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天空の姫巫女 フィールア編  作者: 如月 茅紗
全ての始まり
10/47

詠み歌と、彼女の過去

城に来て何日経ったか最早分からなくなってきているオーレリアこと、アリア。

闇が辺りを包む中庭で、一人、星が瞬く空を見つめていた。

寒くないようにきちんと上に(ひとえ)を羽織っている。


城の生活にはこれまでの経験から慣れているとはいえ、雰囲気にはいつまでたっても慣れなかった。

適性というものであろうか。よく分からないが、とにかく慣れないのだ。


なので、こうして落ち着こうと中庭に出向いているのである。

星が瞬く。日本では、見えるのが当たり前であったのに今は珍しくなってきたもの。


「オーレリア、ねぇ……」


ふっと、口から洩れた呟き。

それは、この国で通している名前。

彼女の本名であり、ある国では桜の別名である言葉だった。


アリア・オーレリア・リーゼロッテ。


これが、天空の姫巫女としての彼女の名前だった。

創造主で天魔界、混沌、地上に住むありとあらゆるものの母であり、膨大な神通力を持って世界に平和をもたらすもの。

その身でもって世界を安定させ、秩序を守る大地の巫女。

天に一番近い天王山に神通力の大部分をもつ分身を置き、世界を優しく見守り、輝きをもたらすもの。


そして混沌より生まれた魔物たちを滅し、かつ封印するもの。

混沌の王、サルディアンに魔物たちを任せているものの、その数が多くなってきた故に各地を回っている滅ぼしの姫。


そこから、アリア……オーレリアは異世界に度々行くようになったのである。


輝きをもたらすものとして。

平和をもたらすものとして。

世界の秩序を保つ者であり光をもたらす者として━━━━。


出会いの数だけ別れがある、それを一番経験してきたのは、他ならぬ彼女だけだった。世界を転々とする彼女だけが知っていた。

大地の巫女、母なる大地の守り人(ガーディアン)だからこそ、多くの出会いと別れを繰り返す。

それは今でも変わらない。

だから祈る。

そっと。


「満月よ、光が瞬くその頃に

愛しき子らを……守らんことを」


ひっそりと呟く詩は、姫巫女の詠み歌。

彼女の詠み歌は力が宿る。詠み歌を紡ぐ者がそう願ったとき、詠み歌の力が解放されるのだ。

解放された力は、彼女の力によって具現化され人々に安らぎと安寧をもたらす。


オーレリアの手から洩れた一筋の光は細い、細い、蜘蛛の糸のような光。その光は音もなく天へと昇っていった。


「姫巫女は詠み歌を滅多に詠まない……、だから、それだけ気がかりってことよ」


ふわりと笑い、そう呟いた彼女は宛がわれた部屋へと戻った。


━━━━薔薇の香りを、残して。



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