第3話 お天気お兄さんと神様と
左手の光が収まる頃、魔王の持ってきたお茶は完全に冷め切っていた。
その冷たい湯のみに口をつけ、お茶を一啜り。
とたん
「あ、そのお茶を飲むと魔力増えるから残すなよ」
っぶ!?
と、噴出したくなる衝動を抑え
残りのお茶を一気に飲み干す。
魔王のいきなりの言葉に怒ろうかと思ったが、1つ不振な点がある。
「さっき、俺の手が光ったってことは、もう魔力はあるんだろ?」
「確かにある。……が、貴様の敵は神だ。あの程度の魔力が勝てん」
なぜか貴様呼ばわりに変わったのに怒りを感じつつも我慢我慢…
ここに来た際に言われた言葉が脳裏に過ぎる。
『―――神を殺せ―――』
そっか……
俺の敵は神様で、俺の味方が魔王なんだ。
普通逆じゃないか……?
まぁ、そこは置いておこう。
「なぜ…神を殺さないといけない?」
「あの世界の神は、酷く幼い。元々あそこは我の管理する世界。
神など居なかった。しかし、ある日突然神が現れたんだ。
子供のような神がな……」
子供の神様って……
脳内で色々とツッコミを入れつつ
真顔を崩さず聴く。
これから俺が行く世界のこと。
しっかり聴かなくては……
「でな、その神は小さき故力の制御が利かんのだ。
本当は、我が止めに行ってやりたいところなんだが……
我々魔王と神は力の関係故、友好的関係を築けていないんだが
別に敵対している訳ではない。ここで我があの神を殺すと―――」
「こ……殺すと?」
「魔族VS神々の全面戦争になりかねん」
えぇーっと……
魔族は魔王を始め、悪魔や魔獣たちが……
神々は神を始め、天使や龍たちが……
結果、あの世界どころか周りの惑星までもが消えてなくなる……!?
「やばくねっ!?」
「うむ、だから貴様に頼んだ。人間が神のもとへ行けるかは分からんが、頑張ってくれ。」
うぅわぁ……
なんちゅー、いい加減な魔王。
てか、神なんて殺せねぇだろ……
だって俺の能力って……
あれ?
そういえば俺、能力を聴いてないじゃん。
この左手の紋のこと。
「俺の力……なんなんだ?」
俺は左手を見つつ問う。
「ん?貴様が望んだろう?空を変えたい……と。」
……っは?
俺の力は空を変えること?
攻撃でもなんでもなく?
「そ、そんなのでどう戦えとっ!?」
「安心せい。貴様の望んだ剣となり、我が与えし盾となる。肝心なのは最初の発動だ。方法は追々分かるだろう」
マジか……
俺、天気予報の仕事にでも就こうかな?
自分で天気が変えられるなんて、
100発100中じゃん。
まさに天職。
「ま、俺の容姿じゃ市民の皆様に姿を見せれないなっ」
うーー……
自分で言ってて悲しくなって来た。
あ?惨め?
うるさい、ほっとけ
「ん?貴様の容姿は変わると思うぞ?何せ、貴様の居た世界と今から行く世界では、重力を始めもろもろが変わっている。そのまんまで異世界とか……死ぬぞ(主に精神的に)」
え……?
マジで?
いや、ソレより精神的にって……?
い、いやいやいや!
か、考えるのは止そう
怖くなって来た。
()の中のせいで、素直に喜べなくなった…
「ま、まぁ…その、行って来る」
「ん。しっかりな。」
そこで、俺の意識は途絶えた。
せめて、中の上くらいにはなってて欲しいなぁ……
俺の願いは叶うのか?
それとも、またも平凡もしくはそれ以下になってしまうのか?
1人残された魔王は、入れなおしたお茶を一口啜る。
「死ぬなよ…。お前は、救うって言ったんだからな……」
ふぅ……
と吐き出された吐息は何を語るのか?
それを知るのは、まだ早い。
せめて無事にたどり着き、新たな風を起こすまでは……
2/13 修正完了 後付け・書き方は今後もだから割合
あ、後、右手の甲から左手の甲へ