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【プロローグ】

【世界の終わり】

「お願い! 放して! 理嘉(り か)まで落ちちゃう!」


「放せっ……て、言われて、放せる訳ないでしょ……! それより……しっか……り……掴んでよ! 今の私は、さき……より、非力なん……だからさぁ!」


 それに、この手を放したら、(さき)、死んじゃうじゃない。

 もう、二度と幸を死なせるもんか。

 投身自殺なんて、一度で十分でしょうが!


「何で……? 何で死なせてくれないの……?」


 宙ぶらりんの状態で私の手を辛うじて掴んでくれている幸は、今にも私の手をするりと抜けて落ちてしまいそう。

 私がほんの僅かでも力を抜いたら、幸は迷わず私の手を放すだろう。

 それ程に幸は、幸の心は追い詰められている。


「何で、って、友達だからでしょ!? 違うの!? 幸は、私の、親友なんじゃないの!? そう思ってたのは……私だけだったの!?」


「……理嘉は、私の親友だよ……? こんな私を、こんな馬鹿な私を、赦してくれたんだもん。……理嘉、だからそんな顔しないでよ。私は今、満たされてるの。……本当よ? 私、この世界に来て、良いことなんて一度も無かった。向こうで死ぬ前から、ずっと理嘉の事を恨んで。こっちに来てまた理嘉と出会って、憎んで。それからずっと、理嘉を殺すことだけを、理嘉に復讐することだけをずっと考えて生きてきたの。でも、それでも理嘉は私の事を赦してくれた。だから私、今とても幸せなの。だから、これ以上理嘉から大切なものを奪ってしまう前に、私は死ななきゃダメなの……!」


「だからお願い。この手を放して……?」


 今にも消えてしまいそうな幸の言葉が私の胸を締め付ける。

 私は壁の僅かな隙間に必死に指を食い込ませ、幸の言葉に逆らって、冷たい、まるで血が通っていないかのように冷えきった幸の手を強く握り締める。

 しかし、私の想いと手に込めた力とは裏腹に、私の手を掴む幸の指から力が失われていくのを感じる。


「なん……で……!」


 何で!?

 何でそんなこと言うの!?


 幸ーー。

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