到着
第十二話
中間の町には一時間も滞在せず、着いてすぐにレクラム国へと向かった。
ここでもレクラム国へ行くことを止められたが、とりあえずは馬車を出してくれることになった。
夜になる前に行こうという話になり、乗客も僕しかいないということもあってかなりの速さで馬を走らせてくれた。
そのおかげで夕方ごろにレクラム国の検問に着いた。
そこで馬車とは別れ、僕はこの国に来た目的と身分を証明することになった、普段はそんなことは聞かないらしいのだが戦争中ゆえと衛兵が教えてくれた。
戦争中の現在に限って身分が証明できない者は国に入れてくれないらしい。
そして最後に荷物検査を受けなくてはいけないそうだ。
予想はしていたが厳しいな。
別に僕のことを疑ってるわけではないのはすまなそうな衛兵の態度で分かるが、決まりを破る理由は彼らには無い。
この国に来た理由については当り障りなく研究目的にした、旅行者というのはさすがに無理があったので学者ということに。
「身分を証明するものを」
という衛兵の言葉に僕は教会の誕生記録の写しを――当然僕の名があるのを差し出したのだが衛兵は難色を示した。
おっとこれじゃダメか。
「できれば職業がわかるものが好ましいのだが」
「組合証でしょうか?」
「ああ、それを出していただきたい」
「……それは困りましたね。
研究者にそのような物はありません。」
僕がそう言うと衛兵は一瞬面倒くさそうな顔をし、それをすぐに引っこめて答えた。
「では、あなたの研究を支援する機関や貴族の名前を」
「独学ですので、そういった支援もないのです。」
「うーん、あなたの荷物に何かないのか?
荷物検査を兼ねて見て差し上げよう」
「……では、これを」
仕方ないか、これはここでは使いたくなかったんだけど。
「これは封筒?」
「これにはほら、この封蠟がついていたんですよ」
手紙からナイフで抜いた封蝋を見せ封筒の上に置く、それは封の後とぴったりと重なる。
「……これはレクラム様の印」
「ええ、そうです、実はレクラム様から呼ばれたのです。
この事は内密にと言われたのですが……。」
「わ、分かっている。誰にもこの事は言わない」
「ありがとうございます」
「こちらこそレクラム様のお客様への先ほどまでの無礼をお許しください」
「いえいえ、お仕事ですのでお気になさらず」
アリスには本当に感謝しなくちゃな、彼女が手紙にかかっていた魔法を解いてくれなかったらこの手紙は消滅していたのだから。
というかこの手紙がなかったらこの国に入れなかったかもしれない。
ちゃんとしとけよクラ・レクラム・ガーネット、困るのは僕じゃないんだぞ。
「どうぞ、お通り下さい」
「ありがとございます。
あっ、最後にお名前を聞いてもいいですか?」
僕の質問に衛兵は不思議そうな顔をした次に不安そうな顔をした。
「安心して下さい、別に告げ口をするわけじゃないですよ」
衛兵が今度は不思議そうな顔にもどり答える。
「ジャン・ウィゴです」
「ありがとうございます。
では失礼しますね」
ジャン・ウィゴさん、もしかしたら僕がこの国を去る時に王家から呼ばれたという情報が残るのはまずいかもしれないから、そうなったらごめんね。
ヤンデレを早く書きたい