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そうして、私の朗読が終わった。……クラスメイトの前で。
私はずいぶん前からヘッドホンで耳を塞いで教卓の裏に隠れ、聞こえないふりを貫き通している。
横で時折目線をこちらに向けるのは彩葉くん。といっても、私は彼の右側にいるために白い眼帯しか見えないのだが。一応は気にしてくれているのか。彼の手には携帯電話が握られていた。
ちなみに録音機能絶賛稼働中。
……彩葉くんに朗読を頼まれてから数時間後の教室。クラスメイトがすっかり集まった状態で、それは流されていた。
そのスピーカーから聞こえるのは私の声らしいが、私には聞こえない。聞きたくない。
どうやら今日の朝にこっそりと撮っていたらしい。流石の私も怒ろうとした。しかし彼の物語は聞かれないと完成しないという言葉になんだか騙されたように納得してしまった私は今もなお、流れている途中に止めることができずにいた。クラスメイトたちも私が挙動不審にならずに朗読しているのが珍しいのか、嫌がることもせずに耳を澄ましている。……なんで?
じゃあ、多数決を取ろうか。
彩葉くんがいつものように無表情ではあったが、どこか楽しげに仕切る。私は恐る恐る視線だけ覗かせ、半ば分かりきった多数決の行方を伺う。
こんなにも偏った作品の紹介の仕方では感情移入の度合いが変わってしまうものであり、みんなとて例外ではなかった。あれだけバラバラだったみんなの意見が満場一致で決まってしまったのである。
まあ、私の言葉が否定されず、それどころか認められてしまったことに喜びを隠せないのは確かだったのだけれど。
こうして、私は図らずも脚本担当になってしまった。




