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アホ毛勇者の神様退治  作者: くくゐ
壱の章 炎の騎士
10/14

第9話 敗者と闇に潜めし敵襲と


 はぁ・・・

 

 「結局騎士団長には勝てなかった・・・」


 俺は客室のベットの上に寝転び、天井を見小さく呟いた

 自分から降参したのに、悔しくて苦しくて。


 俺は魔王から力を貰った。

 それは、神を倒すために手に入れた強力な力。

 本来ならば、この世界の住人に負けるような力ではない。


 「でも、俺は負けて・・・」


 つまり、俺が力を扱いきれていない。

 俺自身が弱い。

 あれだけ変えたいと願った空も、今の俺じゃ・・・



 ―――コンコン



 その時、部屋の外からドアを叩く音が聞こえた。

 

 「どうぞ、入ってください」


 ギィ っと音をたててドアが開いた

 そこに居たのは燃えるような紅い髪。

 俺がこの世界に来て始めて出会った人


 「アルナ、平気か?」


 「エリアさん・・・」


 彼女は心配そうに俺の顔を覗き込んでくる。

 でも俺は、心配してくれるのは嬉しいけれど一人にして欲しかった。

 だけどそれを知らない彼女は、俺の頭を優しく撫で「頑張ったな」と言ってくれた。


 頑張った?


 いや、俺は頑張ってなんかいない。

 力を引き出せず、騎士団長に歯が立た無かった。

 どこが頑張ったものか・・・


 「アルナ?」


 「あ、なんでもない」


 彼女に変な気を使わせるのは悪い

 俺は、大丈夫と笑って見せた・・・


 ハズ。


 でも、ちゃんと笑えていたか? 平然を偽れたか?

 俺は・・・ 俺は・・・


 ―――ぎゅう


 刹那、俺は暖かな温もりに包まれた。

 

 「大丈夫だ。お前は強かったし、経験の差もある。悔しかったら、もっと強くなろう」


 彼女の包みこむような優しさが、暖かさが俺を癒し、苦しめた。

 こみ上げてくるやり切れない悔しさ。

 自身を包む、優しい温もり。


 俺は、この世界に来て初めて涙を流した。

 


   ◆



 結局、俺が泣き止むまでエリアさんは抱きしめてくれた。

 そして、ポツリポツリと呟いてくれた


 「私も似たような気持ちになった事がある。始めて騎士団に入隊した時の事だ。私には目標があってな、とある魔獣が私の村を襲ったんだ。その時、何も出来ずに仲間や家族が死んでいくのを見ていた。

 私は力が欲しかった。守りたいものを守れる力が。失った者のためにも、自分の為にも」


 彼女の声が少し震え始める。

 思い出させてしまったのだろう。

 俺は彼女の背中に腕を回し、そっと抱きしめる


 すると、彼女が少し笑みを漏らしまた話し始める。

 

 「私は大陸最強と言われた騎士団長に勝ちたい。その為にがむしゃらに修行をして、挑んだんだ。

 ふふふ、勿論結果は惨敗。傷一つ着けられなかったよ。その日は泣き明かしたね。自分のちっぽけさに。負けた悔しさに・・・。でもな? 私は炎紋の隊 副隊長までのし上がれた。強くなれたんだよ!」


 彼女の言葉には重みがある。

 言葉にすれば数秒だろうけど、その話しが出来るようになるまでどれほどの努力をしたのだろう?

 彼女は強かった。

 そして、俺よりも大人だった。


 その考えが、割り切り方が。

 

 そして、最後に彼女は言う。


 「だから、あせらずに頑張ろう。私も、君も。まだまだ強く、高みを目指せる」


 俺は黙って頷く。

 彼女は、「そうか」と優しい母性的な笑みを漏らした。


 すると、その顔は何かを思い出したかのような顔付きとなり


 「ああ、そうそう。私も最近知ったのだがな、騎士団長はああ見えて50を過ぎているそうだ」



 ・・・はぁ?


 あの青年のような人が?

 20代後半ぐらいかと思ったのに?


 俺は驚きを隠せず、彼女の顔を見上げた。


 「な、見えないだろ!? 不思議だよな・・・。でも、50年も生きていれば経験の差があって当然」


 俺とエリアさんは、お互いの顔を見つめあい笑った

 なんだか体がスーゥっと軽くなった気がした。


 俺はまだ、ちっぽけな存在だ。

 そんな存在がいくつもの修羅場を搔い潜った男に簡単に勝てるハズがない。


 ありがとう、エリアさん・・・



   ◆



 お城中の明かりが消え、皆が寝静まった頃

 お城裏にある森に異変が怒っている事に気づくものはおらず・・・


 魔獣たちは群れをなし、およそ数千の大群が近づいている。

 その足取りはひっそりと

 まるで人にばれない様にと足をひそめる人間のように


 そして、月も雲もないこの世界では、完全な闇に包まれる夜

 

 今宵、何かが始まる



 変わった・・・ 変わったねぇ・・・

 4/5 全文修正

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