彼女と。
「儚き想いは泡沫の如く──熱き願いは太陽の如く」
……なれどさせることもなかりければ
我が魂は我が子らを永久に見守らんことを……」
──────戦場に響く朗々たる声。
この詩は、神話に登場する母の言葉で……。
声の聞こえたところを、みなが凝視した。
「……やっぱり、貴方でしたか」
ちょうど、双方の中間に立つ彼女が、姿を現したジースセント王国国王に向かって呟く。
「どうしても、諦められなかった」
そう言うはジースセント王国国王、サーレルバード。
「……それだけなら、何もこんな戦争などする必要ありませんでしたのに……」
哀しげに言うオーレリアに、サーレルバードが口を開いた。
「こうでもしないと、お前は手に入らないだろう……?」
「……っ、人の命を……何だとお思いですか」
「手駒ではなく、一人一人が大切な───世界でたった一人の命だと、教えたのはお前だ」
「だったら何故」
「……この戦場に出た者たちは、お前の為に命を落とすことを躊躇わなかった者たちだ。それだけ、お前は愛されていたんだ、そんな思いを、無駄にする気か……?」
「───っ」
驚いたように口をつぐむオーレリア。
そんな彼女の周りに……そっと寄り添う影があった。
いくつもの影が、彼女の周りに集まる。
「「「……」」」
しばらく彼女を慰めるかのように包み込んだ後、フッと影の姿が明瞭になった。
────その姿は。
「「「……天帝と堕天使たち……!?」」」
「……ルシアス」
神話に現れる、天帝ルシアスと━━━━天に反逆して堕ちた、堕天使たち。
ルシファー、ベルゼブブ、バアル、アスタロト……。
━━━何故、彼らがここにいるのだろうか。
そんな疑問が、あたりを包む。
周りの思惑など知らぬ彼女が、そっと天帝の名前を呟いて、ふわと微笑んだ。
「「「───……」」」
それを見た全員が、その微笑みに見とれて。
「……姫巫女、戻るぞ───」
────次の天帝の言葉で我に帰った。
「……ルシフェル」
「ん?」
後から行くわ━━━と、堕天使の長に彼女が言う。
「ああ」
堕天使ルシファーは、微かに微笑んで頷いた。
そして、彼女が笑って言った。
「まずは、これをどうにかしないと」
───と。
☆
「……オーレリア……」
遠く感じる。
存在が、遠いと。
彼女が、果てしなく遠いと━━━━━。
やっと、近づけたと思ったのに。
近づいたと思ったのに。
━━━━━遠くなってしまった。
「……っ」
あぁ。
認めよう。
自分の想いを。
閉じ込めて、鍵をかけたはずの黒い感情に。
……今、名前を与えよう。
彼女のことを好きだということを━━━━。
むしろ、好きだという感情より、上にいくかもしれない。
そう。
失ってしまうのが怖いのだ。
いなくなってしまうのが、怖いのだ。
何気ない毎日を過ごすことに満足しながら幸せに感じながらも、彼女がいなくなってしまうことを……心のどこかで恐れていたのだった。
いつの間にか、彼女のことを恋愛対象として見ていたのだ。
「……オーレリア、」
震える声で呟いた彼女の名前は。
誰にも届かず、大気に溶け込んで消えた。
加筆修正いたしました(^ω^ ≡ ^ω^)
読み返してみたらとてもじゃないけれどお見せできないようなものだったのでw
デュカリアス、遅れながらも自覚。
そして、ライバル's登場ですw
最大のライバルは……天帝と大魔王だったり、して。
↑ネタバレwwww