第7章 異世界なんだから、テンプレ異世界で出会いを探しても良いでしょう⑤
飛び出した勢いでローブの男を吹き飛ばしてしまったが、とりあえず子供が殴られることが無かったのでほっと胸をなでおろした。
「大丈夫か少年?ほら、今のうちにお父さんとお母さんの所へ行っておいで。」
グスグスと泣きながらも、少年は縦に頷きながら向かっていった。
そして不意のタックルで気を失ったローブの男を盾にしながら、囲まれないよう距離を離した。
「すいませんっ!!御教団の一人員が幼い子供を殴ろうとしていたので拘束しておりますが、それ以外に他意はありませんので穏便に引き渡しさせて頂けないでしょうか!!」
とりあえず店の中に響く声でそう宣言すると、多少のざわめきが起きた後に代表らしき赤いローブの男が出てきた。
「私が、自由魔術教団団長補佐のリーズルである。彼が少年に危害を加えようとしていたのは本当であろうか。それが捏造された事実の可能性はないのか?それを確認しない限りこちらとしては受ける気はない。」
厳しくも冷静な対応をしてくれる分、この方は別に暴れたいだけの団員というわけではなさそうだ。
こちらとしては正当な理由もあるし、特に問題はないだろう。
「その件に関してはそちらにいる親子が証言するでしょう!こちらとしてはたまたま旅行でこのレストランに伺った際に起きた出来事で、どちらの主義にも属していないものです。できれば彼を引き渡したままこのレストランから関係のない人間と出させて頂くことは叶わないでしょうか。」
そう説明すると、リーズルさんは親子に状況を確認しこちらの正当性が確認できたらしく、呆れた顔をしながら引き渡しを許可してくれた。
「こちらの非でこのような事態になったのは確認できたので、彼はこちらで引き渡させてもらおう。だが、人員の店外への移動については本当に関係無い者かを判断することができないので断らせてもらう。」
冷静にそう説明されてしまうとこちらとしてもなんとも言えなかった。だがいきなり魔法的なもので襲われることもなく、純粋に話を聞いてくれるならきっと社会体制自体に何か不具合が起きているのは間違いないのだろう。少しだけ同情的になったが、双方の状況を知らないのでとりあえず脱出優先で考えることにした。
そして、テーブルクロスにディートを置き忘れていることに気づきチラッとのぞいてみると、顔中から「置いていかないで」という言葉を発していそうな顔をしていた。軽くウィンクをしたまま副団長へ引き渡しをしようとした所、気絶から意識を取り戻した男が暴れだして俺から距離を離した。
それと同時に胸元から杖のようなものを取り出し、こちらに突き付けてきた。
「よくもこの私を突き飛ばしてくれたな!貴様には死をくれてやるっ!」
あ、やっぱりダメかもしれない。




