空と花
「花、何してんの?」
「空を見てるよ」
「俺?」
「うん」
「ふ〜ん…、じゃあ俺も花を見てる」
「好きにしなさい」
「冷たいなぁ」
「空はあったか過ぎ」
「そうかな?」
「空は何になりたいの?」
「ん?俺はなぁ…何だろうな、決まってないや」
「そう」
「花は?」
「僕は…蝶になりたい」
「は?」
「変?」
「いや、別に変じゃないけどさ…意外」
「意外?」
「俺はてっきり花も決まってないって言うんだと思った」
「あー最初はそれ思ったよ」
「急に変わったの?」
「空見てたら思った」
「なんで?」
「飛びたくなった」
「ふ〜ん」
「空は飛びたくないの?」
「俺は…もう飛んでるし」
「飛んでるの?」
「うん、花の上の方でずっと」
「僕の上?」
「そうだよ、空だもん」
「そっか。空は空だもんね」
「うん」
「じゃあやっぱり僕は、花がいい」
「また急だな」
「空見てたいから」
「そっか…時々俺が連れていってやるよ」
「空が?」
「あぁ、俺がお前を連れていってやる」
「よろしく」
「うん」
「飛ぼう、花」
「え?」
「ほら、立って。いつまでお昼寝してるのさ」
そういって伸ばした手を、僕はつかんで、飛んだんだ。どこまでも続く、青い青い空が、一面の野原に広がる、綺麗な花達が。空が空へ還るとき、僕は花になる。空が望んでいてくれる限り、僕はずっと、花になる。
蝶になりたかったのは、空が遠すぎるから、ちょっとした嫉妬心からの夢だったのかもしれない。あ、そうそう。空が空になったのは、本当は僕をいつでも見るためだとか。僕はいつでも君を見ているのにね。
花は空が好きです。