つかみはかなり良好のようだ。幸先いいな。
「どうもー、顔なじみの人はこんにちわー。初めての方は初めましてー。あたしがリーダーの初川玲華ですー」
パチパチとまばらな拍手が鳴る。
「今日はあたし達の演奏を聴きに来てくれて、本当にありがとー。このお堅い学校でこんなマネをさせてもらえるとは、正直思ってなかったー」
在校生らしき観客から、クスクスと笑いが漏れ聞こえた。お、いい反応だな。玲華のヤツ、あの夏の日以降は結構うまく立ち回れているのかも知れない。ちょっぴり安心した。
「突然ですが、みんなバンドとか音楽、好き? 好きでしょ? 深夜放送のラジオとかで、今まで全く知らなかった歌手の曲に出会えた瞬間とか、ちょっぴり嬉しくない?」
あるあるー! と声があがった。玲華の友達かな?
「だよねだよね。あたしも音楽全般が好きで、ちょーっとばかりのめり込んじゃった結果、こうなっちまったってあんばいさー」
またしても客席から笑いが漏れる。
「惜しいことに、校内じゃ他にメンバーが見つけられなかったので、今日はあたしの親戚とその友達、そして長谷川先生に紹介してもらった一個上の先輩さんを呼んで、無事ライブにこぎ着けられました。感謝感激雨あられ、結構毛だらけ猫灰だらけなのですよー」
パチパチと拍手が響いた。
「じゃ、メンバーの紹介しちゃいます。まずはリードギター、三津木先輩ことみっきー!」
「「みっきー!」」
ギュイーン! と派手なギターソロを演奏し、ニッコリ笑うナイスガイ。
今上がった声は、先輩の学校の友人かな?
と言うか、あの菩薩顔であの演奏、エグいわー。
「次はあたしのライバル、シンセとピアノのぐっちーこと山口祥子さん! ちなみになんのライバルかは秘密だー!」
シンセで『猫踏んじゃった』を超早弾き。これはまた違った意味で観客が湧く。きっとメッチャ踏みたいんですね山口さん。うん、何をだ。
「そしてさっきドラム演りながら、見事な歌声を披露してくれたアチキの嫁、もといあたしのとおーい親戚に当たる、初川徹君!」
ご紹介にあずかったので、ちょっと頑張って16ビートとドラムロールで応えた。一瞬静かになった観客が、次の瞬間には驚嘆に包まれた。ちょっと鼻が高い。
「えー、トオル君がわたしと同じ名字なのは、たまたま親戚だからであって、特に深い意味はありませぬ。べっ、別に結婚後も変わらなくて便利だなー、とかは全く思ってません、思ってませんとも、ええ全然!」
そのタイミングで、山口が『猫踏んじゃった』を、マイナー調に恨みがましく弾きだした。それを聞いた途端、観客席が「あっ…(察し)」状態に。
とは言え、玲華のトークが仰からコミカルさを醸し出していたせいで、重たい雰囲気は全くなし。
しかしまぁ、事前に打ち合わせた演出とは言え、よく考えついたよなぁこんなん。
「そしてベースギターは不肖このあたし、気軽にれーちゃんと呼んで欲しい初川玲華! の、以上四名でお送りします!」
競馬場で良く聞く、例のトランペットのメロディーラインを、ベースで力強く弾き終わり、玲華が客席へと声を投げる。
「じゃ、紹介も済んだところで次の曲にいきましょー。海外のミュージシャンだけど、皆さんもよーくご存じの名曲ですぞー」
山口が席をシンセからピアノに移し、しっとりとしたソロ演奏が始まった。本来なら1フレーズ終わった後、ここに特徴的な口笛のメロディーが入るんだが、そこは三津木先輩が卓越したギターテクで代替。客席から「すげー」と声がする。
そしていざ歌が始まると、今度は英語の歌詞を流暢に歌う玲華に、リスナーがまたも目を見張る。
演奏を終えた時には一瞬の間が空き、次いで大喝采となった。
ふと観客席の隅を見ると、何人かの教師らしき姿がある。ウンウンと感動した風で大きく頷いているのは、英語教師か何かだろうか。
「いやー実はこの曲、皆さんも分かると思うんだけど、口笛の所って実際やろうとすると、絶対に挫折するでしょ?」
観客達が大きく頷く。
「これトーちゃんに、あ、ドラムのトオル君の事ね、トーちゃんにコレやろうぜって言われた時、『コイツは鬼か! どないせーちゅーんじゃー!』って正直思いました。なのでトーちゃん、実際に演奏するときって、どんな風にこの曲をアレンジするつもりだったのか、ちょっとお話聞きたいなー」
「あっ、ボクもー」
ボクっ娘だ……、とざわめく客席。だよね、最初はビックリするよね。
とは言え、今はそんな事にかまけている場合じゃ無い。正真正銘ぶっつけ本番、トークタイムの始まりである。
オレは玲華にマイク前まで誘導される。
「えぇ何だろう、お手柔らかに頼みます」
「ズバリききます、なんで?」
「オレいまお手柔らかにって言ったよね?」
ちょっと大げさなリアクションをしつつトークが始まると、観客席からクスクス笑いが聞こえてくる。
もうこれ、完全にコミックバンドの扱いじゃないか。
「単純に”やってみたかった”、って理由じゃダメなん?」
「初心者バンドには、ちょーっと難易度高すぎじゃなーいー?」
「うむ、実はテンポがゆっくり目なので、自分が楽できるなーと思ってたことは秘密だ」
「おのれー!」
ドッと観客が湧く。
「そもそもさー、あの口笛のパートが出来なかったら、今日はどうするつもりだったの?」
「それはまあ、いざとなれば無しでもいい、と思ってたので」
「そうなの?」
「だよね、ぐっちー」
「ぐっちー言うな。まぁどうしてもって時は、ピアノでなんとでもできますし?」
「だそうだよれーちゃん」
「流石! あたしのライバルぐっちー!」
「ぐっちー言うな」
クスクスと笑いが聞こえる。そこでオレは先輩を手招きし、改めて観客席に向かって言った。
「みなさん、さっきのギターでの口笛代わりの演奏って、驚くでしょうが実は今日、いきなり決まったんです。そうですよね先輩」
えーっ、すげー、と客席がどよめく。そりゃそうだ。所が先輩は事もなげに言う。
「あはは、まぁどうしても不足しているパートがある場合は、誰かしら代わりの役をやるもんだし、バンドって基本、助け合いなんですよ。ね、ぐっちーちゃん」
「そうですね、主旋律担当パートあるあるですし。あと先輩までぐっちー言うなー!」
素晴らしいテクの話をさらっと流す先輩と、山口のツッコミで観客席が賑やかになる。これ狙ってやってない所がスゴイと思うわ。山口も、お前才能あるよ。
─────と。山口の可愛らしい見た目と、今のトークで場が和んだ時だった。
「この騒ぎはなんだね!」
空気の読めないっぽい人、登場。ひょいと長谷川先生を見ると「あちゃー」って顔してるし、玲華はちょっと引きつっている。
あ、やっぱりこれっておおっぴらにはできない、いわばゲリラライブみたいなものだったんですね。
なるほど、色々と繋がった。
「なんだも何も、ただのライブ演奏ですが。えーとそちらは?」
思わず社会人スキルを発揮してしまうオレ。
「私はここの教師だが何か?」
「あ、先生でしたか、初めまして。このたびはお騒がせしてしまい、誠に申し訳ありません」
「お、おう」
まさか一介の中学生にこんな返しをされるとは、思ってもみなかったのだろう。場の読めない教師がちょっぴり狼狽えた。うむ、短縮して「バ教師」と名付けよう。
「それで、今回はどのようなご用件で?」
「ああその、私は全学年通しての風紀担当をしているんだが」
「はい」
「なんでこの様な、風紀の乱れを助長するような催し物をやっておるのかね」
「はい? バンド活動をすると風紀が乱れるんですか?」
「そうだ」
昭和脳キター! これは遊び害がありますわ。
「じゃあ世界中の演奏家はみんな不良なんですか? ショパンやベートーヴェンも?」
「クラシックは別だ! と言うかキミ、うちの生徒じゃないな?」
「助っ人です、他校から呼ばれてやって来ました」
「やはりか、では今すぐ荷物を纏めて帰りたまえ」
流石にまだ中学生の三津木先輩も、こんな教師相手は骨が折れるだろう。玲華はこの間と同様、オレの服をギュッと握って、若干おびえている。山口に至っては、もうアゴが地面に付きそうなほど唖然としていた。
この学校で玲華が肩身の狭い思いをしていたのは、ひょっとしなくてもコイツのせいだろうな。
あの夏の日、初めてバンド活動っぽいことをして、歓喜に満ち溢れた顔と。
見送りに行った駅のホームで、オレに向かって零した涙と。
二人の玲華が思い出され、オレは我知らず拳をグッと握り込んだ。
─────じゃ、可愛い娘を守るため、おとーさんスイッチ・オン。
「その前にちょっと質問、よろしいですか?」
「なんだね」
「バンドをやると不良になるのは、一体誰です? お客さんですか?」
「演奏する側に決まっているだろう」
「ほほう、全員確実に不良になるんですか? その根拠たるデータは?」
「で、データ?」
「そうです。例えばどの楽器を使うと何パーセントの確率で不良化するのか。全員がそうなるのか、はたまた逆説的にどうすれば不良化せずに済むのか、それに対する過去の実例は存在したのか等々、詳細なデータを頂きたいですね。あ、なんならそういう情報の掲載されている書籍やレジュメ、海外の医学論文でも構いません、是非ご教示いただければ。医学論文は、アメリカ在住の伯母に頼んで、後日翻訳してもらいますので」
これはウソでも何でも無い、オレには米国人の従兄姉が7人いる。親父の姉、つまり伯母さんが米国人の旦那さんと結婚し、向こうに住んでいるのだ。この時は確かミシガン州だっけな。
そしてこんな風に反撃されたバ教師は、途端にオドオドし始めた。
「エレキギターをやると不良になる、というのは、昔から言われていてだな……」
「誰がそんな荒唐無稽な説を言い始めたんでしょう、お名前は分かりますか?」
「あ、ええと、誰だろう……」
まぁこの時代、英国から「ヤァ!ヤァ!ヤァ!」とやって来た、世界的な人気バンドのメンバーが、大麻だかマリファナだかを所持していて空港で捕まった、なんて事件もあったしな。
ある程度年齢のいってる大人からは、エレキギターをかき鳴らすバンドと、そこに群がるファンの存在自体、まとめて「不良の集団」みたいなものなんだろう。
あの男のしでかしが、こんな風に後世まで続いてしまった事実が、つくづく腹立たしい。
取調係りの菊池さんに、何度でも締め上げて貰うが良いとは思う物の。
でもなぁ、それとこれとは話が違うじゃん?
「えーとすいません、つまり根も葉もない、ある意味『口さけ女』みたいな都市伝説まがいの風評で、先生はこの貴重な時間を潰しに来たと?」
あ、ちょっと言い過ぎたか? バ教師のこめかみに青筋が浮かんで来ちゃったよ。
「う、うるさい、とにかくエレキギターは禁止だ禁止!」
「先生、もう一個だけ質問いいですか?」
「何かね!」
「エレキギターの定義を教えて下さいませんか」
「て、定義!? そんなもの、スピーカーにつないで大音量が出る、迷惑な楽器を指すに決まってるだろう!」
「ではフォークシンガーの様に、ギターの音をマイクで拾う場合は?」
「あれはエレキじゃないだろう!」
阿呆ですかこのバカ教師、いま自分で言ったじゃん。スピーカーにつないで大音量が出る楽器って。
あ、いけね。思わず一文字追加しちゃった。
「ええと、先生にはまだ馴染みが無いかも知れませんが、今は世界中で『エレアコ』っていうのが流行りつつありまして」
「な、なに? なんだそれは」
「要するにエレキ同様、アコースティックギター本体にピックアップマイクを設置し、それをシールドでアンプに繋いで演奏できる、見た目アコースティックギターのことです。ご存じない?」
「……」
「これからはエレキとアコギのいいとこ取りの”エレアコ”ってジャンルができ上がりますが、じゃあエレアコ使いも、いずれ確実に不良化するんですね? さ○まさしやイ○カさんも?」
「ぐっ、ぐぬぬ」
ここだけの話、「ロックに傾倒したまっさん」は、ちょっと見てみたいなーと思ってしまったのはナイショだ。
─────場が硬直し尽くした感で溢れそうになった瞬間。
「「 かーえーれ!」」
客席の中から、心強い援軍が現れた。それは小さな投石だったが、波紋は一気に波及する。わずか数秒で、帰れ帰れのシュプレヒコールが始まった。
「うっ、うるさいぞお前達! 私はバンド活動など認めないからな!」
あーあ、拗らせちゃった。援軍はありがたいんだが、たまに逆効果にもなる時ってあるよね。
カッコイイ捨てゼリフの一つも残せず、バ教師はオレ達を一睨みして退出していった。
おいおい、消えてくれたのはいいけど、どーすんだよこの雰囲気。なんだか盛り下がっちゃったじゃないか。
「と、トーちゃん……」
玲華が涙目になっていた。うーむ、これはちょっとどうしたものかね。
すると、今まで雰囲気に飲まれていた三津木先輩が、マイクを手に握ってにこやかに話し始めた。
「えー、お集まりいただいたお客様、なんだか飛び入り参加したかった先生がいた様ですが」
取り敢えず、といった感じで、観客先が静かになった。その様子に安心したのか、先輩は続ける。
「世の中色んな人がいますねぇ。ねー初川君」
「ですね。あ、せっかくだったんで、一曲ぐらい歌って貰えば良かったですかね」
「それはグッド、グッダー、グッデストなアイデアだね!」
「なんですかその原級、比較級、最上級」
クスクス。お、ちょっと観客のノリが戻ってきたぞ。
「ああそうそう。これちょっとした豆知識なんだけど、皆さんがよく知ってるこのエレキギター。実は元々アコースティックギターにピックアップを取り付けたのが最初で、今みたいなソリッドな形になったのって、ここ三十年ぐらいなんですよ」
「へー、そうなんですか」
「なのでさっきトオル君が言ってたエレアコって、実は原点回帰ってことなんだよね」
おお、観客が先輩の話に聞き入っている。
「所で、数学と違って、音楽のがくって”楽しい”って字を書くじゃん?」
「ですね」
そこで先輩は観客席に向かってニヤリと笑い。
「音楽って、結局は楽しんだもん勝ちなんですよ、ねぇ皆さん!」
パチパチとまばらだった拍手が、やがて大きな喝采となってオレ達を包んだ。
そして先輩がオレ達に向かって、とある提案をした。
「アンコール用の曲だったけど、コッチを先にやっちゃおうか」
「賛成です。玲華も山口もいいよな?」
「ガッテン承知の助!」
「勿論だよ!」
先輩は客席に向かって「ご起立お願いしまーす」と声を掛けた。
観客達は何が始まるのかと、ワクワクした顔で全員が立ち上がった。
「たまには誰もが知っている、日本人共通の音楽でもやりましょうかね」
先輩の声が講堂中に、高らかに響いた。
「国歌斉唱!」
先輩がいたずらっぽく笑った瞬間、オレ達は『君が代』の演奏を開始した。
ただしXバリのハードロックバージョンで。
最初はギョッとした顔をしていた観客達も、オレ達の「なんでも楽しんじゃおう!」という意図に気づいてくれたのか、それはそれはノリノリで一緒になって歌ってくれた。
いやー、バンドって本当にいいものですね。




