八月・番外編(10)
「と言う訳で」
「いや待て待て待て。なに勝手に進めてるんだ、話が見えんぞ」
階下に降りてきたオレは、そこで女子三人に押されるようにして外へ出た。
「テレビも面白いのは終わっちゃったし、どうせならと思ってさ」
「アタシが考えたんだー」
松元と青野が、もうウッキウキで準備を始める。
「いやその案自体は嫌いじゃ無いが」
「何か問題でもあるの?」
山口がキョトンとした顔でコッチを見た……のは良いんだが、その直後に脱衣所の件を思い出したらしく、夜目でも分かるぐらいに頬が赤くなっていった。
これはイカン、KENZENなお付き合い前提の間柄なので、ちょっとばかり大袈裟に問題点を指摘してウヤムヤにしておこう。色々と。
「オオアリ名古屋は城で保つ!」
「なにソレ!」
ぶふーっと山口が吹き出した。よしよし、いい感じだ。
「いや、今からやるのは花火だろ?」
「そうよ、それが何か?」
「水を入れたバケツはいいとして、ライターが見当たらないんだが」
「「あっ」」
「それと流石にこの暗がりの中、手探りで火を扱うのは危険じゃないかと思ってな」
「「ああっ」」
いや花火を買ってきたのはいいとしても、肝心の着火道具を全員が忘れてるとか、どんだけ抜けてるんだよ。
まぁ火の扱いに長けた女子中学生とか、それはそれで問題ありそうなんだが。
「だと思ったよ。ホラこれ」
オレはポケットの中から立てて使える懐中電灯もといペンライトと、親父殿の車の中から拝借してきた100円ライター、そしてこれまた仏壇から持って来たローソクを取り出した。
なおライターにはスナック名が印刷されているが、それは母親には黙っていてあげよう。
「流石だね初川」
松元が本気で感心した風で声を掛けてくる。
「別に大したことじゃ無いだろ」
「やー、ライトはうっかりだったけど」
「一番大事だろ」
「ううん、そっちじゃなくて、ローソクまでは気が回らなかったってこと」
だろうね。と言うか、今のライターやらペンライトやらは、男の子なら一度や二度は憧れる『スパイセット』とか『七つ道具』の類いだ。
いやまぁ学研の付録とかそんなのだけじゃ色々と不足気味なので、自分で買ったりしたものを集めてケースに入れただけの代物なんたけど。
自分の部屋で見つけた時は、懐かしさのあまり涙が出たんだよ、いやホント。
「まぁ、これでも一応男子なので」
「変な格好のつけかたー」
クスクスクスと、女子全員に笑われてしまった。チクショー。
「いいから、ホラさっさと始めるぞ」
妙に気恥ずかしい気分のまま、オレは地面に立てたローソクに火を着けた。




