表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/13

第十一話戦闘開始

取り敢えず頑張る。

 ノックが修行を始めてから一週間後の夜、一隻の小型船がザック島に近付いていた。


その船には精鋭部隊、そしてその指揮官としてドルクが乗っていた。




 カイテルがすでにザック島にいる事を知ったドルクは一般兵士による多人数の占領作戦を精鋭部隊による少数精鋭に変更した。それはカイテルの強さ、そしてカイテルを手助けする仲間の存在、さらにザック島民のポテンシャル、そういった要因がドルクをより慎重にさせていた。




 一方ザック島では皆寝静まっていたが、一人だけ迫りくる脅威に気付いた者がいた。


(……魔具に反応が!)


モエは目を醒ますと急いで皆を起こしに行った。




 (ようやくザック島が見えてきたか)


ドルクは船の甲板にいた。


さらにドルクの後ろには精鋭部隊が揃っている。


ドルクはザック島を見るのを止めて、精鋭部隊の方へと向き合った。


「いいな、そろそろザック島に着く。作戦通りに実行し……?」


船が急に止まった。


そのまま船はザック島とは違う向きに進み始める。


「どうした?」


ドルクは船の先頭に座っている海獣の操縦者を見た。


「海獣が急に言うことを聞かなくなりまして……」


(どういうことだ?)


ドルクは様々な考えを張り巡らす。


「ドルク様! 船の下に魔方陣が!」


「何だと!」


海面には船を中心とした円が浮かび上がっていた。


「これは……空間転移ですね……」


暗い海の上で、光がパッと船を包み込む。


光が無くなると船はそこから消えていた。




 ザック島にはとある山の下に広大な地下が存在する。


その地下のひらけた場所にカイテル、サイト、ノックがいた。


そこの至るところでロウソクが灯されており、明かりは十分に確保されていた。


「ギークさんとポチとモエは上手くやってるかな?」


「大丈夫だろ」


今回船を魔方陣へと誘導したのはギークとポチであり、魔方陣を発動したのはモエである。


「そんなことよりノック、そろそろ敵が来るはずだから構えとけ」


「うん! 修行の成果、見せてやる!」


ノックは特に緊張はしていなかった。


そんな会話を他所にカイテルは沈黙していた。


(しかし敵が来るのが予想より大分早かった。しかも相手は小舟が一隻。ということは敵は恐らく精鋭部隊。私がここに居るのがバレてるはずないのですが……!)


「二人とも、来たみたいですよ」


三人の目の前に魔方陣が出現した。


そして光と共に船が現れた。


「ぐっ、どこだここは?」


「ドルク様! カイテルがあそこに!」


「何!」


そこにはカイテル、そしてドルクが見たことがない男と子供がおり、すでにその三人は攻撃体勢に入っていた。


その内の二人、カイテルは剣を、そしてサイトは拳を振るった。


風の刃、気の波動が船を襲う。


ドドォォォォォォン!


船は轟音と共に砕け散った。


その前に精鋭部隊とドルクは散り散りに脱出していた。


「では行きましょうか」


カイテルは口許に笑顔を浮かべていた。


「ノック、頼んだぞ」


「うん! ここは任せといて!」


カイテル、サイトはノックを置いて敵へと向かって行った。




 ドルクは船が砕ける直前、精鋭部隊隊長の女性に船の後ろの方に引っ張られ、岩影に潜んでいた。


(成程、さっきの攻撃で精鋭部隊を分断してから各個撃破か)


ドルクは回りの地形を確認した。


(ここは自然に出来た地下の闘技場みたいな所だな。広くて天井が高く壁も厚い。壊して脱出するのも無理か。ということは……)


子供がいる所へ目を向けた。


その後ろには穴が開いており、道が続いていた。


(あそこだけが唯一の出口か。あの子供と先程の男……恐らく親子だな。しかもサンドラ族。となると相当強いはず……)


ドルクは隊長と近くにいる兵二人を集めて指示を出した。


「……だ。隊長は俺の護衛につけ」


「はっ!」


兵士二人は岩影から散らばった。


その頃カイテル、サイトの目の前には敵が立ちはだかっていた。




 精鋭部隊は五人で構成されている。普段は王の護衛が主な任務だが、一度戦争になれば最前線で敵を蹴散らす。一人一人の強さは一騎当千であり、ハーン王国の守護神と言われている。




カイテルの相手は召喚獣を扱う召喚使、サイトの相手は武器に魔力を込めた魔装具を扱う武器使いである。


(召喚なんてさせるか!)


カイテルはすでに詠唱に入っている召喚使に向かい縦に剣を降り下ろし風の刃を放った。


しかし攻撃が届く一歩前に召喚使の下の地面が急に盛り上がり、身体が土で出来た巨大な召喚獣が現れた。


(あれは!)


風の刃が召喚獣を左右真っ二つにした。


(ゴーレム……土属性か。相性が悪いな)


召喚獣は半分になった身体をくっ付け元通りになっていく。


「ふん! お前の攻撃方法は前に見せてもらった! ゴーレムにはお前の攻撃など通じんぞ!」


召喚使はニヤリと笑った。




 場面はサイトの方に移る。


「降伏しな。悪いようにはしないから。」


魔装具使いは余裕たっぷりに言った。


「はぁ? どうして?」


それを聞くと魔装具使いはいらっ、としたが紳士に対応した。


「いいかい? 私はハーン王国精鋭部隊のナンバー2。君じゃあ私にはとてもじゃないけど勝てない」


「なんだ。ナンバー1じゃないのかよ」


サイトはズバッと言った。


「ふふふ、君は言ってはならぬ事を言ったね。せっかく穏便に済ませようとしたのに……悪いけど少々痛い目に会わせないといけないようだね」


魔装具使いは怒りで震えながら剣を抜いた。


「なんだそれ? 変なの」


その剣は柄だけしかなく、刀身はなかった。


「魔装具、ステルスという剣だ」


魔装具使いは真っ直ぐと柄の部分をサイトに向けた。




 魔具と魔装具には明確な違いがある。魔具は魔力を基として0から作り上げる。一方魔装具は道具を基とし魔力を付加して作られる。




(!?)


サイトは急に嫌な予感がして、その場から離れた。その瞬間……


シャンッ! ズズズ!


後ろにあった巨大な岩が切り崩れた。


「ほう! よく避けたな!」


「今何をしたんだ?」


サイトの頬には一筋の切り傷がついていた。


「ふはは! 特別に教えてやろう。この剣はな、ハーン王国一の魔装具職人、コースが作り出した最高傑作の一つだ! 約3ヶ月もの間魔力を送り込み、不可視、そして自由自在に操れる刀身を作り出したんだ! さらに見ろ! この柄の見事なディテール! ちゃんと細部にまで拘っている! 正に逸品だ!」


「よくは分からんが……なんかスゴいものなんだな」


サイトは首を傾げた。


「ふふふ、この剣の恐ろしさが分かったようだね! それではお別れだ!」


魔装具使いはまた柄をこちらに向けた。


「悪いけど、もうお前は俺には勝てないよ」


サイトは構えた。


「ほざけ!」


シャインッ!


サイトは真っ二つになった……ように見えた。


「何っ! 残像だと! ぐっ、どこだ!」


「上だよ」


「しまっ……」


ドゴォォォォン!


魔装具使いがいた所に深い穴が出来た。


「最初の一回だけがラストチャンスだったな」


サイトは足を前へと進めた。




 カイテルは復活したゴーレムを前に立っていた。


「成る程、確かに土属性と風属性の相性は悪い」


カイテルは体に風を纏った。


「しかしそれは属性に関して、だけの話だ」


カイテルは直立したまま腕をピンと張り、剣の切っ先を真上にして動かなくなった。


「どうした? 怖じ気付いたか? ならばゴーレムよ! 奴を一息に踏み潰せ!」


召喚使の声に応じてゴーレムの足がカイテルを襲う。


ズズーーーーーン!


地下中にその音は響き渡った。


ゴーレムは足を地面に踏みつけると同時にボロボロと崩れ落ちた。


「馬鹿な……」


召喚使は後ろを振り向いた。


そこには剣を降り下ろしたカイテルがいた。


「瞬間……いど……?」


召喚使はそのままゆっくりと地面に伏した。


「簡単な事だ。お前が見えないくらい素早く移動し、剣を降り下ろしただけの事だ」


カイテルは振り向くことなく前へと足を進めた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ