国立大図書館
……ある日の昼下がり。
退屈で仕方がないオーレリアは、退屈しのぎのための本を借りに、国立大図書館に借りた馬車で向かっていた。
曰く。
「だって暇なんだもの」
もちろん、
「まあねぇ……ついてくるとは分かってたけど」
「当たり前だろ」
「……ついてこない方がおかしいわよね、分かるわ」
セフィロスも一緒である。
ため息を一つつき、気を取り直して王都の景色を眺めるオーレリアと、オーレリアに抱きつくセフィロス。
王都は今日も元気である。活発である。
ああ、子どもたちの笑い声が聞こえてくるわ。
「もうちょっと離れてくれたら嬉しいんだけど?」
「嫌」
「……即答したわよ、この子」
「嫌だったからそう言ったまでだ」
「……、……」
最早ため息しか出ないオーレリアである。
セフィロスはそんなオーレリアの膝の上に頭を乗せ、心地よい微睡みの中へと落ちていった。
☆
「……大きいわ」
大図書館内に入ったオーレリアたちを出迎えたのは、360度本、本。見渡す限り本の山。オーレリアにとっては楽園なのだ、が。
「そう言えば、ここにはいろいろな分野において十分すぎるほどの膨大な本があるらしい」
「そりゃそーだわ……」
早速首が痛くなりだしたオーレリアは、顔を歪めながらぐるりと見回した。むしろ首が痛い。
あまりにも多すぎて、セフィロスの豆知識にもため息が混じってしまった。
ちなみに、オーレリアはこの世界の言葉が読める。
言葉も通じるのは、彼女が持つ神通力のおかげであった。
母であるという地位も関係しているが、ほとんどは神通力のおかげなのである。
セフィロスと共に図書館内を巡り、興味をもった本を何冊か手に取ると、入り口付近にあるカウンターに持って行き、カウンターの女性に声をかけた。
もちろん、本を借りるためである。
王の客人と言えど、大図書館では勝手に借りていくなど無礼も甚だしいところだ。
「こんにちは。本を借りたいのですが、よろしいですか?」
「あ、いらっしゃいませ、国立大図書館へ。ええ、よろしいですよ」
「ありがとうございます」
「返却期限は二週間後ですので、二週間後になったらこちらまでお返しくださいませ」
「分かりましたわ。ありがとうございます」
「いえいえ、またのお越しをお待ちしております」
難なく貸し出し処理を行ったオーレリア。笑顔でカウンターを後にする。セフィロスが軽く驚いていたが、前を見ていたオーレリアからは見えなかった。
しばらく二人で図書館で時間を潰したあと、迎えに来てくれた馬車に乗って王城に戻った。
オーレリアが借りた本は、魔術、古代神話、現代神話、医療、哲学などさまざまな分野の本である。どうやら現代と古代ではいろいろと学問が違うらしく、過去の産物と成り果てたものや現代最大の技術と呼ばれる技術も出てきているらしい。
王城に戻ると、オーレリアはすぐに自室で借りた本を読み耽った。
だって他にすることがないから。