エピローグ
───先の大戦から二年が経過した。
ジースセント王国国王、サーレルバードはあの後すぐに養子を取り、つい先日王位を明け渡した。
国民に惜しまれた譲位だった。
デュカリアスが聞いたところによると、サーレルバードは世界を見て回ることにしたらしい。
───また、彼女に会えることを祈って。
姫巫女は、数年に一度また世界の様子を見に来ると言う話に、小さな可能性を秘めて。
良き友人となった二人は、お忍びでお互いの国の城下町を見て回ることが多かった。
その度に色んなことを見つけ、あーでもないこーでもないと議論を交わしたものだった。
そんなことも、今となってはいい思い出だ。
当のデュカリアスは、王妃候補の中のユリフェッカを王妃の座に据えた。
なぜかと言うと、王妃候補たちが「本当の私を見つけたいのです」と言って、王妃候補の座を退いたのだ。
───これも、あの彼女の伝言がきっかけだろうと思っている。
効果は絶大だな、とほろ苦く笑った。
デュカリアスは今では王子も生まれ、穏やかな日々を過ごしている。
良き母となって子育てに奮闘しているユリフェッカは、今となっては消えてしまった彼女のようになりたいのかもしれない、と最近思うようになった。
───子どもを慈しむのは親の役目。
育児を放棄しては、子が苦労するのよ。
いつか聞いたと言う、彼女の言葉を充実に守っている王妃だ。
もちろんデュカリアスも育児に参加しているが、どうにも苦手らしく、不器用になってしまう。
だが、そんなデュカリアスが微笑ましいのか、王妃や侍女たちが積極的に子の様子を語りかけてくる。
しまいには、強制的に連れ去られる場合もあった。
……が、そのことに怒らずやってみるのもいいか、と思い参加している。
デュカリアスは、彼女にお礼を言いたいと願っている。
いろいろな感情や、たくさんのことを教えてくれたことを。
だからまた会いたいと願う。
強く願えば叶う、それを教えてくれたのは宰相だ。
───そのときまで待とう。いくらでも。
「おとうしゃま!」
無邪気に駆け寄ってくる息子に、デュカリアスは笑って答えた。
「……どうした、フィリス」