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王妃候補・ユリフェッカ

デュカリアスが執務室にて報告書を読んでいる頃。


オーレリアは自室で本を読んでいた。

……他にすることがないからである。

はっきり言って暇である。

そう、暇。


「退屈なのも嫌なのよね……矛盾してるわ」

「オーレリア様、それはわたくしたちも同じですわ」

「……そうね」


ふと呟いた言葉は、傍にいた侍女にしっかりと聞かれていたらしい。

思わぬところで言葉を返された。


「平穏そのものは良いけれど、平凡な暮らしが欲しいわ。切実に」

「……オーレリア様、王城にいる限り平凡な暮らしはないかと……」

「分かってる、分かってはいるけれども求めずにはいられないのよ!」


アリスが力説するオーレリアに何かを言おうと口を開きかけたとき。


コンコン…と、ドアをノックする音が二人の耳に入った。


「……どうぞ」


二人顔を見合わせたのも一瞬のこと、オーレリアは冷静に応じ、アリスがドアを開けに行く。


「ごきげんよう、少しよろしくて?」


入ってきたのはアルバニア公爵令嬢、ユリフェッカ・ド・アルバニアだった。


「えぇ、もちろんですわ」


努めて笑顔を作りどうぞと椅子に促すと、ユリフェッカは淑女らしく丁寧に座った。


「この度は、急な訪問をお許しいただきまして、嬉しい限りですわ」

「いえ、私もちょうど退屈しておりましたのよ。お気になさらず」

「まぁ、わたくしもそうですのよ。どなたか話していただける方はいらっしゃらないかと思いまして来たのですけれど……、周りの方々が怖くて」


苦笑ぎみに話すユリフェッカに好感を覚えたオーレリアは、周りの方々はとても怖いですものね、分かりますわ、と笑った。

ちょっとでも話していると、ユリフェッカの性格が良く分かった。

どうやら、純真無垢で無知なお嬢様らしい。

相当大事に大事に育ててこられたのだということが分かる。

このことが分かったオーレリアは、色んなことを教えてあげた。


そして、二週間も経てば「ユリフェッカ」「お姉さま」と呼びあう仲になった。

度々ユリフェッカがオーレリアの部屋に遊びに来ることも多々あり、逆にオーレリアがユリフェッカの部屋へ遊びに行くこともあった。





ユリフェッカは正直、王妃候補として王城に上がりたくはなかった。


公爵令嬢として、政略結婚を迫られると分かっていても好きな人と結婚したいと思っているのだ。

貴族で恋愛結婚はごく希なことであるが、ユリフェッカは恋愛結婚で生きていきたいと思っていたのだった。

貴族の中では恋愛結婚は本当に希であり、聞くとしてもあのフェアリスト家だけであった。

それでも恋愛結婚をして幸せになりたかったのだ。


そんなユリフェッカを待っていたのは、豪華な暮らしと他の王妃候補たちの怖さだった。これが後宮なのかと思った。

ユリフェッカが思っていたより、女という生き物は怖かった。

みなプライドが高く、いかに王妃になるか企んでいるような候補たちばかりであったから、余計怖かったのだ。


そんななか、ユリフェッカと気が合いそうと思ったのは、黒目黒髪という珍しい容姿のオーレリアという美女であった。

先日のパーティーで圧倒的な存在感を見せつけられたものの、不思議と威圧感は感じなかった。


儚げな美貌と艶やかな黒髪が、よりいっそう神秘的な雰囲気を出している……変わった美女。


だから供も付けずに彼女の部屋に向かったのだ。

……道のりは教えてもらったのだけれども。


案の定、彼女は優しかった。

ほんの少し話しただけで、彼女の人となりがわかった気がした。


優しさに溢れた、母のような存在。


それが、ユリフェッカにとって彼女の第一印象だった。










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