その猫、野性モノにつき
そういえば、もともと羽川さんは、
猫がらみの女の子(子って?)でした。
鮮烈デビューの頃は、こんな感じでした。
あたしは、羽川ミカサ。
とある《オバサン》に呼ばれて
やって来た、三流女流詩人(自称)です。
あたしが今夜語るべき物語は、
物語でさえない。
猫を観た。
話だ。
猫を観た。
夜、
車のヘッドライトに照らされた
暗いコンクリ屏の影の中、
1匹の
真っ黒な猫。
ライトを反射する瞳は、
輝くブルーで、
世界が真っ黒な中に煌めく、
高価な一点モノ(?)の
ダイヤモンドのようだった。
猫って、カワイイ?
そんなのも、いるよね?
でも、あたしが今夜出会ったヤツは、
その小さな体に、
ねじ込むように野性を溜め込んだ
シャープな身体つきのくせに
わざと、のそりのそり、のそりのそりと
歩いている
ふてぶてしい笑みをその小さな口に
深く刻みつけた(ように感じさせる)
ヤツだった。
逃げない、
その、
退かない、冷め切った瞳の色と
たまに魅せるキバ剥く笑いと
夜の街中に轟き渡れという
反抗の猛々しい意志を内包した
ねっとりと、
まとわりつくような、
耳奥を侵し尽くしてしまう鳴き声で
あたしを今夜、
虜にしようとする?
けものの色香で?
あたしは、
こころ奪われて、
その、小さな、気高いけものに
憧れてしまった、という話だ。
もう、どうとでも、
なれ、だ。
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