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パーティー1

「♪」

「……ちょっとアリス、どうしたの、ドレス片手に」

「もちろん、今日のオーレリア様のドレス決めですわ♪」

「……」


……そうだった、今日は王妃候補たちが城にあがることを祝ったパーティーがあるのだった。


そんなことを思いつつ、るんるんでオーレリアのためのドレスを決めていくアリスを見るオーレリア。


「……ゴメンね、アリス。私もう決めてるのよ、ドレスっていうか衣装を」

「……えっ!?」


ガーンと落ち込むアリスを見たオーレリアは慌てて補足説明をした。アリスの哀愁が漂う背中を見て、更に焦る。


「あのね、別にアリスに決めてもらうのが嫌だった訳じゃないのよ!? 今回は……ね、私も候補に入ってるみたいだし、どうせなら民族衣装で出てやろうと思ったのよ」

「そうだったのですね……」


涙を軽くハンカチで拭ったアリスは、「今回はオーレリア様に任せますわ」と一言笑顔で頷く。悔しがりつつも納得してくれたようだ。


その様子を見たオーレリアは頷きながらこのことは皆には秘密よ、と悪戯っぽく微笑んだ。





「あー……もうそろそろ始まるわね」

「そうですわ、オーレリア様、準備をなさいませ」

「そうね……少し待ってて、5分で済ませるわ」

「御意」


日もどっぷり落ち、闇があたりを包む夜。

これから、国王主催のパーティーが開かれる。

王妃候補たちが城に上がることを祝う、舞踏会。

裏ではもちろん貴族たちの腹の探りあいが行われるのだが。


「……やっぱり振り袖でしょ」


笑いながら呟き、全身鏡の前でクルリと一周すると、一瞬で紅色の振り袖姿の古風で妖艶な美女に成り代わった。


紅色の振り袖は、花の模様が自然に施されたシンプルなもので、髪には桜の花が飾ってあるこの姿は、日本でよくお祝い事に着ていたものだ。

化粧はもちろん薄めにしている。

というよりオーレリアは薄化粧しかしない。


パチンと指を鳴らして、聖錫杖を持てば終わり。


ちょうど5分で終わることである。


待たせているアリスのところにいこうと、ドアの方向に歩き、「アリス、お待たせ」と言うと……


「オーレリア様……、なんてお美しゅうございますでしょうか」


……と、恍惚とした表情でオーレリアを見上げられた。心なしか目が潤んでいる気がする。

それに苦笑すると、行くわよ、一言と呟いて大広間に行くべく、歩き出した。





歩く度に、手に持つ錫杖の銀輪がシャンシャンと鳴る。涼やかな、月のようで水のような清らかな音。

水面に映る、鈍い輝きを放つ月。

冷たいけれど、慈愛に満ちた……優しい音色。


そんな音を響かせながら、アリスとオーレリアは大広間へと急いだ。



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