巡る
授業。
そう聞くと太一は顔をしかめ、
「あなたも随分酔狂な方ですね」と、唸った。
蔦氏は知り合いの産婆を、タキエに紹介したのだ。
「ラク婆と呼ばれている産婆でしてな。この界隈では、そこそこは知られている婆さんでした」
現代において出産のほとんどは病院施設で行なわれる。しかしこの頃にはまだまだ産婆が活躍していた時代である。
ラク婆は自宅で産婆をしていた。
二軒長屋の引き戸に、張り紙をだしているだけの祖末なものだ。それもただ、さんば/ラクと乱暴に書かれている。
「わたしも直接聞いたことはなかったのだがね。この婆さん、どうやらわけありさんを、一手に引き受けていたらしい」
らしいと言うわりには、熟知している様子で氏は太一に告げる。
望まれずに産まれる子供や、畜生腹といわれる双子。または産めない境遇の女たち。そういう諸々をラク婆は引き受けていたらしい。
勿論ごく普通の妊婦だっていた。
彼女らに呼ばれ、襷がけでラク婆が夜道を駆けて行く姿は近所では見慣れたものであった。ただ薄暗い仕事もそのなかにはまじっている。その割合がすこうし多いだけだ。
それを町の住人は承知している。まあ世の中にはその様な職業も少しは必要というわけだ。
「わたしが知っている内容も、それくらいだった」
細君にばれたならば、どうするつもりであったのだろうか。太一は呆れた。
その様な怪しげな老婆に、大事なだいじな弟を引き合わせたと、激怒するに違いない。無論その考えは蔦氏の脳裏にもあった。しかし一方で、蔦氏はタキエに興味を惹かれたのだ。
お人形のような奇麗な顔の下。この義弟は、言葉と共に何やら得体のしれない情念を、吐き出すことなくひっそりと抱えているらしい。
「タキエはそりゃあもう、喜びましてな。兄さま有り難うございます。なんてわたしの手を握りしめたものですから、わたしもちっとドギマギしました。
アレはそういう媚も上手かった。ラク婆には小銭を握らせました。訳ありは得意の婆さまでしたから、余計なことなんざ聞きもしません。ただで助手ができるんだ。悦んでいた節もありましたよ」
蔦氏は煙草に火を灯すと、懐かしそうに目を細める。
タキエはラク婆の助手という形で、通う段取りとなったわけだ。丁度夏休みということもあり、自宅の方には蔦氏から連絡をいれた。
それからは朝餉をとると、タキエはいそいそと蔦氏と共に彼の病院へ向かう。姉がびっくりするほど、タキエは愛想良く従って行く。
兄さまの働くところを見学しながら、社会勉強をしてきます。整った唇から嘘八百を紡ぎ出す。
蔦氏はこの風変わりな弟を面白がった。
病院へ着くと、タキエは蔦氏の個室で、女物の服に着替える。病院にいた雑用係の小女が着ていたおふるだ。姉さんかぶりで女装を仕上げるとできあがりだ。風呂敷を小脇に抱え、タキエはラク婆の元へ行く。勉強に出かけて行くというわけだ。
「勉強ですか?」
眉をひそめて太一が聞いた。
「元々アレの実家の方へも、わたしの医院で社会勉強をしたいという理由で話したんでね。梶尾の家では、感激さえしていましたな。あの何事にも気難しくて、懐かないタキエがこうも簡単にわたしを慕うとは。わたしの株は上がるし、あの子は興味を満たされる。覗き趣味ともおさらばと、いい事づくめだった」
どこか懐かしそうに蔦氏は目を細め、紫煙を吐き出した。
「あなたは弟さんをお好きだったのですか?」
「そうですなあ……」
どこか遠いところに視線を漂わせ、蔦氏は呟いた。
「アレは変わっていた。異形という者がいるとしたら、まさしくアレだった。この時点でわたしはアレが妙なコエを聞いている。そのコエに導かれて生殖に興味を抱いていたとは知りもしなかった。それでも十二分にわたしは面白かった。
アレは最初わたしを、きびの悪い芋虫を見るような目つきで接していた。アレはしゃべりはしなかったが、雄弁に眼が語っていた。己の愛する姉が、わたしの様な男の元に嫁ぐのがいやだったのだろう。
いやいや、わたしも自分のご面相くらい分かっている。どこからどう見たって、醜いだろう?しかし男である限り、それで不都合はない。稼ぎさえ良くて、良い伴侶であれば、問題ない。男なんざそんなもんだ。
だがアレは違った。アレは美しいものか、自分にとって都合の良い者にしか、興味がなかった。だがそうだな。わたしはアレを気にはかけていた。素振りだけでも懐いていたからね」
そう言うと氏は、自嘲気味に片頬だけで笑ってみせた。
氏が語っている以上に、彼は義理の弟に対して心を寄せていたのではなかろうか。太一にはそう思えてならなかった。
女装をして姉さんかぶりをすると、年齢の割に小柄なタキエはどこからどう見ても少女にしか見えなかった。男の格好では、いくら何でもお産の最中にその場にいるわけにはいかぬ。
これは蔦氏の入れ知恵である。ラク婆にすれば、手伝いの者が男だろうが女だろうが、果ては少々変わった者であろうが関係などない。
湯をわかせ、布を用意しろ、にぎり飯をつくれ。この、役立たずののろま!
ありとあらゆる雑用が、ラク婆の怒鳴り声と共に浴びせられる。それをタキエは文句もなく、というよりは口を聞かずに、もくもくとこなした。これはこれで、梶尾家の者が目にしたら感激もしくは、激昂するかもしれぬ。
「わたしも驚きだった。アレは家では何ひとつしなかった。それこそ乳母日傘で育った子供だったから」
くつくつと楽しそうに氏は笑う。
「ちょっとした意趣返しにもなった。なにせアレが姉さんかぶりをして、にぎり飯を握るのだから。わたしも見てみたかったもんだ。いやはや見物だったろう」
そうまでしてタキエはラク婆の元に、夏休みの間中通っていた。
躯の弱い息子だ。いくら姉の家で、義兄が内科医だとはいえ、梶尾の家ではやきもきした日々であったろう。ここで躯を壊しては氏としても言い訳がたたぬ。休むように注意する日もあったのだが、当のタキエはけろりとした顔で通う。しまいには躯が弱いというのも、この子の方便ではなかろうかと邪推してしまう。
「とにかく八月いっぱいそうして通っていた。
お産なんざ、何時に始まるか分かりはしない。朝出て行ったきり、夜中まで戻らぬこともあった。わたしが妻に小言をくらう。妻にしてみれば、タキエはわたしの病院で入院患者の付き添いをしていると思っている。いくら何でもやりすぎだ。わたしが行って連れ戻す。そう息巻きまいて、これには閉口したもんだ。
いえいえ、普段はそれはもう大人しい女でね。わたしに歯向かうなど考えもしない。それがタキエに関しては違う。わたしなどすっかり悪者あつかいで。
だがわたしもはっきり言ってやった。男の子が、自ら修行したいと言っているのだ。それを横からやれ心配だ、可哀想だと言って、いいことなどひとつもない。見てご覧。こちらに来て以来の、あの変わりようを。
病院でだってはきはきと挨拶を交わし、どんなに遅くなっても決められた時間には、しっかり朝餉をとって行く。あれこそあの子本来の姿ではないのか?お前等がちやほや甘やかしていたあの子と、今のあの子と、どちらが立派になっているのか。梶尾のお父様ならどうおっしゃるか、お前だって分かるはずだ。
そう言ってやると、妻は大きな瞳に涙をいっぱいためて、悔しそうに唇を噛んでおりました。ふふふ、そんな顔をしても、わたしなんぞ面白くて、もっと虐めたくなる」
そう言うと蔦氏は太一へ同意を求める目つきをする。
太一としてはまったく心外である。
ラク婆の元での勉強を終えると、タキエは大人しく生家に戻った。無口は相変わらずであるが、何やら考えこんだ様子であった。
「赤子はどうしてあんな醜い形相で、産まれてくるのでしょう」
生家に帰る日の朝。姉の目を盗んでタキエはぽつりとそうもらした。
ラク婆の元で何を見てきたのか。あえて蔦氏は聞いていなかった。聞いてもこの変わった子供は、話すとも思えなかった。
しかしもし聞いていたら。そうすれば何かが違っていたのだろうか。タキエが失踪した後。蔦氏はつらつらとその様に考えてみた。
「結局わたしがアレのコエについて聞いたのはずっと後だった。アレはコエに悩まされていた。知りたい。知りたいとせっつかれると。実家の大滝村を離れ、加我見の高校へ進学した時だ。わたしは慣れない環境によって生じる、軽いノイローゼなんだろうと思っていた。それで通り一遍の診察をすると薬を調合してやった。それからすぐだよ。あの子が高校の途中でいきなり姿をくらましたのは」
タキエの出奔は梶尾の家に相当なショックをもたらした。
しかし梶尾家の者が、蔦氏の施した奇妙な勉強のせいだと考えたはずもない。氏とタキエの秘密は、秘密のまま閉じられたのだ。しかし氏はどこか気まずい思いを抱えてしまった。
もし、自分が好奇心からいらぬお節介など焼かなければ。そうしたらあのお奇麗な義弟は、今も自慢の一人息子として、大滝村で生活していたのではないだろうか。
考えてもせんないことである。
だが懺悔の気持ちはあるのかもしれなかった。だからこそいきなりの太一の出現に蔦氏は警戒したのであった。
「……なんとも奇妙な少年です」
蔦氏の告白を聞き終え、太一は言葉を絞り出すようにそう言った。
「アレの遺体が見つかったのは出奔して三年後の冬だった。電話が鳴った。警察からの問い合わせだった。でたのは間の悪いことに妻だった。あの時の妻の嗚咽は今でも忘れられない。しかし同時にわたしは安堵した。
生きているのか。死んでいるのか。生きているとしたら、どこでどうやって生計をたてているのか。不安ばかりが重なって、梶尾の者はみな青色吐息だった。あの宙ぶらりんの状況に比べたらましだ。そう自分に言い聞かせたもんだ。今は哀しみはあっても薄れてきている。そうやってあの家族は時を重ねていった。
わたしは出来るだけ正直に君に伝えたつもりだ。これだけは約束してもらいたい。妻や梶尾の家には一切近づかんでくれたまえ。あの哀しみを、えぐりださせる者をわたしは許さない」
そう言った蔦氏の眼差しは、太一を射すくめる強さが宿っていた。
「お約束します」
太一はその眼差しをしっかと受け止め頷いた。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
さて、タキはどうにもこうにも、落ち着かない日々が続いた。
こんなにも野辺に人が来ることなど、一遍だってなかったのだ。しかも郵便配達人まで来るとは。どうにも自分が解放される日も近いのではないかしらん。
そう考えるだけで、気もそぞろになる。
いつもだったら女鬼の狩りくらいしか、タキの気をひくものはないのだが、それさえも上の空だ。
タキの袂には手紙がはいっている。
皺くちゃにならぬように気を使っている。なにせヨウジなる人物が、いつ何時訪れるかもしれないのだ。その際は、なるたけ好意的に接したい。そう願っているためだ。
タキの頭のなかは鼬面の郵便配達人と、まだ見ぬヨウジで一杯だ。
しかしどちらも、そうそうやって来る気配がない。
立葵が揺れる度に、もう来たか。やれ来たかと、向こう側を伸びて見たりするのだが、一向に人影はない。
すると、手紙が気になってくる。
ここでは読み物などない。まともに人と話すことさえ無いのだ。
日に何度もタキは手紙を袂から出しては、日に透かしてみる。
表書きの文字など、目を瞑っても隅から隅まで思い返せるくらいだ。マジックのかすれ具合も、「殿」の文字のバランスの悪さも。全てが脳裏に焼き付いている。
しかし何日たっても、誰も訪れては来ない。
夜さえこない。
とうとうタキはこう思う。
ヨウジなる人物は、よんどころない事情で来られないのかもしれぬ。手紙が至急の内容ならば、差出人は困るだろう。ここはひとつ、自分が骨をおってやるべきなのではないだろうか。
その理由は至極全うに思えた。思えたからには、さっそくタキは手紙の封を開けた。
その様子をまるがこっそりと覗いているのを、タキは気がつかない。それくらい夢中になっていた。
なかには薄い紙が一枚はいっているばかりであった。
「 羊司殿
そろそろ戻って来てくれぬか。
待っておる。 」
面白みもない。
急な知らせでもない。まるで走り書きのような代物である。
しかしタキは手紙をじっと見つめた。そうしていれば。今すぐにでもヨウジなる人物がここへ現れてくれるのではないかと。ただただ、じっと見つめた。
こうして立葵の季節を、タキは手紙と共に過ごした。
小菊の季節が巡ってきた。
小鬼はもう、ほとんど残っていない。あらかた女鬼のまるに喰らわれてしまったのだ。
小菊に交じって、ところどころには曼珠沙華も咲き誇る。
赤い花弁は、風もないのに揺れている。ブランコのように揺れている。ゆらーん、ゆらーんと揺れている。
花弁に乗っているのは、まるである。まるは童女のように、花弁を揺らして遊んでいる。
立葵の頃と比べると、猛々しさがすっかりとはげ落ちた顔をしている。
かといって、まるの醜さに変わりはない。
尻よりも、もっと大きな、はち切れんばかりの腹が揺れる。時々手やら足やらが、腹の内側から皮を伸ばす。
おぞましい。
タキは忌々しそうに、まるの腹を見た。
腹には犯され、喰われた小鬼等の精がつまっている。それなのに、子等は父を返せとは決して云わぬ。みな母を求めて、手やら足やらを伸ばしているのだ。
孕んだ女鬼を見ていると、タキは落ち着かなくなる。背中の辺りがざわざわとし、何やら空恐ろしい心持ちになったりする。
曼珠沙華もいけない。あの毒々しい紅い花。薄紅色や黄色の小菊だけなら良いものを。
タキは澄んだ秋空を、見上げた。
この頃になると、夜の時間が長くなる。
気がつくと、二、三日夜が続く。そんな時は寒いわけではないが、人肌恋しくなる。
まるが羨ましくさえ思える。
まるのなかには赤子が詰まっている。命を抱いているというのは、それだけで暖かいのではないだろうか。
だからといって、まるを懐にいれたいわけではない。あんな醜い女鬼など願い下げだ。
ただ、そう。家族が側にいてくれさえすれば。そう願わずにはいられない。
あれ以来、イタチの姿をタキは時々見かけた。イタチは小菊に見え隠れしながら、そっと遠くに佇んでいる。時にはすぐ近くを通ることさえある。なのに、近寄ってはこない。
まるでタキなどいない者のように、足早に通り過ぎるばかりである。
逆に寄ってきた者もいる。
ランニングシャツをだらしなく着た、やぶにらみの子供だ。相変わらずきつい目つきをして、タキの元を訪れる。子供は決まって壷を抱えている。
しまいには遠くからでも潮の香りで、子供の訪れが分かる。
まるは子供が来ると、物騒な顔つきで逃げて行く。海水をかけられて、溶けた小鬼や花々をタキは思い返した。
なるほど。まるは子供が。彼の携えている壷の中身が恐ろしいというわけだ。その事実は少しだけタキを愉快な気持ちにさせた。
残虐な女鬼にも恐ろしいものがあるとは傑作だ。腹を抱えて笑うタキを、子供はやけに平坦な声でたしなめた。
慣れてくると、子供はタキの側に座るようになった。
膝をかかえて座っていると、背中に張り付いたシャツを透かして、子供の背骨の形がはっきりと分かるのだった。子供はやせ細っている。形の悪い足も気持ち悪いほど細い。
「お前は随分と、貧相だね」
タキが無遠慮にそう云うと、子供は肩をすくめて、「おれのうちは貧乏だ」吐き捨てるように言うのだった。
まあ、それはそうだろう。言われなくとも外見で分かる。
集落に、この様な子供は大勢おった。珍しくも何ともない。かえってタキのように恵まれた家の子供の方が少なかったはずだ。
タキは幼い頃より、それを当然だと受け止めてきた。仕方が無いではないか。生まれが違うのだ。
学校にも教会にも、たくさんいた。
彼らはこぞってタキを遠巻きにしながらも、憧れと嫉妬の目で見つめていたものだ。それはタキにとっては小蠅のような煩わしさしか、もたらさなかった。
しかしここでは違う。この少年はなかなかどうして重宝している。小鬼等よりもずっと良い。イタチもこの様にしてくれれば良いものを。
イタチは相変わらず野辺を歩いている。肩からかけた黒い鞄は膨らんでいる。
そのなかに今度こそ自分宛の手紙があるのではないかと、タキは期待に胸を高鳴らす。なのに、決して近寄っては来ない。
自分がヨウジ宛の手紙をまだ渡せていないからだろうか。
それとも、こっそり隠れて読んでしまったのが、ばれたのだろうか。
それにしたって、母さま宛の手紙はどうなったのだろうか。母さまに、手紙はきちんと渡っているのだろうか。せめてそれだけでもしりたいのに。声が届くところまで来てくれたならば。そう願うものの、イタチは知らん顔を決めている。
だからこんなにも寂しい気分なのかもしれない。
切なくて、タキは溢れ出しそうな涙を、そっと袂で拭った。こんなにも心もとない気持ちになるのは、子供の時以来だ。
姉さまがお嫁に行く時だって、今よりはましだった。
姉さまは加我見市の開業医の元へ嫁いで行った。
紅白饅頭が配られ、集落中の者達が、美しく着飾った花嫁御寮を眺めにきたものだ。お顔を白くお化粧し、真っ赤な紅を小さくさした姉さまは、そりゃあもう美しかった。
だがタキは不満であった。
タキは旦那さんを好いていなかった。義兄になる男は医師としての腕は良い。医院は繁盛しており、羽振りが良かった。
しかし姿が悪い。義兄は、悲しいくらい矮小な、みっともない男であった。
たっぷりとした黒髪を島田に結った姉さまと並ぶと、その情けなさは際立っていた。姉さまもさぞや気落ちしていたことだろう。
タキはこんな見合いをさせた父と親戚を恨みたいほどであった。義兄は姉さまの隣で、馬鹿みたいにニヤけていた。あの男の妻となるなんて、姉さまが気の毒で、タキの方が泣いてしまいそうだった。
だがあの時はまだ母さまもいた。お婆さまも、妹たちも。今よりずっと心強い気持ちであった。なのに、独りだ。
独りで、こんな野辺にとり残されている。どうしてこんな境遇になったのか。タキにはそれがどうしても思い出せない。
母さま。
母さま。
赤子を孕めるおなごは良い。男の自分は、どうやってこのからっぽな気持ちを癒せるのだろうか。
曼珠沙華が揺れる。
お前はたった独りだと。嘲笑うかのように揺れる。
タキは冷たくなった地面にそっと身を横たえた。