第7章 テンプレ異世界でも事前準備がモノを言う②
鬼気迫る顔で襲い掛かってくるバフォメットに、思わずリュックをもってこちらも走り出す。
でかい図体にデカい斧を持っている分、そこまで足は速くないようだが、恐怖でうまく走ることができない。
こうなったときは一度大声で叫んで気合いを入れるしかない。過去にヤバい人に追いかけられて走って逃げたときも叫ぶことで一定量落ち着くことができた実績もある。
とりあえず大声を出しながら走ることで走りのたどたどしさは無くなったが、現状追いかけてきているバフォメットから逃げている状況からは変わらない。
もう物理的に戦いを挑んでこの状況を打破するしかないという、テンプレ主人公展開が訪れているがあの主人公たちはよくこんな状況で楽しんでいられたなとおもう。
害をなす相手と対峙する可能性を考慮して、一応持ってきたベルトとナイフ(海外から輸入した某国製コンバットナイフ)を腰に、左手にヒグマ撃退用催涙スプレー、右手に絶縁手袋と大き目のスタンガン(電流値はかなり弄っている物)を装備する。
もし万が一、この生物が敵対的生物ではなかった場合、この持っているもののどれかで攻撃した段階で関係修復が不可能になること間違いない。
だが、無抵抗主義でそのまま人生を終える可能性のほうが現状では一番高い。体力ももう持ちそうにない。
友好的な手段は諦めて、振り返えってバフォメットと対峙する。
距離は150メートル。風は無風。催涙スプレーがこちらにも被害が及ばないよう、馬の被り物で多少はガードできている。
距離100メートル、逃げていた相手をようやく捕まえられると思っているらしく、大きな唸り声をあげている。
スタンガンのスイッチを確認する。対象が生物を模した魔法的物体だろうが、この高電流スタンガンを当てれば止まってくれるはずだ。もちろん自身に当たったら確実に天国なので使いたくはない。
距離50メートル、やはりバフォメットは走りを止めず、こちらに斧を掲げた状態で走ってくる。
もう覚悟を決めるしかないようだ。
距離が10メートルを切った段階でヒグマ撃退用の催涙スプレーを発射する。
顔に当てた瞬間、バフォメットが両手に持っていた斧を落として、のたうち回り始めた。
このスプレーの威力は凄まじく、暴れまわった状態から何とか逃げ出そうとし始めている。
そしてスプレーが落ち着くまで5分程待っても、いまだに影響がある様でうずくまったまま唸りをあげている。
その状態でゆっくりと近づきながら、改造スタンガンをうずくまったバフォメットの首に直撃させる。
流石に5Aを超える危険なスタンガンを当てて、生物を模倣したものが耐えられるはずもないようで5秒ほどで体の動きが停止した。
このままでもきっと倒せているはずだが、念には念を入れてベルトからナイフを取り出し、首筋にナイフを突き立てようとしたところでバフォメットが粒子になって消滅していった。
やはり現代科学は強いと思いつつ、このスタンガンを作っている最中に事故が起きなくてよかったなと心の底から思った。
実際スパークするスタンガンで5Aでてたら、絶縁手袋付けていようが自身が感電して天国に行っちゃうと思いますのでフィクションだと思ってください。
電子工作で危険なものを作る際は、資格や教育を受けた人間が行いと大変なことになっちゃいますからお気をつけて!