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第七話魔力と気

 ノックが目を覚ますとそこはベッドの上だった。


(あれ、僕どうなったん……ぐっ!)


その時頭が強い痛みに襲われた。


「もうしばらく寝といた方がいいですよ。まだ痛むでしょうから」


ノックは頭だけを動かして横を見ると、そこには椅子に座って何か書いているカイテルがおり、その横には心配そうな顔をしているモエがいた。


「僕はどのくらい眠ってたの?」


「今は昼ですから半日ほどですね」


ノックは頭を触った。


そこには丁寧に包帯が巻かれていた。


それを確認するとノックはようやく思い出した。


「そうだった。僕は負けたんだね……」


カイテルはそれを見ると申し訳なさそうな顔をした。


「実はその事なんですが……ノック君にお詫びしたい事がありましてね」


「何?」


「実は君が思ったよりも強くてびっくりしましてね……ちょっと、ほんのちょっとだけ魔法を使ってしまったんですよ」


それを聞いてノックはキョトンとした。


「へ、カイテルさん魔法使いなの?」


「えぇ、そうなんですよ。ノック君、何か思い当たる事はありませんか?」


そういえば、ノックは思い出した。


記憶が途切れる直前の攻撃の時、顔に風を感じて違和感があった。


「あ、あの風の事ですか?」


カイテルはコクリと頷くと、ノックに手をかざした。


すると風が発生しノックの近くを吹き抜けた。


「私はあの時に風の魔法の補助で、パンチの速度を上げたんです。もし魔法を使っていなかったら、君の攻撃は当たっていました」


それでも私が勝っていたでしょうがと、カイテルは付け加えた。


「しかしいくらサンドラ族とはいえその年であれだけの内気功が使えるのはすごいですね。この島でサイトを除いて他に勝てる人がいないというのも納得しましたよ。あれはサイトに教えてもらっているのですか?」


(サンドラ族?)


モエはその族を聞いたことがなかった。


「いいや、勝手に覚えてたんだ。俺は何も教えていない」


サイトが部屋の中へと入ってきた。


「何も訓練や教え無しにあのレベルなのですか!? それは興味深いですね」


カイテルはノックを驚きの目で見た。


(育て甲斐がありそうですね。これもいれときますか)


カイテルは紙に文字を書き加えた。


「そうそう、モエちゃんにお礼を言えよ。お前が倒れてから付きっきりで看病してたんだからな」


「へっ、そうなの」


ノックはモエの方を見た。


「モエちゃん、ありがとうね」


「う、うん。あんまり無理しないでね」


モエは顔を赤くした。


(あれ? いつの間に仲良くなったんだ?)


サイトは首をかしげた。




 カイテルとサイトは部屋を出て、誰もいないことを確認すると話始めた。


「計画が大体決まりました。詳細はこれに書きました」


カイテルは先程まで書いていた紙を渡した。


それには隙間なくぎっしりと書き込まれていた。


「……悪いけど、簡単に口頭で説明してくれないか? 頭が痛くなった」


「しょうがないですね。じゃあ説明するからよく聞いといて下さいよ」


「分かった」


カイテルは説明を始めた。




 その一方部屋にはノックとモエだけになっていた。


「怪我痛まない?」


モエはノックの傷を心配そうに見た。


「うん、このぐらいなら大丈夫。すぐに治るよ。ほら」


ノックは包帯を解いた。


「え? なんで?」


モエは驚いた。


ノックの顔に殴られた痕はすでにほとんど消えていた。


「そう? 普通じゃない?」


ノックはモエの様子を見て不思議そうな顔をした。


「いやいや。普通の人なら一ヶ月はかかるわ」


モエはその時先程のカイテルの言葉を思い出した。


「ねぇ、ノック。サンドラ族って何なの?」


「僕もよくは知らないんだけど……この村に住んでいる人達は皆サンドラ族なんだ。でも昔は大陸に住んでたんだって」


「そうなんだ。でもなんでこんな島に移ったの?」


「それお父さんに聞いた事あるんだけど……別に知らなくてもいいって言われたんだ」


「何年ぐらい前の話か知ってる?」


「僕が生まれる少し前の話だって言ってたよ」


(ノックが生まれる少し前……ってことはゾーア戦争が起こってる時ね)



 ゾーア戦争とは名前の通りゾーア大陸全土で起こった戦争である。原因は野望の強い帝国グルスがカルトの一部の宗教と手を組み、ポングとハーン王国に攻め込んだから始まった。しかし結果的にはそれは失敗し、それを期に帝国は衰退し、宗教の軍団も自分の国へと戻った。




 モエは戦争の事を考えていると、途中で嫌な記憶を思い出した。


「ノ、ノック!」


「え、急にどうしたの?」


モエは話題を変えることにした。


「そ、そういえばカイテル様が仰ってたあの内気功って何なの?」


「あぁ、あれね。説明しにくいから実際見てみなよ」


そう言ってノックは目を瞑ると、ノックの体が緑色に光始めた。


「これ、試合中も使ってたよね」


「うん、これを使うと身体機能が上がるんだ。魔力とはまた違うんだって。ちなみに村の人は全員使えるよ。でもお父さんはもっとすごいよ!」




 この世界では主に二つの力がある。それは魔力と気である。魔力は主に自分の外側で扱うものであり、気は自分の内側で使うものである。つまり魔力は遠距離に強く気は近距離に強い。逆もしかり。普通はどちらか片方の力しか使えないが、カイテルは魔法と気を両方使える。モエは魔力を持つがその中の特別な系統に当たる。また、たまにどちらの力も持たない者が生まれるときがある。




 「ほら、触ってみて!」


「えっ? きゃっ!」


モエは急にノックに腕を捕まれ、肩を触らされた。


「……温かい」


「でしょ! 体が活発になってるから温かいんだよ! あれ? モエちゃんの手も温かくなってるよ?」


モエの顔はすっかり赤くなっていた。


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