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親子

「パーティー?」

「ああ」


───ここは、サーレルバードの城。ただし、元が付くが。だが先代国王という訳で、自由に出入りができる。

そんな元国王に無理矢理連れてこられて(召されて)、今アリアはここにいる。


「今の国王───ジルの戴冠を祝うパーティーだよ」

「ってことは私はその子にも会わないといけなくなるわけで」

「そうなるな」

「……」


思わずうんざりした顔をするアリアに、サーレルバードは苦笑した。それを見て、アリアはため息をつく。


「仕方がないわねえ」

「助かった」

「私のパートナーは貴方なのでしょう?」

「当然だろ」

「わあ……」


即答を返されたアリアはひくり、と顔をひきつらせ、対するサーレルバードはニヤリと笑った。またもやため息をつくとそれで、と話を促す。


「……招待国には」

「もちろん、あいつの国も入っている」

「でしょうねえ……」


ある意味鬼門。苦虫を数匹噛み潰したような顔をするアリアに、サーレルバードも珍しくため息をついた。


「とりあえず、ジルに会おう」

「……ええ、そうね」

「行くぞ」

「ちょ、ま、今から!? さすがに執務があるだろうし、後からでも……」

「パーティーは三日後だ。さっさとやるべきことはしておかないとダメだろう?」

「パーティーの日程を早めに教えなさいよ!! どうせ拒否権ないのでしょうがっ」

「当然」

「……」


ずーんとアリアが落ち込んだところを、サーレルバードが彼女の身体を抱えて横抱きにし、なに食わぬ顔で彼女に宛がわれた部屋を出た。降ろせと叫んだところで効果はなかった。



コンコン、と執務室のドアが叩かれたことに気づき、ジルベルトはふと顔を上げた。側に控えていた近衛兵に目配せをすると、近衛兵は来訪者を告げる。


「サーレルバード様と姫巫女様がいらっしゃっております」

「父上が……? まあいい、通せ」

「御意」


姫巫女、が誰かは知らないが、父が連れてきたのだから意味があるのだろうと思い、許可を下した。

……そういえば、父はずっと誰かを探していたような。

と、ジルベルトが遠い目になったとき、執務室のドアが開けられて、一組の男女が入ってきた。紛れもなく父と───、


「陛下、姫巫女様です」


だそうだ。


父の横に立つ女を見て───はっと息を呑んだ。

見たこともない形の白と緋色の着物に、絶世と傾国と言葉の限りを尽くしても表しきれないその儚げな美貌。


────思わず見とれた。


「おい、ジル」


という、父の声がするまでは。


「姫巫女のアリアだ。パーティーに参加するため来てくれた」

「ご紹介に与りまして。姫巫女のアリアですわ」

「あ、ああ、よろしくお願いします、姫」


ふと出た名称に、彼女が驚いているのが見えた。しかし、一番驚いていたのは他ならぬ自分だった。無意識に出てしまったものだったのだから。


「あら、そんな呼ばないで。アリアって呼んでくださる?」


ああ、あと、ジルって呼んでも構わないかしら?


淡い微笑みとともに告げられた言葉に、ジルは言葉もなく頷いた。隣の父が不機嫌そうに彼女を見つめている。そんな表情を、ジルベルトは初めて見た。


「顔合わせは終了したな」

「父上」

「なんだ」

「お付きあいされているのですか?」

「あら? 違うわよ、ジル」

「そうなのですか」

「……」


彼女を引っ張って帰ろうとする父に問いかけた質問を、他ならぬ彼女に説得力のある答えを返され、目に見えて笑顔になったジルベルトにサーレルバードが一言。


「ちなみにパーティーのパートナーは俺だからな」


その途端、ジルベルトは残念そうにし、サーレルバードは笑ったのだった。





本人は気がついていないが、緩やかに恋が芽生えていた。

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