一難去ってまた一難
さて。
超絶美形の青年の姿をとる竜───もといセフィロスが、神殿に来てから一週間。
騒がしくも平穏な日々を過ごしていた。
……まあ、オーレリアも精霊たちも獣たちも、そんな生活に慣れてしまったが。
「オーレリア」
「なあに」
「我が花嫁」
「あら私はあなたの妻じゃないわよ。しかも花嫁になることを承諾した覚えは全くないしそもそも承諾する気もないし加えて急に抱きつくのはやめて」
現在、神殿の中庭。
ちょっとした散歩をしていたら、後ろから抱きつかれたオーレリアと抱きついたセフィロスの姿だ。
先程の会話は既に日常化しており、それに毎回オーレリアが笑顔で一気に(会話で)抵抗しているのである。
精霊たちからすれば……
『怖い………………』
のであった。
いつものようにゆったりとした時間を過ごしていると、またもや獣たちがオーレリアたちのもとへと駆け寄ってきた。
それに合わせて、セフィロスの腕から逃げる。
「…………」
「……で、どうしたの?」
『人間!』
『人間が来た!』
「………………それはまた」
獣たちの言葉に、オーレリアがニヤリと嗤う。
後ろで不機嫌になっているセフィロスは無視だ。
「一国の騎士団が何の用かしらねぇ……」
そう呟きつつ、テレポートで外へと移動する。
しかも、ただの騎士団ではなく近衛だ。
少し力を使って調べた彼女は、セフィロスと動物、精霊たちにここにいるようにお願いする。
絶対に何かあること丸わかりな雰囲気に、オーレリアはにこりと微笑んだ。
◇
「……ここか?」
竜の気配がすると言うのは、と言外に告げると、近衛の隊長ルヴィスが「間違いありません」と言った。
「……でかいな、この神殿」
「そうですね。不可侵の森にこんな神殿があるとは思いませんでした」
「……ああ」
じっくりと神殿を見たあと、騎士たちに侵入許可を出す。
「御意」とルヴィスが主───デュカリアスに言い、合図を出した途端。
「……あら、国王陛下ならびに近衛騎士の皆さま、女しかいぬ神殿に何の御用ですの?」
「「「…………!?」」」
その涼やかな声と共に、一人の若い女が現れた。
見たことがない衣装を身に纏い、笑みを浮かべる妖艶な超絶美女。
いきなり現れた存在に、ただ驚くしかなかった。
しかも───こちらの情報を知っているとは。
「あなたが住まうこの神殿から、我々が探している竜の気配がしたのですが……」
いち早く復活したルヴィスが黒髪の美女に問いかけた。
それにデュカリアスは反応する。
「ええ、おりますわ」
「!」
あっさりと頷いた彼女に、更に驚いたデュカリアスたち。そんな情報を流してしまってもいいものなのであろうか。
それとも──彼女にとってこの問題は些細なことなのかもしれない。
「怪我をしていたので、治療してこちらに連れてきただけの話ですが?」
「……そ、そうですか……」
デュカリアスたちの予想を遥かに超えた発言。
おそらくその怪我は、我ら騎士団が間違えて傷つけてしまったものであろう。
だが、彼女は不思議そうにデュカリアスたちを見ている。そんな彼女に問いかけたのはデュカリアスだ。
「……すまないが、名を聞かせてもらっても?」
「あら、申し訳ございません。私の名は、オーレリアと申します」
「……ありがとう」
「いいえ。ところで、竜がどうかなさったのですか?国王陛下自ら来られるということは」
「…………」
思わず沈黙した。
彼女の質問はもっともなのだが、生憎答えることが出来ないのだ。
「……あら、勅令に触れてしまったようですわね。申し訳ございませんわ」
優雅にお辞儀した彼女──オーレリアに息を飲む。
聡明な娘だ、とデュカリアスたちは思った。
◇
陛下たちに一礼すると、オーレリアはセフィロスを呼ぶ。
『セフィロス』
その声は、案外遠くまで響いたらしい。
精霊たちや獣たちも集まりだした。
『…………なんだ』
「陛下があなたを探していたわよ」
『……分かった』
本性で現れたセフィロスに、オーレリアはにこりと微笑む。そして、用は済んだばかりにオーレリアはテレポートで神殿の中に戻った。
そのあと、彼らがどうなったのかは知るよしもない。
自室で優雅にお茶を飲んでいる所で、セフィロスの怒りの声が聞こえてきたのでひと悶着あったことは確かだろう。
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