忘れていた過去との再会
その日。
仕事の合間に食事でもと思い、たまたま立ち寄った店に「彼女」がいた。
「えっ、初川クン?」
「あれ、えーと、山口さん?」
「うわぁ懐かしい! 何年ぶりだろうね、元気してた?」
中学卒業以来だから、かれこれ37年になるのか。
たまたま一人で来たからと相席を勧められ、同じテーブルにつく。
懐かしい顔。
当時「色々あった」同級生女子たちの中では、多分一番腹を割って話ができた相手だ。
お互い「老けたねぇ」なんて笑いあい、それから定番の近況報告や、同級生のその後の話に一花咲かせた。
食後のコーヒーもほぼ飲み終わり、そろそろ席を離れようかなと思ったとき。
「ね、初川クンって中二のバレンタインの日、『差出人不明のチョコレート』って貰わなかった?」
……知っているのか雷電。いや馬鹿言ってる場合じゃなくて。
大げさな表現でもなんでもなく、体が一瞬硬直したよ。
「そんなことよく知ってるな」
「そりゃあ相手に相談されたもん、私」
「え゛」
変な声出た。
「その様子だと、結局今も相手は分からずじまいなんだね」
「その通りだけど、え、相手の人って誰だったの?」
「初川クンって学校の成績は良かったのに、そういう方面には頭が回らない人だったか」
「ぐぬぬ」
「じゃあさ、このままだと寝覚め悪そうだし、ヒントだけあげるよ」
今の今までずーっと忘れていた謎が、一つ明らかになりそうだった。
恥ずかしながら、実体験をヒントにした、限りなく私小説風の何かです。
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