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天空の姫巫女 フィールア編  作者: 如月 茅紗
戦争と喪ったもの
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戦争秘話

残酷描写にお気をつけください。

アリスが話が長くなるから、と言われて、しぶしぶ椅子に座ったことを確認したオーレリアは、ゆっくりと話し出す……惨禍(さんか)な戦争秘話を。



「私がいた国━━━日本と言うのですが━━━、独自の文化を築いていました」


そう━━━武士道という、独自の文化を。

日本語という、独自の言語を。


「日本は当初、鎖国制度という制度を行っていたお陰か、独自の文化を築いていたのです。

そして開国をしたとき、列強と呼ばれる強国に弱小国と(さげす)まれていたのですが……何年か経ったのち、ある大国に勝ったことで列強への仲間入りを果たしました」


眠れる獅子、と呼ばれていた大国中国に、弱小国と呼ばれていた日本が勝ったのである。

そのニュースは瞬く間に世界中へと広がっていった。

俗にいう……日清戦争だ。

よって、中国は『眠れる獅子』という二つ名を奪われ、日本は更に軍事化が進んだ。


「列強への仲間入りした日本は、所詮小さな国。

資源も少なく、輸入に頼らなければなりませんでした。

ですから、お隣の大国に攻めいり資源を確保しようと考えたのです……」


実際に中国は資源が豊富だった。

そして、植民地を欲しがったのも一つの理由だ。


「そんな大国と戦争したことは二度ありました。その度に日本は勝ち続けたのです」


ロシアとの戦争━━━日露戦争は正確には日本が勝ったわけではない。

引き分けということで実際は決着がついたのである。


「そんなとき、第一次世界対戦が起きました……。

きっかけは、とある国の皇太子を他の国の者が殺したという、当時では小さな出来事でした」


サラエボ事件。

バルカン半島━━━ヨーロッパの火薬庫。

オーストリアの皇太子。

セルビア人の暗殺者。

当時にとっては小さな出来事。だがオーストリアにとっては大きな出来事。


「けれども、相手は仮にも皇太子。

国としては世継ぎを殺されたわけですから、当然戦争が勃発しました。

それが、第一次世界対戦です」


オーレリアが指をぱちりと鳴らすと、巨大なスクリーンが浮かび上がった。

そして、映像が写し出される。

それは━━━━、第一次世界対戦の戦時中の映像。

死んでいく人々や、傷を負った人々、そして……きっかけとなった、サラエボ事件で殺されたオーストリア皇太子の着ていた銃弾の残る血まみれの服。


「この戦争を発端として世界各地で戦争が起きました……もちろん、宣戦布告をして」


宣戦布告をしなければ、攻撃を仕掛ける国はルールを守らなかった国として批判を受けるのだ。

実際……日本もしなかったことがあった。


「この戦争は4年ほど続きました。終戦したときの犠牲者は戦死者が約992万人、戦傷者が約2.077万人、行方不明者が約775万人と言われています」


あくまで各国の政府が把握している人数だ、実際は……どのくらいか計り知れないだろう。


あまりの犠牲者の多さに、会議場にいる全員が瞠目した。

なにしろ単位が『万人』である。

それだけの人々が喪われた世界は、戦後どうなっていたのだろう。


「戦後まもなく、国際連合なるものが創られ、戦争はもうしない。と約束したはずでした」


長くは続かなかった。平和は。

だが……それはドイツによって破壊された。

ドイツがポーランドに侵攻したのだ。

アドルフ・ヒトラーが独裁政治を敷いていたドイツは、ナチス・ドイツと呼ばれるようになった。

そんなドイツは独裁者ヒトラーによって、戦争を勃発させるきっかけを作ってしまった。


「ドイツという国が隣にある国を侵攻したことで、またもや戦争が始まりました」


スクリーンに写し出される、ドイツ軍の映像。

たまたま遭遇してしまった民間人まで、殺している。

なんと、(むご)いことか。


「この度の戦争は、第一次世界対戦よりも更に悲惨で、残酷で、非道極まりないものでした」


映像が写し出すのは、各国のリーダーたち。

カナダのスターリン、イギリスのジョージ6世、アメリカのルーズベルト大統領、中国の蒋介石……。

ドイツのヒトラー、日本の昭和天皇……。


「日本も参戦したのですが、味方した国が悪かった。敵とした国が悪かった……。

私たち日本は、世界を敵に回したようなものでした」


「日本兵は武道と呼ばれる戦法を主流にしていましたから、敵国の兵士たちが助けようと手を差しのべていても、日本兵は手榴弾で自殺していきました。だって、お国のために死ね、敵軍に救われるくらいなら自ら死ね。そう言われてきましたから」


硫黄島。

敵であろうと助けようと手を差しのべるアメリカ兵と、その目の前で自殺していく日本兵。

呆然とするアメリカ兵たち。

目の前には手榴弾によってバラバラにちぎれた日本兵の体。


「武道はとても忠誠心が強く……主人を守り抜くためなら死さえもいとわないほどのものでした……」


「そして、世界がそろそろ終わりに近づいてきた頃……、日本に原子爆弾というものが落とされました。それを受けて日本がやっと無条件降伏をしたことで、戦争━━━━第二次世界対戦は終わったのです」


原子爆弾投下。

それは日本に甚大な被害を与えた。

そしてやっと、以前から世界各国から受け入れるように言われていたポツダム宣言を受け入れたのだ。


次々と同盟国が降伏していくなかで、日本が降伏を渋ったのは、最後の悪あがきだったのかもしれない。

武士道の精神が許さなかったのかもしれない。


「戦死者は軍人だけで約2.500万人、民間人は3.700万人という、とても大きな犠牲を払いました」


欲望のままに動いた戦争。

その代償はとてつもなく大きかった。


「亡くなった民間人は、迫害された人々がほとんどでした」


映像に写し出されるのは、ナチスによって迫害されたユダヤ人の人々。独房に詰め込まれ、毒ガスによって死んでいく人々。

アウシュヴィッツ強制収容所が有名な、迫害……。

『自由になりたいなら働け』

確かそんな文句だっただろう。

けれどそんなものはただの文字の羅列でしかなかった。


人々の変わり果てた無惨な姿に、みなが哀しげな表情を浮かべた。


「私が伝えたいのは、戦争の裏側にはこんな兵士たちの、騎士たちの慟哭もあるということです」


人々が泣き叫ぶ。

愛しいものを、大切なものを喪って泣きわめく。

それはもちろん、兵士たちや騎士たちも例外ではない。


灰になって帰ってきた大事な人を、家族はどう思っただろう。

大切な人を奪った戦争を、憎んだだろう。

それは当然というものだ。

遺骨はもちろん、遺品ですら帰ってこなかったから。

ひどければ、箱だけしか渡されなかったのだから。


ある国では、死んだという、手紙だけしか届かなかったのだから。


「……血を血で洗った戦争は文字通り、血を血で洗ったのですわ」


多くの血が流れた戦争は、これで最後と思いたい。

全ての映像は、オーレリアが実際に見たものだった。

全て目で見て、体験して。

その辛さを、わかってほしいがためにこうやって、伝えているのだ。


「……以上で、終わりますわ」


話終えたオーレリアは、放心気味な侍女を連れて、会議室を出ていった。





戦争のことに関する内容を書くのに、一時間ほどかかりました(´^ω^`)


難しいですね、やっぱり(´^ω^`)



第一次世界対戦、第二次世界対戦に関する内容は全て事実に基づいております。

もしも違うと感じた場合はご遠慮なくお申し付けください。



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