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母様

評価欲しいよおおおおおおおお

 アリスは僕の返事を聞くと、手紙を上から軽くなぞり上げてその手を、何かを握りつぶすよう、に閉じた。


「はい、解呪。」


「見事なお手前で。」


 実際のとこ何が起きてるのか僕には分からないけど、けれど周りの評価からすると彼女は天才で、なら今のも凄いことなんだろう。


「心のこもってない賞賛はいいわ。はいこれ。」


 今度こそ僕のもとに手紙は返された。受け取る際に確認した指輪も美しい緑色のまま輝いている。

「ん、ありがとう。」


「感謝はいいわ、仕事だし。」


「僕も君以外がやってくれたらその人に言うさ。」


「私以外じゃたぶん出来ないわよ。」


 アリスはまたこの店に来てもらう為のリップサービスではなくそれが当然といった態度で告げた。

 そして、そういうとき彼女が言うことが本当なのは彼女との付き合いで僕が知った数少ないことなのだ。

 つまり今回の差出人は代々続く呪文破りの生まれアリスと同じかそれ以上の力を持つ人物ということだ。

 それほどの力があるのに僕に頼む仕事とはどんなものだろうかと思考を巡らしていると、


「あんたさ、べつにそれ開けなくてもいいんじゃない?何ならウチで処分してあげようか?」


 アリスが不思議そうに聞いてきた。


「なんで?」


「なんでって、それこそなんでよ?アンタなんで呪いがかかった手紙を読む気満々なのよ。」


「もう呪いは解いたんだろ?」


「…身を守るために呪いを解いてほしかったんじゃなく、手紙を読むために邪魔な呪いを解いてほしかったように聞こえるわよ。」


 そんな信じられないものを見るような目で見られたって僕には笑顔を見せることしかできないぞ。

 そもそも手紙とは書かないのであれば読むものだ、僕は至って常識的な行為をしようとしているに過ぎない。

 それにかけられていた呪いだって舌縛りだったということはやはり仕事の依頼なのだろう、なら読まなきゃいけない、それに後ろめたいことが発覚する可能性を徹底的につぶすという行為は心情的には理解できるものだし、その姿勢には好感を持てる。

 

その対象が僕だったことだけがほんとに残念だ。


「恋人からの手紙なもんでね。」


 あからさまな嘘、これ以上は聞いてほしくないという意味を遠回しに伝える役割を持っている遠回しだけど分かりやすいといった矛盾した嘘をついた。

 ついでに大事そうに手紙を抱える小芝居も付け加える。


「…恋人?」


 だがアリスには伝わらなかったようだ。というか、反応するとこはそこか。


「魔法も使えないアンタなんかを好きになる奴なんかいないでしょ?騙されてるわよ、

というか呪いをかけてくる恋人って何?」


 後半に関してはまったくもってその通りだが、


「アリス、君の言ったことは僕の母様をひいては僕の一族を侮辱することだ、訂正してくれ。」

アリスが最初に言ったことだけは認めることはできない。


「あっ、ご、ごめんなさい。そんなつもりはなかったの。」


 アリスは申し訳なさそうに謝罪した。


 代々続く呪い破りの一族、アリス・マールハイトは謝罪をした。

 彼女がその立場でいるなら許そう。

 だが、ただのアリス・マールハイトとして謝罪していた場合…つまりもう一度今のようなことがあった場合は何をしてでも代償を払って貰う。

 一族の誇りとはそれだけ重いものなのだ。それはアリスにだって分かってるはずだ。


「いいさ、でももう一度はやめてくれよ。」


 一族の誇り、僕が魔法を使えないとか彼女が魔法の天才だとかは誇りの前ではこれっぽっちにも満たない些細な問題だ。

 でも彼女との関係はできれば終わらせたくない。


「恋人からというのは嘘だよ、あんまり手紙のことに触れてほしくなかったんだ。」


 僕の態度が柔らかなものに戻ったからかアリスはあからさまにホッとした表情になった。


「わかった。それはもういい。」


 ただ、と続けて


「しつこいようだけどそれに魔法を掛けた奴はかなりのやり手よ、気を付けなさい。」


「…ありがとう、お金置いとくよ」


彼女に優しくされると違和感を覚える、僕は逃げるように店を出た。



寄り道せずに家に帰った僕はすぐに手紙の封を切った。

中から上等な紙が出てくる。

さて内容は、



拝啓ウイリアム・バーク殿


 まずは謝罪をさせてください。

 この手紙には舌縛りの呪いが掛けられており、内容についての口外ができなくなるようになっております。

 誠に勝手ながらこちらにも深い事情がありご理解いただけたら幸いです。


 挨拶もなくいきなり謝罪をさせていただき不格好になってしまっているところ申し訳ございませんが本題に入らせてください。


 本題というのはあなたにお仕事を頼みたいのです。

 あなたに私の逃亡の手伝いをしていただきたいのです。

 というのも私の家、いや国は近々戦火に飲まれて消えてなくなるでしょう。

 レクラム国とリセ国といえばある程度は察していただけると思います。

 両国の戦はほぼ決着のつくところまで来ています。

 このままでは私と娘の命はないでしょう。

 どうかお助けいただけませんでしょうか。

 報酬は王家の財でお支払いします。


 あなたがお母様と同じ優しい人であることを願います。


ノーラの友、クラ・レクラム・ガーネットより




 「…は?」


コメント欲しいよおおおおおおおお

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