『フェアリスト家』
あのパーティーから二日経ったある日。
デュカリアスは、極秘に調べさせた『フェアリスト家』の報告書を執務室で読んでいた。
書類は三センチほどの厚さでまとめられている。
情報があまりないらしい。
一般的にはかなりの厚さになるはずなのだが。
まあ、思ったより時間がかかりそうでなくて楽なのだが。
『【フェアリスト家】
元は神に通じる一族だったと言われており、今ではもうその血筋は絶えてしまったと言われている。最後に確認されたのは52年前の事である。
フェアリステという生死と命を司り、冥府へ魂を創造主のところまで送り届ける女神を先祖に持ち、予言と預言を行う一族である。
一説では、女神と人間との子が先祖であるとの噂も。
性格は基本温厚だが、いざとなれば人を冷たく突き放すという厳しさも持ち合わせていたと言われていた。
常に最善の道を選び、過去と同じ轍を踏まないよう冷静に物事をよく考えて行動していたと言われている。
家族関係はかなり上手くいっていて、夫婦親子ともに関係は良好であったという。当時にしては珍しく恋愛結婚が多い。
人に尽くし尽くされ、最期は惜しまれながらこの世を去った者が多いという。
美人の家系であり、ともすれば傾国の美姫が生まれるような家系であった。』
……と、要約すればこのような内容だった。
どうやら、フェアリスト家は人のために尽くした者が多いらしい。
人望も厚く、傘下の貴族たちも喜んで仕えたという。
「フェアリスト家、か……」
もうその血筋は絶えていると書かれてあるが、彼女はその最後の末裔なのだろう、と推測された。滅んだと言われている家系の末裔がどこかで生きていることは珍しいことではない。
ちなみに、その最後に確認されたフェアリスト家の者はフェリシア、という名の女性であったという。
デュカリアスは、見終わった書類をもてあそびつつ考える。
あの、パーティーで見た魔力とも言えない力は一体何なのだろうか。
魔力に近いようで決して近くはないあの力。
なんともいえない安心感がある不思議な力。
神官長に聞いてみたが、魔力でも精霊が使う力でもないと言われた。だというのなら、なんだというのだろう。
持ち主である彼女本人に聞くのが最も最適なのだが、それとなく本人に聞くことは難しい。
彼女は聡明で鋭い洞察力を持っている。聞いてみたところで気づかれるのがオチだ。
調べれば調べるほど、彼女に対する謎はどんどん深くなっていく。
「……もう少し、調べてみるか……」
そっと呟き、控えていた侍従を呼んで宰相にこのことを伝えるように言付けた。