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馬車②

あれから時間が経ち、夜。

特別な車輪を使っているのか馬車は全く揺れることなく進んでいた。

結局のとこ、従業員の男が話しかけてくることはなく結果で言えばただでビスケットを手に入れたことになった。

そしてそのビスケットをよこした男はさっきまで起きていたのだが夜になるとまた眠りについた、昼まで寝ていてよく寝れるもんだ。

少し羨ましく感じるよ。


車内は乗客たちの様々なお弁当のにおいが混ざり合って眉をしかめたくなる。

昼はよかった、まだ換気ができるから。

しかし、夜になった今窓を開ければたちまち虫たちが無賃乗車してきてしまう、それに最初は涼しいかもしれないが夜風は体に毒だ。


 長時間座りっぱなしだとさすがに疲れる。

 じつはちょくちょく楽な姿勢を探していたのだがこれがなかなか見つからない。

 ほかの乗客たちも何度か姿勢を変えている者がいたので彼らもそうなのだと思う。

 

 そういう苛立ちが積み重なったからだろうか。

 乗客の中に連れに当たるものが出た。

 

 後方に座る少し痩せた中年の男がそれよりも痩せた少年をいびり始めたのだ。


 可哀そうにと後ろを確認すると首筋に魔術印を見つけて納得した。

 

 あの魔術印は奴隷であることを示すものだ。

 痩せた中年が主人なのだろう、少年は何も言わず頭を下げている。

 少年がしゃべらないのは僕の笑顔と同じ理由なのだろう。

 可哀そうにとまた思った。


 彼に不自由の自由はあるのだろうか。

 彼の中に自信の身を燃え上がらせるような熱が存在するだろうか。

 それさえあれば彼は幸せをつかめるかもしれないのに。


 見つけたって、拾ったって、もらったって、受け継いだって、なんだっていい、それさえ手に入れられたのなら。


 乗客たちの視線を集めてしまったことに気づいた奴隷の主人が気まずそうに咳払いをすると、僕も含めて皆視線を逸らした。


 主人も黙り後ろからその声が聞こえることはなくなった。


 あの主人は人を見る目がない奴だと思う。

 もし僕が奴隷を買うならあの少年のようなのは絶対に買わない。

 あんな言うことを聞くだけの人間、いやそれが欲しかったのかな?

 それとも、そういう人間にしてしまったのだろうか。

 なら下手くそな奴だ。


 どうせ奴隷なんて主人抜きでは生きられないのにさらに縛り付けるなんて無駄だ。

 どうせ言うことを聞くしかない人間に“言うことを聞け!”と迫るのと一緒なんだから

 

 奴隷を思い通りに動かしたいなら、自分が特別だと思い込ませるのが一番楽だ。

 もっとひどい環境を見せ、それを普通だと思わせる。


 これは裏の社会では結構使われていて、手痛い失敗を見せることで同じことをやらせないことや一人だけ明らかにひいきすることでその人間を良い人に思わせる洗脳といった行動でみられる。

 

 つまり自分から動いてると思わせることが大事だ。

 

 偽物の熱で燃やしてあげることが奴隷の幸せだと思う。


 馬車がライム国に着くまでそんなことを考えていた。

 


大学でこういう講義受けたことあります

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