第2章 仕事に全力出す騎士のプライベートは、肉食系であることが多い⑦
活動報告でも書かせていただきましたが、遅れてしまい申し訳ないです
非常に魅力的な人間が現れたと、私はそう考えた。
容姿に関しては及第点であったが、あの高度な教養は何なのだろうか。
あちらの世界では坂本殿のレベルが普通なのだろうか。
われら兵士の主義、思想、好みを完璧に把握し合わせて対応できる。異種族である亡命者や
商会の者とも動じずにコミュニケーションを行える。それらコミュニケーション内容から現社会時勢を読み解く。
それにも関わらず傲慢であったり驕りがあるという訳ではない。些か飄々としすぎているとは思うが。
ここまでの人間を手放すわけにはいかないと考え、この軟禁生活に至った。
あの時接収した手帳がここまでの結果になるとは思いもよらなかったが、私自身の独身生活も終わりを迎える
と考えると感謝しかない。
「ザーキン、坂本殿の様子はどうだ?」
先程まで坂本殿と話をしていたザーキンに状況を確認をしてみた。
「はい、坂本殿は素晴らしい方であると思います。先程も私に物の売り買いについて教育して頂きました。
そして、ついに私は40までの計算が出来るようになりました。」
なんということか、あのザーキンに20以上の計算を行えるようにするとは。『能力の限界は、努力によって個人の資質を
超えることは無い』という生きる見本であったザーキンが成長している。やはり彼はこの世界にいるために存在しているのだろう。
「そうか、それは良かったな。では坂本殿は今部屋にいるということかな?」
「はい、そうです。私が引き上げる際、少し横になると話しておりましたので。」
その話を聞いて、やはり苦労はあったのだろうと同情的になってしまった。夕食の時間まではそっとしておいてやろう。
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取り急ぎ今後の展望として、この前線基地を維持しつつ彼を参謀役にでも徴用して穏やかに過ごしていこうかと思った。
そして他国との貿易を主にしつつ一つの独立勢力として足掛かりを作るチャンスではないかとも考えた。
そのような未来を考えていたはずだったのに彼が逃げ出したとの知らせが入った。
「すみません隊長!夕食の案内をする為部屋にお邪魔したところ、坂本殿がいらっしゃいませんでした。
部屋の前にいた見張りも特に物音を聞いておりません。」
・・・いったいどうやったのだろうか。そもそも彼を逃すわけにはいかない。逃げるにしてもあの車という箱のもとへ向かうはずだ。
「この宿舎を固めろ、私は車へ向かって所在を確認してくる。」