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知りたいこと知りたくないこと

顔から血が引いていくのを感じる。

クラ王女が言っていることを理解したくなかった。


「本当は私と王との間に生まれればよかったんだけど、王の方に問題があってね。

王は子供を作りづらい身体だったの。

だから子供を作った私を寵愛したんだけど」


「このことを王は知っているんですか?」


 ハル王女が造られた存在だということを、王妃が人を作るという禁忌を犯したことを。


「もちろん知らないわよ」


僕も知りたくなんて無かった。

母様がそんなことをしていたことなんて。

そう考えれば王は幸せだろか、いや自分の妻に騙されて、子供は偽物なんだ幸せとは決して言えないだろう。

じゃあ、僕は幸せか?

僕の信じていた母様は魔法とフラスコから人間を作り出し、僕は魔法が使えない上に他人様の死体で金を稼いでるんだ、なんて幸せ者か。

 

 駄目だ吐き気がする考えがおぼつかない。

 

そんな僕なんて放っておいてクラ王妃は話を続ける。

 

「あなたのお母様も最初は嫌がったけどね、彼女しか血と人の研究に優れた人は知り合いにいなかったからしつこく頼んで彼女の血を元にハルを造ることを条件にやっと承諾してもらったわ」


「私が手に入れた王の血とあなたのお母様の血でハルを造るまでは良かったんだけど、

ハルがエルフとして生まれてくるのが計算外だった。

王の嫌疑はあなたのお母様が血の研究で得た技術を使って晴らしたから王の子としては認められたんだけどね」


「そんなハルを生んだってことになってる私への風当たりは強かったし、

ハルなんて城から門外不出。

王が優しい性格だったから私に気に病むなって言ってくれたおかげで悲劇のヒロイン扱いに変わって今度はみんなが優しくなった」


 母様の血を……か、納得した。

それにしても正直クラ王妃のみたいな女のために造られたハル王女が哀れだ。

 この女が語ることはさっきから自分の事ばかりだ。

 

王の嫌疑が晴れた? それはクラ王妃には大事なことかもしれないがそれでハル王女の扱いが変わるわけではない。

 

 みんなが優しくなった? それはクラ王妃にだけだろう、現にハル王女は場内でもフードを被り門外不出は解かれていない。


「この国では私の地位は守られているけど戦争でこの国はなくなるでしょう。

そうしたらエルフのハルと親の私はリセ国に教会に投げ込まれるか、はたまた口にするのも恐ろしいことをされるかもしれません。」


「だからあなたのエルフの血を隠し続けてきた家の力を借りたいのです」


やっと耳に入れるのも嫌な話が理解できる話に戻ってきた。

ハル王女が僕の一族の血を引いているのもわかったし、彼女が僕を兄と呼ぶ理由も理解した。

そしてクラ王妃のような自分の事しか考えない人間には分からないだろうが母様がハル王女を造った本当の理由も僕には分かる。

なら彼女のために力は貸そう。

母様が彼女を造ったのは恐らく一族、ひいては僕の為だろうから。


「ご安心ください。

ぼくはそのためにここに来ました」


ハル王女は一族の誇りをかけて救わなければならない。


「ええ、あなたが来てくれて本当に良かったわ」

 

 僕は王妃の本当にうれしいのか嬉しくないのか分からない平坦な声がだんだん気にならなくなっていた。


「とはいえ、今すぐにとはいきません。

こちらもある程度の準備が必要でして」


「それくらいは分かっています。

どれくらいの期間が必要ですか?」


「それはまだ何とも言えないですね。

グラスの氷がいつかパチリと音を立てて解け崩れるように、そのパチリを待つ必要がありますから」


「なにを? 何の崩壊を待つのですか?」


「戦場です」


 王妃はよく分かっていないようだったが、別に理解する必要もないことだ、王妃が望んでいるのは純粋な結果なのだから。

 そのことは彼女も分かっているからかしつこく問い質されることもなかった。


「では、僕は帰ります」

 

「いいえ、今日は止まっていきなさい」


 実はその言葉を待っていた僕は、帰ると言っておきながらソファーに座ったまま動いていなかった。


「侍女に客用の部屋に案内させるから。

夕食は食べてないでしょうから部屋に運ばせるわね。

食べた後は自由にしてていいわ」


「お心遣いいただきありがとうございます。

夕食後は自由にしていいのですよね?」


「ま、ある程度はね」


「では、恐れながらハル王女。

夕食後にお付き合いいただいてもよろしいでしょうか」


 王女は話がいきなり自分に向けられたことに戸惑っているというよりは、何と答えたらいいのか分からないといった様子で、俯いたまま黙り込んでしまった。


「なにか理由があるのですか?」


 王女ではなく何故かクラ王妃が答える。


「これも準備のうちです。

グラスの氷を解けるのを待つしかなくても温めたりすれば氷が解けるのは早くなるでしょう?」


「よくわからないけれど必要なことなのですね。

ハル行きなさい」


 なぜかまたハル王女ではなくクラ王妃が決定する。


「……お母様がそういうのなら。

お兄様後でお部屋に伺わせていただきます」


「そんな恐れ多いことできませんよ、場所さえ教えていただければこちらから伺いますので」


「いえ、お気になさらず」


「しかし」


「私が行きますから」


 ハル王女はまるでそうしなければならないかのように言ってくるので僕の方が折れた。


しかし、彼女と話す時間を作れたのは助かった。

彼女を救うと決めたけど僕は彼女のことをまだ何にも知らないのだから.





今書いてる狐が拾ったヤンデレ娘の方、三話でブクマがこの作品に追いついてて震える

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