番外編1-2 告白
「お久しぶりでございますわ、オーレリアさま」
「お久しぶりでございますわね」
いち早く立ち直った王妃が、オーレリア───姫に笑いかける。
「お子さまが出来たようで、お喜び申し上げますわ」
王妃に姫が笑いかけ。
そして国王に笑いかける。
そんな時、向こうで遊んでいたはずの王子がこちらにやって来て、姫の前に歩みより。
「こんにちは!」
と、笑った。
「あらあら。こんにちは、殿下」
一瞬動きが止まった姫だが、すぐに復活して挨拶を返す。
国王夫妻は驚きを隠せなかったが、もういいか、と諦めた。
……人生諦めることも大事である。
「最近落ち着きませんの、この子」
気になっていたことを王妃が姫に話す。
たいして答えは。
「……それは、私が来ることを予測していたのでは?」
「「!?」」
……爆弾発言だった。
「子どもは何分、大人より周りのものに敏感ですわ。子どもがその力の変化や、雰囲気の変化を感じ取っても可笑しくはないですわね」
ギュッと抱きつく王子の頭を優しく撫でながら、姫は笑った。
「そうなのですか」
「そうなのか」
国王夫妻が納得する傍ら、王子がキャッキャと笑う。
王子を器用にあやす姫。
そんな様子を、物言いたげに国王が見つめていた。
「……あちらで遊びましょうね」
夫を気遣ってか、王妃が王子を連れてこの場を離れた。
しぶしぶ王子がついていく。
あとは、───二人きり。
沈黙は、そう長くは続かなかった。
「……お久しぶりね、デュカリアス」
姫が優しく微笑んでいたから。
「……ああ」
国王がかつて愛した人。
今も忘れられない、大切な人───。
お礼を言いたかった人。
言いたいことがたくさんあるはずなのに、言葉が出てこない。
「オーレリア」
「……ん?」
言いたくて、言いたくて。
けれど何もかもが邪魔して言えなかった言葉。
決して許されない、想いを言葉にする。
「────愛してる」
昔も今も、これからも。
母であると分かっていても、禁忌だと分かっていても……それでも。
ずっと変わらないこの想いを、伝えて。
驚きに身体が硬直した彼女に近寄り、右腕を掴んで引き寄せる。
まだ心と身体が追い付いていない彼女は、あっさりと腕に落ちてきた。
「……母だとしても、これだけは譲れない」
囁いた言葉が微かに震えた。
腕の中にあるぬくもりが愛しくて。
また、会えたことが嬉しくて。
「……デュカリアス」
困惑ぎみに見上げる彼女に────そっと。
口づけた。
ずっと、ずっと一度でいいからしたかったこと。
ようやく、叶った。
☆
しばらくして。
離れていた王妃たちも戻ってきてお茶会を再開する。平和な、優しい時間。だが。
「……姫」
「あら」
突然現れた竜王は、姫の隣に立ち。
「迎えに来た」
───そう、宣った。
「まさかセフィロスが来るとは思ってなかったわ」
優雅にお茶を飲む姫。
姫を守るようにして立つ竜王。
「「……」」
……絵になる……。
思わずそう思ってしまった国王夫妻である。
「別にいいだろ」
「よくないとは一言も言ってないわよ」
「……」
「……あら、黙りこんだわ」
「……」
つい、とそっぽ向いた竜王は無視して、お茶を飲み終わった姫は「ご馳走さま」と一言言い。
「さて、そろそろお暇しますわね」
そう、微笑んだ。
「ちょっとした私用がありますので」
「……分かりましたわ」
「また来い」
「……ええ」
軽めの別れの挨拶を済ませ。
「またいつか」
最後まで笑って消えていった。
────竜王とともに。
明けましておめでとうございます。
新年明けましての投稿。
これだけは書いておきたかったのです!
ふへ←
次回はサーレルバードの国、
ジースセント王国のお話でっさ!←