お、王妃?
「…」
オーレリアは、暫し唖然としていた。
カチンコチンに身体が固まっている状態である。
理由は。
「なぁんで私は王妃になってるのよぉおおお!」
だからである。
「オーレリア、落ち着け」
「これが落ち着いていられるもんですか!!」
セフィロスの制止の声も聞かず、オーレリアは叫んだ。
ちなみに、この事を言ったのはセフィロスであり、ここにはデュカリアスもいる。
「そんなこと、これっっっぽっちもないわよ!!」
「何気に酷いな、オーレリア」
「……あ、陛下……じゃなくて、デュカリアスもいたんだったわ」
「……おいおい」
ずぅーんと落ち込むデュカリアスと、呆れたようにため息をつくセフィロスと、頭を抱えるオーレリア。
それぞれの反応をするなかで、クスリと控えめに笑う侍女が一人。彼女は主がこのような会話をしたのを見た覚えがない。
少なくとも、仕えてきた10年間の間は。
だからこそ、彼女にとってこのような光景は実に微笑ましいのである。
「……ん? どうかした、アリス」
「あ、いえ、何でもありませんわ。会話が面白くて……つい」
「面白いならいいんだけどね……」
はぁ……とため息をついたオーレリアは、うん、本を読もう! とテーブルの上に置いてある本を幾つか手に取った。
当然、セフィロスとデュカリアスは無視だ。
「「……、……」」
二人がオーレリアを見るが、当の本人は涼しい顔で読書をしている。
これは相手にされないと悟った二人は、同じようにため息をつきながら、セフィロスは小型の竜の姿へと変え、デュカリアスは執務に専念するのだった。
そんな様子も侍女のアリスに見られていたことを、当の本人たちは知らない。
★
「ところでよ」
「どうした、オーレリア」
「誰が私を王妃に推薦したのかしら?」ニッコリ
「……俺だ」
「あら、正直なのね」
「妻に向かって正直ではない夫とはどんな阿呆だ」
「……王妃の件、慎んでお断りさせていただきたいのでございますが」
「お前が王妃じゃなかったらこの国終わるぞ」
「どんな未来予想よ!?」
「というわけで決定な。ちなみに城中の人間が認めているから拒否権はないぞ。というより皆が逃がすつもりはないらしいが」
もちろん俺もな。
と宣った国王陛下は、ニヤリと猛獣のような笑みを硬直している姫君に向けた。
「つまり私は逃げられないんじゃ」
「そういうことだ」
「イヤァァァァアアアアアアアアアアアアアア!!!」