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第三話ハーン王

 ハーン王国の王都の中心にあるハーン城の会議室にカイテルはいた。


そこには王を中心とした席に円いテーブルがあり、その周りの席にはカイテル以外の大臣の全員がいた。


カイテルはハーン王が座っている横に行き、挨拶をした。


「ご機嫌麗しゅうございます。ハーン王」


「おぅ、カイテル。お前には休みを与えたはずだが、どうしたのだ?」


「実はお話がありまして……」


カイテルは話始めた。




 王様の名前はハーン=クリスティー。ハーン王国の十三代目継承者に当たる。年齢は二十五才と若い。彼は身分制度に疑問を感じ、カイテルと共に身分制度撤廃を目標としている。民には名君として称えられているが、貴族や大臣らは快く思っていない者が少なくない。




 「実は私事ではありますが、ただいまザック島にて日照りが続いておりまして、食糧不足で苦しんでいます。そこで食糧を送りたいと思いまして、その許可をいただきに参った次第でございます」


それを聞いたハーン王は意外そうな顔をした。


「ザック島が? それは丁度いい。今我々もザック島について話し合っていた所だ」


「と、言いますと?」


「これを見てくれ」


ハーン王はテーブルの真ん中に置いてある紙を指さした。


「拝見させていただきます」


カイテルは紙を覗きこんだ。


「こ、これは……どういうことですか」


そこにはザック島を占領する行軍日程や攻撃方法等が書かれていた。


「どうって、そういうことだ」


「あ、あそこを占領することに何か意味がございますのでしょうか?」


「ひとつはザック島にいる民族の危険性。もうひとつはザック島の貴重な資源だ」


「彼等は危険ではありません! むしろ友好的な民族です。」


カイテルはそこであることに気付いた。


「では……まさか港に船を用意されたのはそのためなのですか?」


「知っていたのか。あぁ確かにその為だ」

(馬鹿な……)


カイテルはハーン王を見た。


そのときハーン王の目が少しおかしいことにカイテルは気付いた。


(まさか……)


カイテルはゆっくりと口を開いた。


「ハーン王……今回の作戦は誰が立てたのですか?」


ハーン王は一人の大臣に視線を向けた。


カイテルは目でそれを追った。そこには俯いている男がいた。


「それは私だ、カイテル」


その男は顔をあげた。


「……ドルクですか」


ドルクは笑っていた。


「ドルク、あなたはハーン王に何をしたのですか!?」


「ふふふ何のことだ? カイテル」


ドルクは余裕たっぷりに言った。


「とぼけないでください!」


しかしドルクはその言葉を無視すると、椅子から立ち上がり、ハーン王を挟んでカイテルと反対側の方に移動した。


「ハーン王。カイテルの情報によりますれば、ザック島は今食糧不足とのこと。予定を早めた方がいいかと」


「そうだな」


「なっ!?」


「カイテル、情報提供感謝するぞ」


「どうしたんですかハーン王!? いつもの貴方は何処へ行ったんですか!」


ドルクはそれを聞くとハーン王にさらに提言をした。


「ハーン王、カイテルは貴方に逆らうようですよ」


王はカイテルの方を見た。


「カイテル、お前は今回の作戦には不服か?」


会議室にしばらく沈黙が流れた。しかしカイテルはしっかりとハーン王の目を見て言った。


「はい。私はこの作戦には反対です」


ドルクはそれを聞くとにやりと笑った。


ハーン王はカイテル真っ直ぐの目を見て少し震えたが、処断を下した。


「な、ならば仕方がない、衛兵! 反逆者のカイテルを捕らえろ!」


「はっ!」


十人ほどの衛兵が出てきてカイテルを囲んだ。


「ハーン王、後は私にお任せください」


「ドルク、逃がすなよ」


ハーン王と他の大臣らは会議室から出ていった。


(ぐっ、謀られたか)


カイテルは拳を強く握った。その時カイテルの頭の中は真っ白になった。そこに衛兵の一人が近づいてきた。


「カイテル大臣をハーン王への反逆の罪で逮捕する! 腕を出せ!」


しかしカイテルは何も反応をしなかった。


「おい、早くしろ!」


腕を出さないカイテルに業を煮やした衛兵は無理矢理手錠をつけようとした。


「……」


するとカイテルは無言で手錠を持っている衛兵の手を握った。


するとその衛兵の手があり得ない方向に曲がっていく。


メリメリメリ!


「あっ、あっ、うがぁぁぁぁぁぁぁぁ! う、腕がぁぁぁぁぁぁ!」


「こいつ!」


近くにいた三人の衛兵がカイテルに飛び掛かった。


しかしカイテルは三人に手のひらを向けるとその三人はカイテルに触れることなく弾き返された。


カイテルは掴んでいた腕を放した。


腕がありえない方向に曲がった衛兵は痛みで気絶しておりそのまま床に倒れた。


残った衛兵らはカイテルの顔を見て怯えた。


カイテルの顔から普段の紳士な顔が消えており、ただただ無表情だった。


「……」


カイテルは何も話さず、自分の手を見つめていた。


ドルクは何が起こったか分からなかったが、今のカイテルを見ているととてつもない恐怖に襲われた。


「かかれ! 奴を今すぐ殺してしまえ!」


しかし衛兵は誰一人動こうとしなかった。


「ぐっ、何をしている! かか……」


その時ドルクは視線を感じた。


それは氷のように冷たく、刀のように鋭かった。


「ドルク、貴様だよな」


カイテルは剣を抜いた。


衛兵らはそれを見ると逃げ出した。


「お前ら、待て!」


ドルクの命令を聞くものはおらず、次々と会議室から出ていった。


会議室はドルクとカイテルだけになった。


「ドルク」


カイテルは剣を構えた。


「死ね」


素早く剣を振るうと鋭い風の刃がドルクのへと迫った。


ビュン!


「へっ?」

ドルクは間の抜けた声を出した。


しかし風の刃を確認すると間一髪で避けた。


ズドン!


という音と共にドルクの後ろの壁が半壊した。それを見たドルクは動揺を隠せない。


(ど、どういうことだ!?)


カイテルはドルクにさらに風の刃を繰り出した。


「っ! せ、精鋭部隊!」


ドルクが必死にそう叫ぶとドルクの前に煙が現れた。


その煙の中へとに風の刃が消えていった。


ズドドド!


煙の中で音がした。

「殺ったか?」

煙が晴れるとそこには人影があった。


「チッ!」


そこには一人の女性が盾でドルクを防いでいた。その女性の後ろにはさらに何人かが現れた。


「貴様らも、そっち側なのか?」


カイテルは剣を構えながら聞いた。


「カイテル様、どうか剣を納めて下さい。これ以上罪を重ねないでください」


「何をしている! そいつは俺を殺そうとしたぞ! ためらわず殺せ!」


「あぁ?」


カイテルはドルクの言葉に反応した。


「殺されるのは貴様だろーが!」


さらにカイテルは風の刃を飛ばした、が先程の盾に防がれた。


(や、奴は魔法戦士だったのか)


ドルクは計算が狂って驚いていた。


カイテルは構えを崩そうとしなかった。


「おい、カスども。捕まえるならドルクの方だろ。貴様らの目は節穴か?」


「我々はハーン王国に忠誠を誓った精鋭部隊。王の命令は……絶対だ!」


精鋭部隊が飛びかかってきた。


(ちっ、話のわからんカスどもだ。ここで全員殺るには部が悪いな。一旦引くか)


カイテルは身を翻し会議室から出ようとした。


「契約者が命じる。奴を焼き払え!」


精鋭部隊の一人が呪文を唱えて精霊を呼び出した。


その精霊の体は灼熱の炎で出来ており、カイテルに襲い掛かった。


(ちっ、召喚使か!)


カイテルは振り替えって剣をかざすと風を発生させ精霊を押し返した。


そして扉を開け、そのまま逃げ出した。


「追え! 逃がすな!」


ドルクが叫ぶと、精鋭部隊はカイテルを追っていった。


会議室にはドルクしかいなくなった。


(し、死ぬかと思った)


ドルクは緊張が解けて床にどかっと倒れ込んだ。


(カイテルがあんなに強いなんて計算外だ……多分逃げられるな。。しかし賽は振られた……後は進むのみだ)


ドルクは会議室の天井をぼんやりと眺めた。




 カイテルは風を体に身に纏うと正に疾風のごとく走り出した。


(追いつくことは流石に出来ないだろ)


そのままハーン城を出るとカイテルの頭にようやく冷静さが戻った。


(しかし大変なことになってしまいましたね、とりあえず家に戻りますか)


カイテルはそのまま家の方へと足を向けた。




 しばらくするとカイテルは家に着いた。


その時には空は暗くなっていた。


「おっ、帰ってきたか。どうだった?」


「ギークさん、実は少し、どころか超絶面倒臭いことになりまして……」


カイテルはこれまでの経緯を話した。


「そっか、そりゃ面倒臭いな。じゃあ私は帰ることにするわ」


ギークはさっさと家を出ようとした。


しかしカイテルの方が一枚上手だった。


「ちょっと待ってください。手伝ってくださったら一千万、キャッシュで払います」


ギークはピタッと足を止めるとそのまま回れ右をすると


「敵は何処じゃー――!」


ギークはファイティングポーズをとった。


(相変わらず、お金に単純な方ですね)


カイテルは思わず笑いをこぼしてしまった。


こうしてギークはカイテルの仲間になった。


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