胸騒ぎ
話のながれががらりと変わりました。w
王妃候補たちの対決を終え、穏やかなとある日。
「……?」
何故だかさっきから胸騒ぎがする。
なんだろう……、と考えてみるが、思いあたる筋はない。
だが、一つ考え付いたことを傍にいるアリスに聞いてみる。
「……アリス、この国と敵対している国はある?」
突然問いかけられたアリスが、戸惑いつつも答えた。
「ええ。お隣にあるジースセント王国……、北の方に位置しますので、冬場は極寒の地と言われますわ」
「……ジースセント?」
「ええ。今の王がご即位なされる前から両国共に仲が悪かったそうですわ」
「……」
ジースセント王国。
オーレリアは心当たりがありすぎた。
そう、一年半前のこと。
オーレリアはジースセント王国で、一時期王妃として扱われていたことがあったのだ。
けれど地球に帰らねばならなくなり、やむを得ずジースセントを離れたまま、一度も赴いていない。
こちらに来たときでさえ、オーレリアもいっぱいいっぱいで、すっかりジースセントのことを忘れていた。
オーレリアの落ち度だった。
今回、王妃候補として各国にデュカリアスが全員公表したため、ジースセント側が気づいたのだろう。
オーレリアがこの国にいることを。
色々と思い出していたオーレリアは、ふと思った。
「……まさか」
「どうなされました?」
ガタンと勢いよく椅子から立ち上がったオーレリアに、アリスが驚いたようにこちらを見た。それに、確信を持って伝える。
「きっと、この国にジースセント王国がこの国に宣戦布告をしたんだわ……!」
「えっ!?」
そ、そそそそれは本当ですの!? 大変ですわ! と騒ぐアリスをなんとか宥めると、「間違いないわ」と断言する。
「思い出してみて。今日の城の様子を」
「……?」
「侍女長は心なしか憂いを帯びていなかったかしら?」
「……あっ!」
宣戦布告されたことを前提に考えてみると、全ての辻褄があうような気がした。
アリスも納得したのか、顔を弾けたようにあげる。
そう。
城の異様な静けさ。
騎士たちの多忙ぶり。
侍女たちの沈んだ顔。
ルイスやデュカリアスも忙しそうに城内を駆け回っていた。
「納得した……!」
そう言ってちっ、と舌打ちをする。
ジースセント王国は魔術に長けた国と言われている。
なぜなら極寒の地が絶好の修行場となるからだ。
だからジースセント王国には魔術師ばかりが集まるのだ。
こちらを考えてみると、肉弾戦が得意な騎士たちばかりである。
魔術に長けた者はほとんどいないのだ。
いるとしても、ほんの数十名だろう。
これでは圧倒的にこちらが不利だ。
だが……戦争の悲惨さは伝えなければならない。
地球での先の二度に渡る世界対戦。
戦争と言うものがいかに辛く、悲しく、無意味なものであるか伝えねばならないのだ。
「……アリス、執務室に行ってくるわ」
「え? あ、私も行きますわ!」
言いながら部屋を出たオーレリアに、アリスがついてくる。
まぁいいか、と思いつつもオーレリアは執務室に急いだ。