墓堀バークとヘン
情報を集めるとき、まずすべき事は人のいる場所に行くことだ。
情報というものに本来価値はない。
誰かが行動を起こすとき、知りたいときにはじめて価値が生まれる。
価値がない物を扱う商人はいない。
新聞や人づてに情報を得るしかないのだ。
というのが表の話。
裏、つまり僕たちの世界では情報を扱う商人は存在する。
彼らはそのまんま情報屋と呼ばれ情報を集め、人に売ることで金を得ている。
何故表に知られていないのか、本当は裏でもあまり知られていない。
正確には情報屋という存在は知られていても誰がそうなのかを知っている者は少ない。
彼らはあまり自分の正体を明かしたがらない。
犯罪情報すら扱う彼らは常にそういった組織や犯罪者に狙われる可能性があるからだ。
知らない者にとっては情報屋が誰かという情報が一番価値があり、知っている者にとっては自分が情報屋を知っているという情報は狙われる危険があるため絶対に話さないし離さない。
こうして情報屋の秘密は守られている。
僕が知っているのだって一人だけだし、それも偶然知ることができただけだ。
でも、偶然だとしても僕は知っている。
時計台の通りにずらりと並ぶ露店の呼び込みの数々を無視しながら進んで一つのテントにたどり着く。
‘占いやってます‘とだけ書かれた看板が地面に置かれていて、他の熱気にあふれた露店との冷めた雰囲気が逆に本物っぽさを出していた。
中に入ると一部屋ほどの空間が広がっていた。
外からはせいぜいベット一台分の隙間しかなさそうに見えるが、拡大呪文のかかったテントは中を大きく外を小さくを実現する魔道具だ。
別に珍しいものでもない。
「バーク!なんだ占いにきたのか?いいぜ!占ってやる。むむ、おまえはマザコンで金が大好きのクズ野郎とこの水晶に出てるぞ、どうだ当たってるだろ。」
とんでもないことを言うやつが出向かてくれた。
「ヘン、自分の商売道具で遊ぶなよ。」
「否定しないんだな?」
相手にしていないだけだ。
彼の名前はウィッティントン・ヘンリー、僕の知るただ一人の情報屋だ。
隠れ蓑として占い屋をやっていて表の雰囲気は演出ではなく本当にやる気がないのだ、だが客はその雰囲気につられて客が来ていることを彼は知らないらしく、いつも面倒だとぼやいている。
「聞きたいことがあるんだ。」
「いいぜ。求めよ」
「さらば与えられん。」
これは僕たちだけの合言葉だ。
本人かどうかの確認と情報屋としての依頼だという最終確認でもある。
そしてこの個別の合言葉を他の人間が言うことはその合言葉の主からの紹介状という意味になる。
基本的にはするものではないけど。
「で、なにが知りたいんだ。」
「レクラム国の現状について。」
「お前がそんなこと聞くのは珍しいな。社会のお勉強でも始めたか?」
「まあ、そんなとこかな。」
「ま、いいさ。ちょっと待ってろ。」
そう言ってヘンは表に休憩中の看板を出すとどっかりと水晶の前に座った。
「待たせたな。それでレクラムだったか。あそこは今戦争してるのは知ってるか?」
頷く。
「ならいい、相手のリセ国と戦況は膠着状態なんだがどっちの国も自国ではこっちが有利だって新聞つかって国民にアピールしてるぜ、面白いだろ。」
膠着状態?
「だが気合の入り方が違うな。レクラム国は相手の貿易圏を奪おうとしてるがリセ国はレクラム国を滅ぼす気でやってる。」
「どっちから仕掛けたんだ?」
「リセ国だな、あそこは成り立ちからして力づくで大きくしてきた国だからな。今回の相手がレクラム国だったってことだ。しかしおかしなことがある。」
「おかしなこと?」
「レクラム国が単独で戦ってるってことだ。リセ国なら単独だってなら分かる、あそこは嫌われてるからな。だがレクラム国はそうじゃない、あそこが要請を出せば、いや出さなくても味方となる国が現れてもおかしくないのに何故か出てこない。」
ま、戦線維持できてるくらいだし他国に借りを作りたくないのかもなとヘンは言った。