第10話 自己嫌悪と強者の笑みと
夜
時間で言うなら午前2時くらいだろう。
俺はまだ、寝付くことが出来ない。
今日の敗戦や、エリアさんの慰め。
全て目を閉じると一瞬前のように思い返せる。
ここでふと、魔王の言葉、会話を思い出す。
そこで改めて分かる自身の愚かさ・・・
世界を変えると意気込んでも力を生かせない。
最強になれる素質を持っても、心が弱すぎる。
負けて悔しかった。それは分かっている。
エリアさんに慰めて貰って楽にもなった。
だけど、
なんでここまで自分が嫌になるのか
強くなりたい。
精神的にも肉体的にも・・・
だから一度落ち着こう。
何を焦っているんだ、俺っ!
出来る事からやろう
知識も戦える体もない俺は、まだまだ人に勝つには早い。
体力を作り、知識を蓄える。
そう思うと、何故かジッとしていられない。
俺は寝ていた体を起こし、外へ行く服装へと着替える。
「とりあえず、走ってこようかな・・・」
ドアを開け、廊下を歩き、裏口へとでる。
正面の門を開けるには時間が早いからだ。
そっと扉を開ける。
そこには一面の闇
光のない世界
一歩歩けば闇にノマレテ
キエテシマイソウ・・・
「ぅ・・・、ん?」
そんな中、ひとつの光を見つけた
その光は次々と増えて、やがて180度全体に数千もの光に包まれた
たとえるなら、夜に見かけるネコのような・・・
その光は動く、音を出す。
つまり、生き物だという事。
「「「「「「グゴオォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」」」」」」
「ぅぁ・・・」
俺は気を失いそうなほどの圧に負け、細かく震える体を後ろに倒した。
ドンッ
背中に触れたのは堅い感触
でも、眼はまだ動く光を捕えている。
震えつつ顔をゆっくり上げると、
「おう、大丈夫か?」
俺が負けた、50に見えない若々しい顔。
何か楽しそうに笑っている
「き、しだ・・・ん、ちょ」
彼はニコッっと笑い、俺をその場に座らせた。
「アルナを廊下で見かけてな。トイレなら脅かせてやろうと思っていたんだ」
この人は何をしようとしていたのだろう。
しかし、今の俺にツッコム気力はない。
ここでもまた、自分の弱さを痛感した。
この数の魔物を眼の前にして、笑っていられる眼の前の人間を前に
「でも、驚かされたのは私だったのだな!」
戦う事に喜びを感じることの出来る騎士団長に
「では、少し戦ってこるからな!」
俺は、地面の土ごと拳を握りしめる
奥歯を噛み締め下に俯く。
結局戦う姿を見る事すら悔しくて堪らない
俺はますます自分が嫌いになった
◆
空が明るくなる頃は、城の人たちが気づき援軍が来た
それまで1人、笑顔で戦い続けた騎士団長は称えられ崇められた。
数千もの敵を相手にピンピンしている騎士団長。
俺に目標が出来た。
いつかあの人を倒す。
神様の件は少し置いておく。
あの男を超えるため、予定だったランニングを裏山でしている。
「はっ、はっ、はっ」
勝ちたい。
それは男として悔しいのか
自身の欲望なのか
午後は書斎室へと行こう
今の俺を見直し、いつか誇れるほどに
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
なぜ、俺は笑っているのだろうか?
何が楽しいのか? 今は凄く苦しいだけなのに・・・
この気持ちはなんだ・・・?
「はっ・・・はぁ、くっそぉー!」
なんで叫んだんだ?
でも不思議だ。凄く気持ちいい!
それから数十分程度。
俺の叫びは裏山へ響き渡った。
今日から新たな自分を始めよう。
嫌いになってしまった自分を少しでも好きになれるように。
もっともっと強くなるために。
「うぉおおおおおおおおおおおおおっ!」
やってやる!
絶対、絶対にだ!
4/6 修正終了。 改良点・全部
はぁ・・・ やっと終わった。
展開も変わっちゃった。
でも、ここから止まった物語を動かしますからね!
では、次回!