応戦準備
『ですが、応戦するのであれば私には止める権利はございませんわ━━━━』
去り際、彼女が放った一言。
それはあたかも、応戦することに決めたことを知っているような雰囲気であった。
「……彼女は、辛い戦争を乗り越えてきたのですね」
「映像を写し出すあの魔術は見たことありませんが……、そのような、感じでしたね」
「実際に見たものを映像にして我らに見せたのだろう」
彼女は人々が死んでいく様子を見て、どう思ったのだろう。
嘆き、涙を流して慟哭したのだろうか。
大切な人が死んだことを、受け入れられたのだろうか……。
いや、今はそれを考えている場合ではない。
デュカリアスは軽く頭を左右に振って、後ろを振り返る。
そして、自らの意思を告げた。
「応戦するぞ」
この国を守るために。
国民を、守るために━━━。
なによりも、愛しき者を守るために。
「「「御意」」」
そんな国王の決意が伝わったのか、王候貴族たちはしっかりと頷く。
そんな様子を、彼女が微笑みながら見ていた気がした。
☆
翌日から、とたんに忙しくなった。
騎士たちに応戦することを伝え、国民には宣戦布告されて受けてたつことを伝え。
王妃候補たちには、戦争をするということだけを伝え、一旦実家に戻らせた。
仮にも王妃候補たちを戦争に巻き込むわけにはいかないのだ。
「あとは、オーレリアだな……」
そう、残る王妃候補のうちの一人。
彼女が住んでいた森には、戦地に近く……戦争の火の粉が舞い込むかもしれない、と言う恐れがあるのである。
かといって城に残しておくのは危険が多すぎる。
留守であることを狙って、襲われるかもしれないのだ。
「……連れていっても危険だ」
「姫様のご意志を尊重いたしましょう、出来る限り」
「そうだな……聞いてみよう」
「そのようになさると良いですよ」
「あぁ」
今日は忙しい。
国王は宰相とそう会話を交わし、頷きあう。
オーレリアには、明日聞いてみることにした。
戦争が始まるまであと
三ヶ月。