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バレンタイン×バタフライ  作者: 新田猫レ
34/71

八月・番外編(12)

 ─────朝の日差しで目を覚ます。


 と、こう書くとちょっとキザかなとは思うが、実際は朝の日差しが目覚ましになった訳では無く。

 ミキちゃんがオレの上に覆い被さって寝ていたその重さに気づき、どうしたら起こさないようにオレが起き上がれるのか? と、思考を巡らせたからである。

 と言うか、いつの間に隣のベッドから移り、オレに気づかれないままよじ登ったんだ……。

 ふっと、小さな女の子特有の甘い匂いが、ふわりと鼻をくすぐる。もうミキちゃんはあれだ、いっそオレの娘にならないかな。

 3年B組金八先生スペシャルVI「新・十五歳の父」ってタイトルでドラマ化して欲しい。


 何を寝ぼけているのだオレ。しっかりしろオレ。

 

 と言うか、昨夜はいつ部屋に戻り、どうやってベッドに入ったんだオレ。

 幼女と同衾とか、時代が時代ならタイーホものだよ。


 確か昨夜はみんなで花火をし、後片付けもしてゴミをまとめ、風呂で軽くシャワーを浴びた後───。

 そうそう、マスターが自分で飲む用だったハズの缶ビールを一本、冷蔵庫から失敬したんだっけ。

 で、それを女子達に見つかって、慌てて部屋に逃げ込んで─────。


 (※文章はここで途切れている)


 と、そこまで脳が回転した時、やっと気づいた。

 なんだか身動きが取れない。特に両腕。

 全く持ち上がらない上に、途中から血が通っていない気がする。


 アルコールのせいで久々に熟睡し、重くなっていた瞼を頑張って開けてみた。


 ふむ、右腕に松元が。

 ほほう、左腕に山口が。


 それぞれ(オレ)の腕を枕に、グッスリと眠りこけている。


 オレはスウッと息を吸い込み。


「全員起床ーーーー!!」


 早朝のコテージに、オレの声が高らかに響いた。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


「やあ、ごめんごめん」


 寝ぼけ眼をこすりながら、最初に声を上げたのは山口だった。


「何がどうしてこうなったのか、誤解の無いよう説明してくれ」


 オレは山口と松元、そして別室で寝ていた青野と一緒にロビーへと集合した。

 これから楽しい尋問祭りの始まりである。

 睨みをきかせるオレに向かい、まず口を開いたのは松元だった。


「じ、実は昨日の夜、初川がおいしそーにビール飲んでたのを見たじゃん?」

「うん?」

「お酒って飲んだことあんまり無いけど、ビールって度数? も少ないし、みんなでちょっと飲んでみよっかーって話になって」

「で?」


 そこまで話すと、今度は山口が続いた


「あれを酔ったっていうのかなぁ、正直苦くて全然美味しいとは思わなかったんだけど、そのうちアタマがフワフワしてきて、女子だけのぶっちゃけトークが始まったんだよ」

「いわゆる女子会というヤツか。それでなんでその後に、二人がオレの部屋で寝ることになったんだ?」


 すると最後まで黙っていた青野が、申し訳なさそうにぽしょぽしょ話し出した。


「いや実は、アタシらの部屋のベッドで試しに川の字になってみたんだけど、やっぱり三人で寝るにはちょっと狭かったんだよね。で」

「あ、そこから先は自分が言うよ」


 松元が割って入った。


「順に話すけど今回の旅行、最初はみんなで青春ポイントを集めようってコトになって」

「青春ポイント?」


 どっかでアニメ化もしたラノベの主人公みたいな話になったぞ?


「うん。具体的に言うと、何かいいことがあったら1ポイントって勝負をしてたんだ」

「ああ、なんだか点数がどうのと言ってたアレか?」

「そ。まー最初は特に何も考えてなかったんだけど、昼にあのベッドを見ちゃった後、全員一致でポイントの使い道が決まったのね。要するに、初川の部屋に余ってるベッドで寝る権利をかけようって話になって、それで」


 なるほど、合点がいった。

 ポイントを稼いでオレの部屋のベッドで寝る権利を取得し─────。

 って、おいおい?


「ちょっと待て。こっちのベッドはオレとミキちゃんで使うと言ってあっただろ」

「おにーちゃんはみんなのものなんだよ?」


 ミキちゃん!? 何それおにーちゃんシェアリングってやつデスか!?


「ミキがおにーちゃんといっしょにねれば、ベッドがひろくなるよね?」

「そうそう、ミキちゃんえらいね、よくそこに気がついたね」

「って言うか、みんなでくっついちゃえばいいんだもんね」


 おい山口に松元、ナデナデしてる場合じゃないんだが。


「いやいや、じゃなんで一人じゃなく二人こっちに来たんだ? しかも二人ともベッドにいて、あまつさえ両腕マクラ状態だったんだが?」


「えっ? じゃあホントにみんなで一緒に寝た……の?」

「えっ? そういう約束じゃ無かったっけ?」

「えっ? ボクとまっちゃん、何か勘違いしてた?」


 怖い目つきになる青野とは対象に、松元と山口はポカンとした表情になった。


「うおい最初に言っただろ、誤解の無いように説明してくれって」

「て言うかあおちゃん、ひょっとして自分のした話の内容、覚えてないの?」

「はぇ? なにか言ったっけアタシ」


 ─────頼む。


 誰かこのア○ジャッシュ状態を解いて、オレに真相を教えてはくれまいか。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 冷蔵庫の中の食材とマスターのレシピメモを見ながら、朝食の準備を進める。

 食パンにバターをたっぷりと塗ってハムとレタスその他をはさみ、フライパンで肉厚のベーコンと卵を焼きながら、オレは朝の件を思い出していた。


 どうやら事の真相は、


・アルコールが入った状態でぶっちゃけトーク開始

・気とアタマのネジが緩んだ青野が、男風呂に侵入した話をうっかり漏らす

・残りの二人がズルイ! と非難GoGo!

・青野は罰として、一人寂しくベッドで就寝

・酔ったままの二人がオレにくっついて寝入ってしまった


と、まぁ酒の上での失敗と言うか失態と言うか。

 オレも熟睡してたんで全く気づかなかったし、特に何か間違いが起きた訳でも無いので、今回の件は黙っていようということになった、そうなった。

 ……ミキちゃんだけが心配だったが、昨日の口の堅さを見てはいるし、なんとかなるだろ。


 それにしても、松元は男の兄弟ばかりだから慣れてはいるんだろうが、山口はなんなんだ。

 確か一人っ子とか聞いた記憶があるんだが、実は甘えん坊のボクっ娘キャラだったりするのか?

 だとしたら何という天然あざとい……。


「おにーちゃん、たまごがこげちゃうよ!」

「おっと」


 ポーンと宙を舞った目玉焼きが一回転半し、無事裏面からフライパンに軟着陸して事なきを得る。


「はー」

「いきなりなんだ青野」

「いや、すごいなーと思って」

「こんなん20年もやってたら誰でも出来るようになるだろ」

「にじゅう……?」


 うむ、口が滑った。


「この技を習得するため、オレは一週間に十日分の練習をしてきた」

「ぶふっ、なにそれ!」

「日々これ努力の賜である」


 ピンポンパンポーン♪


 色々と言いたいことはあるが、今はそのSE音に免じ、美味い朝食を提供することに徹しよう。


 昼過ぎにはマスターも来るだろうし、今回の突発旅行は楽しかった。

 以前とは違う時間の流れになっている事も実感できたし、何より自分に余裕があると、周囲のものがよく見えるようになるんだな。


 この関係が、来年のバレンタインを機に何故おかしくなったのか?

 それはまだ分からないし、理由なんて考えたくも無いが、今現在の行動が少しでも未来に影響を及ぼせば、ひょっとしたらあんなことにはならないのかも知れない。

 


 ふと窓の外に目をやれば、昨日と変わらぬ好天の中。

 青い空を白い雲がかけていった。

小旅行編、終わりです。

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