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プロローグ
さて。
ここは異世界フィールアにある、深い深い森のなか。どこの国にも属さない、絶対不可侵の森だ。
森の中には誰にも知られていない大きな神殿があり、その中に一人の美女が住んでいる。黒目黒髪で、いつも巫女装束を身に纏う儚げな美女が。
誰にも干渉されない神殿の中で、彼女は平和に暮らしていた。
書庫にある膨大な書物を読み、精霊や獣たちと、思うがままに日々を過ごしてきた彼女。
そんな彼女の正体は━━━━天空の姫巫女である。
つまりは、創造主というわけだ。
だから森のなかに住むものたちは、彼女だけになつく。人間たちには決してなつかない孤高のものたちなのだ。
長らく続いていた平和な日々を、一匹の竜ととある国によって崩されるとは、思ってもみなかっただろう。
彼女を巡る争いは、国同士の戦いにまで発展した。
そんな戦争を、彼女はどうやって止めるのだろうか。