第6章 ヤンデレはスイッチに入ってからの加速が半端じゃない③
とりあえず今回はドライブに行きましょうということでクウィールさんを誘い出してみた。
「今日は私のわがままでドライブに付き合ってくれてありがとうございます。もしクウィールさんが生きたいところがあればそこまで行きますよっ!」
そう言って隣を見ているとふんわりとした笑顔でこちらを見ていた。うん、今のところはおかしくなってはいないようだな。
「いえいえ、こうやって二人でお話させて頂いてるだけで充分ですよ~」
そんなこと言っているだけでやさしい子だと思うのは俺がつかれているんだろう。
とりあえず壁地市周辺をドライブしつつ、たわいない会話をしていた。
どうしてこんな普通のいい子っぽいのにメッセージだとおかしくなるのか、もしかしてメッセージ依存症的な奴なのだろうかと考えていると、不意にひじ掛けに置いていた俺の左手を持ち上げられた。
不思議に思ってちらっと見てみると、口元を緩ませて「えへへ」の表情をしながら俺の手を持ち上げていた。
この部分を見ると、クウィールさんの内に秘めた深すぎる依存性を垣間見れる気がした。
いや、そういうやつじゃなかった。
いきなり俺の左手にかじりついてきた。え、ちょっと待って、理解が追い付かない。そして割とガチ目に噛んでる。
「え、ちょ、クウィールさん!?何してるんですか?」
「む?ひょっほおいひほうほおほっへ(ちょっとおいしそうと思って)」
あ、愛の形が俺の知ってるやつと違うっ!!噛むのをやめてくれた左手には歯形がきっちり残っている。
そしてその歯型を見て満足している貴方は一体何なんだ・・・
「あの、クウィールさんはなぜこのようなことをされたんです・・・?」
恐る恐る聞いてみると、いたずらっ子みたいな顔をしてクウィールさんが話してくれた。
「だって美味しそうだったんだもん!あと愛を感じたかったからかな。」
二つの意味で意味が分からん。あ、でも不死者ってステータスに書いてあったよな。ゾンビ的な奴!?
だとすると非常にまずい。
「あ、あの、私この歯形でゾンビになっちゃうとかはないですよね・・・?」
「いやいやそんなことあるわけないじゃないですか。ただ私がしたいからしてるだけですよ~」
そう言ってもう一回かみついて、その手を自身の胸に抱えて鼻歌を歌っているクウィールさんに恐怖と不気味な魅力を感じた。
もちろん9.5対0.5ぐらいの割合でだが。




