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第二話カイテル

 ゾーア大陸には四つの国がある。古くから続いている一族の王様が治めている国、ハーン王国。その一族は世界を創造したとされている。世界を市民を中心とした議会が力を持つ民主主義の国ポング。ここは大陸一の技術を持つ国としても有名である。そして度々他の国との争いを起こす帝国のグルス。国内では反乱の火種がくすぶっている。最後に大陸一の広大な土地を持ち、さまざまな宗教がある宗教の国カルト。この国は雄大な自然に囲まれており、それが堅牢な要塞として機能している。そのおかげでカルトを詳しく知るものはあまりいない。




 ザック島から出航して半日がたち、昼になった頃ハーン王国の首都の近くにある港にギークの船はあった。


(なんかいつもより船が多いな。邪魔だ)


船停め場にはほとんど停めるところはなかった。


「おっ、あそこ空いてる。ラッキー」


運良く一隻分空いているところがあった、がちょうどそこに船が停まろうとしていた。


「ポチ!」


ギークがそう叫ぶと、ギークの船の水面下から巨大な影が現れた。


その影はその船の下へと向かった。するとその船は沖の方へと動き始めた。


「せ、船長! ふ、船が勝手に!」


「ど、どういうことだ!?」


ギークは沖の方へと進んでいく騒がしい船を見ることなく、さっさと船を停めてしまった。




 船を降りるとギークは乗っていた船の荷物を業者逹に頼んで運ばせていた。


運ばせた場所は港のすぐ近くにあるギークの家の倉庫である。


一時間程で全ての荷物を運び終わった。


「お疲れさんでした」


「いえいえ、どうぞこれからもご贔屓ください」


業者達はお決まりの商売用語を言いお辞儀をすると、出ていこうとした。


「あっ、そうだ。そういやなんで船着き場にあんなに船が多かったんだ?」


「ハーン王様からの命令がありまして、たぶんグルスへの防衛強化だと思いますよ」


「そうか、ありがとう」


そして倉庫にはギーク以外居なくなった。


(……とりあえず昼飯食うか)


ギークは倉庫を出て自分の家に入っていった。




 昼飯後、ギークは早速サイトの手紙を届けることにした。


(昼食後の運動ってことでたまには歩いて行くか。でもあいつ滅多に家にいないからな〜。ポストに入れとくか)


そんなことを考えながらブラブラと歩き始めた。


しばらくすると港を抜けてカイテルの住んでいる所まで来た。


(相変わらず、お上品な所だな。性に合わねーや)


そこは先程の港とは比較にならないほど、豪華できれいなところだった。




 そこは王都といい貴族や王族、そして大臣などの身分の高い人逹が住める所である。前は一般市民が入ることができないように遮断されていたが、現在の王が身分のことを気にする人ではなく、カイテルと共に一般市民も王都への出入りを自由に出来るようにした。




 カイテルが住んでいるところは王都の中でも中心部にある。それはカイテルの身分が高い事を示している。


「着いた着いた。ってか相変わらずスゲーな」


そこは王都の中でも家が大きく、豪華だった。


ギークは呼び鈴を鳴らした。


すると、メイド服を着た可愛らしい女性が出てきた。


「えーと、どちら様ですか?」


その女性はギークを見て明らかに警戒した。


「ギークってもんだがカイテルいるか?」(不審者じゃねーよ)


「はい、いらっしゃいますよ。ギーク様ですね」


メイドは屋敷の中に戻った。


(あれっ? 居たんだ。意外だな)


ギークは不思議に思った。


カイテルは普段から仕事で忙しくほとんど家に居ないからだ。


そんなことを考えていると若干白髪混じりの人が出てきた。


後ろには先程のメイドが控えていた。


「いやはや名前を聞いて驚きましたよ。お久しぶりですね。どんなご用件ですか」


「あぁ、サイトからお前宛の手紙を預かってるんだ」


「おぉ、サイトからですか。しばらく会えていません。懐かしいですね。おっと、こんな所で立ち話もなんですからぜひ中でお茶でもいかがですか」


「出来るだけ高級なもので、あとおかしも出してくれ。出来るだけ高級なもので」


「ふふふ、分かりました。モエ君、お茶とおかしを準備してください」


「かしこまりました。ご主人様」


モエと呼ばれた先程のメイドは厨房の方へと歩いていった。




 カイテルは四十才でありサイトとは同い年である。ハーン王国の大臣の一人であり、ハーン王からも絶大な信頼を得ている。サイトとは過去に会ったことがあり、仲は良いが最近は会えていない。




 ギークは中に通され、二人で座るにはでかすぎるテーブルに座った。


そのテーブルは縦に長く二人の距離はかなり遠くなっていた。


「これがカイテルの手紙ね」


ギークは手紙をテーブルに滑らせて、カイテルの所に送った。


「拝見させてもらいますね」


カイテルは手紙を開いて読み出した。




 『カイテルへ

久しぶりだな。元気にしているか?

俺は元気だ。息子のノックも元気に育ち、今年で十二才となり成人式を迎える。

ところでザック島では日照りが続き、今深刻な食糧不足に悩まされている。

と言うわけで食糧を送ってもらえないだろうか? できれば一ヶ月以内に。

よろしく頼む!

サイトより』




 「なるほど、そういうわけですか。ストレートに物を言う人でしたが手紙でもそうですね。」


カイテルは楽しそうに笑った。


「送るんだったら私の船を使え。一分引きぐらいしてやるよ」


しかしカイテルは少し困った顔をした。


「もちろんよろしいのですが、それをするには我が国とザック島との関係上、ハーン王に許可を得ないといけませんね」




 ハーン王国とザック島は年に一回ギークの貿易船が勝手に行ってるだけであり、ハーン王国の一部ではなく、どこかの支配下にもあるわけではなく、同盟も結んでいるわけではない。つまり外交上何の接点もない所に、カイテルが大臣とはいえ王様の許可なく食糧を輸送するのは越権行為になってしまうのだ。




 「しかし緊急事態みたいですし、今から行って掛け合ってきましょうかね」


「へ、今から?」


「えぇ、実は先週から二週間ほどの休みを頂いているのですが、友のためですから」


「そうか、ご立派ご立派」(なるほど、だから家にいたのか)


カイテルは早速出かける準備を手短に済ませ、お茶とおかしを丁度持ってきたモエに事情を説明した。


「……というわけです。では、モエ君。私は出掛けるからお客様を頼みましたよ。お客様に失礼のないように」


「分かりました。行ってらっしゃいませ、ご主人様」


モエは深くお辞儀をした。そしてカイテルが出掛けようとしたときギークはふと思い出した。


「そういえば、何で港にあんなに多くの船を用意したんだ? 王様の命令って聞いたけど」


「港に船をですか? 初耳ですね。私がいないときに何かあったんでしょうかね? それも聞いてみます」


「そうか……」


カイテルは玄関の方へと行った。


「では、どうぞ」


ギークの前にお茶とおかしが置かれた。


それはあっという間に無くなり、ギークはモエに無言で空の皿を付きだし、おかわりを要求した。


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