番外編1 訪問者
とある日の昼下がり。
シヴァール王国の王城の中庭で、国王夫妻が王子も交えてお茶会をしていた。
「この頃、何故かこの子が落ち着きませんの」
「……何かあったのか?」
「いいえ……特に何もないのですが」
話す内容は、主に王子のこと。
つい最近二歳となった王子は、遊びたい盛りのやんちゃ者だ。
そんな王子が、最近遊ぶのを控えている様子がある。
「……分からんな」
「わたくしもですわ」
顔を見合わせて考えていると───、いつの間にか王子が消えている。
が、当の本人はいつの間にか侍女を捕まえて遊んでいた。
国王夫妻は途端にホッと胸を撫で下ろす。
「殿下、今日は噴水のところで遊びましょうね」
「あい!」
元気よい返事をして、侍女についていく王子。
そんな様子を見つつ、夫妻はまた考え込む。
「こうして見ると……元気ですわね……」
「ああ」
うーむと考えると、キリがない。
なので考えることそのものを放棄してしまった二人である。
そんな時───。
平和な中庭に突然、光が現れた。
けれど眩しくはない、月のような柔らかい光が。
しばらくして、光が収まり。
その場所に立っていたのは───。
「……オーレリア」
「オーレリアさま……」
───そう。
二年ほど前に消えたオーレリアだった。
出会ったときと同じ朱と白の装束の上に、白い同じような装束を二枚ほど重ね着した姿。
髪には薄桃色の花が飾られた、美しき姫。
そして手に持つは、聖珠の錫杖。
彼女は儚げに微笑んだ。
「ご機嫌麗しゅう、国王陛下、ならびに王妃殿下」
出会ったときと同じ、笑顔と声で。