城内
ところ変わって、こちらは王都。
広場は子供たちが遊び、道端には店が所狭しと並ぶ。
道という道は人々で溢れかえり、陽気な喋り声や笑い声が響き渡っていた。
だが。
「……うわあ」
半強制的に王都へと連れてこられたオーレリアは、城の大きさと豪華さに思わず声を漏らしていた。
因みに、今オーレリアたちがいるところは、城の城門前である。
大きい。豪華。眩しい。目が死ぬ。
これだけに一体どれだけのお金を費やしたのだろう、という思いが頭を過る。
「……オーレリア? 行くぞ」
「……! ちょ、」
口を開けてポカーンとしているオーレリアを、デュカリアスがいきなり手を引く。
それにオーレリアは体勢を崩しながらも、なんとか持ちこたえ、大人しく彼の後をついて城の中へと入った。
不意打ちとは卑怯な。
全くもって面白くない。
オーレリアは仏頂面でデュカリアスに文句を言った。
「もうっ! いきなり手引かないで!」
「固まってたお前が悪い」
「庶民なんだからしょうがないでしょ!」
「……庶民なのか?」
「え? そうよ?」
「神殿に住んでたから、巫女かと思った」
「……、……まあ、それは否定できないけど」
「だったら巫女だろ」
「……じゃあそうしとくわ」
巫女と庶民って違うのか、なんて思う。
ほのぼの?な会話をしつつ歩いていると、すれ違う人たちが皆オーレリアを見ていることに気づいた。
それに訝しげにデュカリアスを見上げる。
「あら、私変?」
「いや?」
「みんな私を見ているから」
「……それは俺と一緒にいるからだろ」
「ああ、そうね。国王陛下だものね」
「ああ」
オーレリアはそう、と納得し隣を歩く彼の表情の微かな変化に気づくことなく、壁に掛けられた絵画を物珍しそうに見ていた。
そのまま歩くこと10分程。
不意にデュカリアスが足を止め、つられてオーレリアも足を止める。
「ここは……?」
「執務室だ」
「……入るの?」
「入らないでどうする?」
「……。そうよね、うん」
一人で頷くオーレリアを訝しげに見るデュカリアス。
デュカリアスがちらりと後ろを見、控えていた近衛騎士が、さっとオーレリアたちの前に出て、目の前の豪奢な扉を開いた。
そして、オーレリアが城に連れてこられた本当の理由を知るまで、あと一週間。