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青春画廊のお姫様!  作者: えつを。
49/59

13-2

 校舎は一文字に建てられており、東側に各教室は集められている。一方で西側には特別教室があり、東に劇を見に来る来訪者が多い以上、その人混みを避けるために自然と西側に向かっていた。外に並ぶ売店へ向かう途中、特別教室で行われる各部活の出し物を見て回った。

 料理研究会が手作りクッキーを振舞っていたり、生物部が飼っている動物の紹介しているのを尻目に、冷やかすこともなく歩いて行った。なぜか入って暇をつぶす気にもなれなかった。

 生徒が演劇に命を賭す一方で部活の出し物もきっちり行っているのは意外だった。全員が全員役者ではないというのもあるだろうし、クラスによってはダブルキャストを採用しており、時間の捻出が意外に容易だったりする。

 だけど、僕のようにブラブラしているはやはりこの学校においてはやはり珍しい。

 そして、そうして見て回る中でも一際集客している教室があった。

 こちらでもどこかのクラスが演劇でもやっているのかと思ったが、その特別教室の名前を見てその考えは打ち消す。

 美術室。

 いつもは美術部の油絵の具のこびり付いた匂いや、作りかけの彫刻が並んでいるはずのその部屋は外から分かるほどに見違え、そこだけ異空間になっていた。色鮮やかに描かれた看板。客を向かいれる細かな彫りが施された装飾の入口。他とは一線を画している。

美術部の展示。そうは言ってもどこにそんな集客能力があるのかと思えば、

「あ、」

 そこに道明寺の姿を見つけ、何故か納得する。そういえば、彼は部長候補だとか公言していた気がする。

 二年生の舞台装置を壊した張本人。その責任を負わされ、彼のクラスの演劇に参加自粛がつい先日実行委員の会議で決まった。彼の取り巻きは、率先して道明寺を犯人にはしなかったが擁護もしなかった。

 あの動画が、道明寺以外巧妙に顔が隠されていたことをいいことに、だ。

 有り体に言えば、見捨てたのだ。道明寺を。

 この葵祭が終われば自然と戻るものかも知れないし、そうでないかもしれない。人の関係なんてものはいとも容易く壊れるし、案外簡単に戻ったりもするのだ。

 道明寺が犯人だと分かった瞬間に、僕たちへの容疑が晴れたように。

 結果として彼は葵祭を美術部の代表として参加することにしたわけだ。彼の絵はやはり評価されるものであるので、十分な目玉となるのだろう。

 ぼんやりとその美術室を眺めていると、客引きをしていた道明寺と目が合う。

 愛想良く振舞っていた――それでもどこか偉そうなのは拭えなかったが――彼が無表情に変わる。

 そして数秒睨み合った、どちらからともなく視線を逸らす。

 僕は背を向け、彼は客引きに戻った。

 中には入らなかった。


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