第3章 オフ会などの集いに誘われたら、周囲の物やその人の持ち物を確認してみよう-b
すいません!6月5日は21時に投稿します・・・
僕はこの状況から見えるいくつかの未来を考察した。
A.兄さんと坂本さんがマルチの機構に組み込まれてしまい、小さな経済循環を誇る悲しい人間になってしまう
B.兄さんと坂本さんが、マルチ活動の愚かさを声高らかに主張し、この会を狂わせて壁地市にいられなくなる
C.あの悪意ある二人が組して、この場を混沌に貶める
D.急な用事を理由に撤退する
僕としてはDにしたいところだけど、きっとあの二人がそんな結末を選ぶとは思えない。兄は他者の狂奔を促して、その様を酒の肴にする人だし、坂本さんはどんな手段をとったとしても、未知や新たな経験を獲得しにいく人間だ。
でも、本当はそんなことを理由にしたいだけで、本心を隠しているだけだ。僕は出さんに一目惚れしてしまった。彼女をできる事なら説得して救いたいと考えている。
よし、まずは遠巻きに行動してみよう。
「出さん、ちょっとお話いいでしょうか?」
「あら、えーっと確か岳さんの弟さんで聡君だったかな?大丈夫だよ!」
出さんが僕を覚えてくれているのに感動しつつ、話をつづけた。
「ありがとうございます。出さんはこういったオフ会はいつごろから参加されているんでしょうか?」
そう話を振ると、出さんは少しキョトンとした顔をした後、にっこり笑って答えてくれた。
「そうね、大体500年くらいかしら?なんちゃってね。でもどうしてそんなことを聡くんは聞いてくるのかな~?」
妖艶な笑みで聞いてくる出さんに、頬が赤くなっているのを自覚しつつ、持てる真剣さを総動員しつつ答える。
「僕は出さんを止めたいと考えています。どうしてこういった集いにかかわっているのか。見知らぬ人を茨の道に連れていくのか。それらを確認して、正常な集いに戻すことはできないかと。本心で言えば貴方だけでもお救いできないかと。」
どうだろう、出さんの表情を確認する。
彼女は微笑みながらも、瞳の奥にある輝きがこちらを突き刺している。その視線に心が震えてしまった。
「まぁ。そういった純粋な想いを受けるのは久方ぶりだね。そういう美しさは、羨ましさと共に気恥ずかしさを受けるわ。ですけど答えに関してはNoとしか言えないかな。」
「そうだぞ聡。この妖艶な御婦人は、俺と同じく他者の狂奔を愛し、自身と同じ種族以外に餌以上の興味を示さないのだからな。
顔をよく見てみろ。今もお前がナイトを気取って自身の黒歴史を綴っていた時も、お前の精神をイカロスの様に空に浮かせ、落ちていく様を想像して嘲笑いたのだからな。」
ここからという時に、兄貴が出てきてしまった。こうなるとこの場は崩れてしまう未来が見える。
「あら、ほぼ初対面の人間に対してそのような発言はどうかと思いますわ、岳さん。私の友人たちとの会話はもうよろしかったので?」
「まぁそこの詰めは智春に任せているよ。俺は、青き弟が歪む未来を良しとしないのでな。しかし、ファンタジー世界の住人とここまで会話できるのは非常に愉快であるな。
あ、そうそう、貴方は出と言う名であるが、苗字に門が入っているのだろう?悪魔なのだからな。」
そう突っ込まれた彼女の笑みはより一層深くなっていた。
それとほぼ同タイミングで、幹事であろう男性が本日のオフ会終了の合図をしていた。
主人公の名前は坂本 智春です!久しく名前のほうが出てなかったので念のため補足です。