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第四話徒労

 ハーン王国精鋭部隊はカイテルの家の前にいた。


カイテルの家に明かりが点いていることを確認すると、その中の隊長の女性が手で合図を出した。


するとカイテルの家は轟音と共に崩壊した。




 「凄い音がしましたね。私の家が壊されましたか」


カイテルとギークは港に着いていた。


「勿体ないな。やっぱりあそこで戦えば良かったのに」


ギークは残念そうな顔をした。


「それだと他の人に危害が及ぶかもしれませんし、時間がかかれば応援がくるでしょう」


「まぁ、そうか」


ギークは面倒なので納得することにした。


「で、これからどうするんだ?」


「サイトにこの事を伝えねばなりませんね」


「ということはザック島に行くのか。結構早く戻ることになったな。準備はどうするんだ?」


「すでにその準備はモエ君に任せてあります」


「あのメイドか」


ギークは先程のことを思い出した。


ギークがカイテルに雇われたあと、カイテルの命令でモエは財産や家財等を持ち出した。


もちろん手作業ではなく、モエは魔力を込めて作られた魔具、余事限袋[よじげんぶくろ]、という物を使ってだ。


余事限袋は見た目は手のひらサイズの小さい袋だが質量、体積、数に関係なくいくらでも物が入る魔具である。ちなみに魔具を使えるのは魔具を作れるものだけである。


そして魔具を作れるものはごくわずかしかいない。


「魔具を作れるなんて、あいつ何者だ?」


「私もよくは知らないのですが、信頼できる子ですよ」


「そうか、あいつも色々苦労したんだろうな……で私達はどうすんだ?」


「そうですね。もうギークさんの船に乗っておきましょう」


「えっ? そしたらお前のメイドが私たちの場所わからなくなるんじゃないか?」


「それは大丈夫です。彼女には私の位置が分かるようになっていますから」


「なるほど、魔具か」


「えぇ、というわけで行きましょう」


二人は船へと向かった。




 その頃カイテルの家の跡地では精鋭部隊の隊長が部下から報告を受けていた。


「隊長、死体はありませんでした。おそらく逃げられたのでしょう。」


「仕方ないわ。あんなにカイテルが強いなんて誰も知らなかったもの」


女性は首を振った。


「出来れば家に彼がいることを確認してからやりたかったけど、その前に絶対気付かれただろうし。そもそも彼が家に居たかさえ疑問だわ。まぁ最善は尽くしましたし、引き上げるとしましょう」


「了解!」


精鋭部隊は続々とカイテルの家から引き上げを始めた。女性はしばらく残っていたが空を見上げて少しの間目を閉じて何か独り言を言うと城へと戻っていった。




 「そうか、やはりカイテルを殺せなかったか」


精鋭部隊の報告を聞いても、ドルクは動じなかった。


(まぁ、仕方がないか。しかし対策は講じねば……最悪なのはザック島に奴が行くこと。次に最悪なのはポングかグルスに亡命することか。これは奴の性格的にないとは思うが、保険はかけた方がいいか)


「船着き場を見張らせろ。いや、船を一隻たりとも出させないようにしろ。それでも出港しようとする船は沈めても構わん。あと大量の食糧を買おうとした者には見張りをつけろ。船を借りようとする者もだ。後は……国境の見張りを厳重にしろと伝えろ。これらには引き続き精鋭部隊にさせる。足りなかったら兵士を補充しても構わんぞ」


「はっ!」


(とりあえずこれで大丈夫か。いやさらに保険はかけた方がいいか)


ドルクはひたすら考え続けた。そんな頃カイテルらは海の上にいた。


「あっという間に逆戻りか。つまんねーの」


「まぁまぁギークさん。こういう行動は早目にした方がいいんですよ」


「どうしてだ?」


「そうですね、例えばザック島に行かせないように船着き場を見張られたりすると思いますよ。ドルクは切れ者ですからいろんな事を仕掛けていると思います。そういう人にはあんまり考えずに素早く行動した方がいいんですよ」


「そうか」


ギークは面倒なので納得することにした。


「これもモエ君のおかげですよ。ありがとうございます」


「どういたしまして、ご主人様」


あれからモエは素早く大量の食糧と日常品を買い込み、余事限袋に詰め込んで来た。


「ところで、カイテル。サイトに伝えた後どうするつもりだ?」


「そうですね、ハーン王国には戻れませんし、しばらくザック島に居候ですかね」

「じゃあ私もそうするかね。戻るの面倒だし。バカンス代わりにゆっくり休むわ。」


「そうだと良いですけど、ザック島民のモットーは《働かざる者食うべからず》ですから、多分何かしら手伝わされますよ」


「それマジ?」


「本当です」


そしてしばらくの間の後、二人は笑った。


その後思いっきりため息をついた。


その話を聞いたモエは楽しそうにしていた。


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