羽川 ミカサの『置き手紙』
自称三流詩人、羽川 ミカサの置き手紙ならぬ、置き詩(なんじゃそりゃ?)。
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僕一人のかぐや姫の物語
一本の梅の木に
寄っ掛かり丑三つに
物語の広間の奥を透かして見る。
終わりの雪が降り積もり
けれど積もり切らずに土道をぐずぐずにする。
誰よりしんどい想いをした訳ではない。
ただ 苛立ちが降り積もってこの瞬間僕は
僕がかぐや姫のことが好きであり
自分だけののかぐや姫を見つけなけれならない
当たり前の運命を知る。
何も選ばない汚れたあとの心は
純粋な正しさを誇りながら、
見たくもない程ワガママな猫のような
触れることを躊躇させる気品があり、
僕はただ、
そっと人差し指を伸ばし
おそるおそる
その毛並みのいい背中を背骨に沿って
ツ──ッと撫でてあげる。
そのかぐや姫の心が
まるで猫が伸びするときの声のように
気持ち良さげなものだったので。
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で、かぐや姫ではなく
この猫が私であると、私は、思うだろうと、
羽川 ミカサは、そう考えていたふしが確かに
見受けられるのである。
なぜなら、私の弱点も
まさしく、背骨をツ──ッであるのだから。
舐められた、
ものである。
猫、
だけに。