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エンドロール。暗転。恋歌ちゃんのナレーションとともに物語は収束していく。
「こうしてお姫様は世界を捨てず、自分の世界と向き合うことにしました。
彼女は音を取り戻し、色を取り戻しました。
その後、彼女はどうなったのでしょうか。
きっと彼女はこれからも困難とぶつかるでしょう。
でも大丈夫。
彼女には音があり、色があり、そして隣には王子様がいるのですから」
そして他の役者達がどこからともなく集まってくる。本来とは違うエンディング。だけど、全員が全員示し合わせたように終わりへと向かう歌を口ずさむ。
視界が歪む。目から零れ落ちそうになる雫を堪える。が、見事に失敗する。
それはハッピーエンドとは違うのだろう。
それはそうだ。何も解決していないのだから。ただお姫様が現実と向き合うことができた。ただそれだけの話なのだ。
リハーサルはなし、アンコールさえもない。
だけど、私は色々と満足だった。
たった一度だけの、私だけのエンディング。
こうして、一つの物語が終わっていく。




